【源氏遊び外伝】 出立、琵琶湖へ
- カテゴリ:自作小説
- 2020/10/09 21:58:41
「阿鳥殿、なぜにそのような不機嫌な顔を? 空木宮様に無礼ではないか」
本日、空木宮が白藤邸から内裏の昭陽舎、その内庭に梨の木が植えられていたことから梨壺とも呼ばれる一舎へと移られる。その護衛についた阿鳥に、眉をひそめ苦言を呈したのは、影和という名の和泉であった。帝の命で宮に仕えていると白藤中将から聞かされていたが、実際に顔を見れば、なるほど男装姿ではあるものの空木宮のストーカーと名を馳せる和泉命婦だと、すんなり呑み込めた。
「別に不機嫌という訳ではありませんが」
そう答えたものの、真っ赤な嘘である。
宮の護衛をせよと白藤中将に命ぜられ、雪姫との蜜月を、何の前触れもなく打ち切られた阿鳥としては、機嫌など良かろうはずがない。
例え昨夜、白藤が寝所に踏み込んできた折の、恥じ入って頬を染めた雪姫がどれほど愛らしかったとしても。その表情が、阿鳥を二度惚れ三度惚れさせるほどの破壊力があったとしても。
それはそれ、これはこれ、である。
それでも顔には出していないはずであった。そもそも人形と名を馳せた阿鳥である。表情から機嫌を見抜かれるなど、一度として(…… 白藤中将以外には)なかったことだ。
だが和泉には早々に不機嫌を看破され、無礼と断じられた。
驚きではあったが、顔を取り繕えなくなったのは雪姫に出逢ったがゆえのことだとしたら、さほど悪いこととは思えない。半ば開き直り、阿鳥は口調に不機嫌を忍ばせて、
「恋しい方との逢瀬の真っ最中、イレギュラーな仕事で無理に呼び出されたとしたら、影和殿はご機嫌で職務を真っ当できますか?」
和泉に問う。一瞬きょとんとした表情を見せた後、和泉は何かを察したか大した感情を込めず、むしろしらっとして「それはお気の毒でしたね」と一言のもとに受け流す。そして
「私にとっては宮様よりも優先するモノゴトなどありません。宮様という存在の素晴らしさに比べれば〝人形の君〟が女に振られようと、白藤中将様に酷使されようと、どこぞの公達に尻を狙われようと、すべては些末!」
とにかく宮様への無礼は慎みなされ! と、いっそ清々しいほどの晴れやかさで言い切った和泉に、阿鳥は思いきり顔をしかめ、思う。ここまで突き抜けた女が宮様に付きまとうことこそ、無礼ではないか、と。
そんな、ヒソヒソこそこそとした攻防を、匡子がニマニマと眺めていたことを、二人は気づいていない……。
ついでに言えば、梨壺に到着した空木宮のもとにイキナリ今上帝が押しかけ、宮の挨拶もそこそこに、「そなた、このまま東宮にならぬか? さすればここは東宮御所になろう」と言い放って側近たちを慌てさせ、「兄上、無理です~」と空木宮を涙目にさせた等々の一幕があり……。
青ざめる和泉の隣で、匡子が目をキッラキラと輝かせていたことも、阿鳥は知らない。
そんなこんなで護衛を全うし復命した阿鳥は、白藤中将に明後日に陰陽師・賀茂保憲との話し合いを行うと告げられる。場所は、嵐山にある保憲の庵。詳しくは式鬼である雪姫が知っているゆえ、ともに行けと。
それまでは再び古屋敷に隠れておれ! と、手間が掛かるだの、これだから才のないヤツは……だの言いながら送り届けてくれ、雪姫の接待で酒まで飲んで帰っていった。
「なんとも不思議な御方ですね、白藤中将様は」
何気ない雪姫の一言に、阿鳥はふぃっと顔をそむけた。
「あとり、どうなされた」
雪姫が声を掛けても、阿鳥は横を向いたまま目線を下げ、返事をしない。
「あとり?」
「……せっきが中将様を褒めた」
「褒めてなどおらぬ。さっきのはただの感想にすぎないであろう?」
いったい何を言っているのだ? といった顔で、雪姫は少し場をずらし、阿鳥の頬を柔らかく両手ではさむ。
「あとり?」
「……褒めたように聞こえた」
「なにをバカな」
「せっきが中将様に惚れたなら、私は捨てられる」
「そのようなこと、あるはずがない。私は阿鳥を好いておる」
そういって雪姫は膝立ちになり、両腕で阿鳥の頭をそっと抱きしめた。
「……せっきの趣味が変わっていて良かった」
もしも自分が女であったなら、こんなメンドーな男は早々に捨てる。
そんな思いを込め、不貞腐れた気を隠さず言えば、阿鳥を抱きしめる雪姫の胸が揺れる。
拗ねた子どものような物言いを笑っているのだろう。
「せっき、私とともに居てくれ」
そう言えば、せっきは軽く腕を解き、阿鳥の額に口づけた。
数日後、阿鳥は琵琶湖へ向かい旅路を歩む。
鬼婆を引き寄せる囮、釣り餌として。傍らに雪姫を伴い、都を背にした。
さほども行かない場所で足を止め、雪姫は京を振り返る。
その手を握り阿鳥は、
「すぐ帰って来られる。せっき、そうしたら二人でまた、あの古屋敷で過ごそう」
阿鳥が空木宮を護衛した日の、明後日。白藤中将が告げた通り嵐山で行われた陰陽師・賀茂保憲との話し合いは、正確に言えば、単なる確認であった。阿鳥の知らぬ間に意見を交換しあい、段取りを詰め、準備を進めていたのだろう。
主たる目的は、むしろ阿鳥の身の内に封じられた如意宝珠を取り出すことだと思えた。
そうと説明され座したままの阿鳥の隣で、保憲の口から言葉というほどには判然としない音が流れるように漏れ、己れの身を取り巻いているのは即座に感じられた。
呪術であったのか信力であったのか、知識も才もない阿鳥には解らない。
最初は何事もなかったが、途中から音が濁ったような不快なものに変じ、次第に、身を裂かれるような苦痛に阿鳥は苛まれた。
背後から、耐えよ、と言う白藤中将であろう声が、かすかに届く。
薄目を開けると、心の蔵の前で自らの拳を爪が食い込んでいるのではないかと思われるほど固く握り、その拳をもう片方の手で覆うような、そんな姿で今にも泣き出しそうな顔をしている雪姫が映る。
そう心配するなと笑いかけようとして…… 阿鳥の意識はそのまま落ちた。
気づくと日は傾き、阿鳥は雪姫に膝に頭を預けていた。
すぐには身動きもままならず、横たわったまま話を聞けば、阿鳥が囮として琵琶湖へ向かい、鬼婆をおびき出し、琵琶湖で保憲が己が力を以てして鬼婆こと大津の大蛇を封じるという流れになると告げられる。
「あとりは私が護る」
そう言いつつも、話し合いのあの日から、雪姫の表情に憂いが差すようになった。
さほどあからさまなものではなかったが、阿鳥が気づく程度に雪姫は、緊張しているのか、何かを案じているのか、常とはどこか異なるように思える……。
どうした? と問うても、心配いらぬ、私が阿鳥を護る、と返すのみ。
それが、いっそう、阿鳥の不安をあおった。
ぼんやりとした人形であった阿鳥だが、それでも覚悟を決めた表情というのを何度か見てきている。
それを最初に目にしたのは、臣に下ると阿鳥に告げた、まだ宮であった折の白藤だ。
それを思い起させるほどに、雪姫は強く険しく、そして消え入りそうな儚さをまとう。
鬼婆を引き寄せるため、目につく道を歩みつつ、阿鳥はふと立ち止まり、無言で雪姫を抱きしめた。
「…… あとり?」
「せっき、私とともに、生きてくれ」
言うと、雪姫は嬉しそうに微笑んだ。
式鬼・雪姫 ミュ☆ミュさん
空木宮 ネコ衛門さん
今上帝 ロワゾ―さん
白藤中将 ロワゾ―さん
陰陽師・賀茂保憲 黒沢大和さん
空木宮 ネコ衛門さん
今上帝 ロワゾ―さん
白藤中将 ロワゾ―さん
陰陽師・賀茂保憲 黒沢大和さん
鬼婆こと大津の大蛇 ネコ衛門さん
大江匡子 ネコ衛門さん
影和(和泉命婦) 和.com
藤原阿鳥 和.com
大江匡子 ネコ衛門さん
影和(和泉命婦) 和.com
藤原阿鳥 和.com
◆ ◆◆◆ ◆
源氏遊び 有為の奥山 特設サイト ← 流れに沿ってまとめて読めるのは感動です
https://shiro-et-myu.wixsite.com/genji014
https://shiro-et-myu.wixsite.com/genji014
◆ ◆◆◆ ◆
かといって宮様が常識で説得しても、素直にはハイは言わなそう。
むしろ常識をふっとばしそうなイヤ~~~なタイプだなw
えっ Σ( ̄□ ̄;)ノノ 切っても切っても分裂するの?
乱戦がいつまでも終わらないじゃん
へとへとになって倒れそうなところ見かねた月鬼に助けられるのかぃ?
月鬼が毒を貯めているしねぇ……
可愛くはない気がする (((o≧▽≦)ノ彡 むしろメンドーw
なかなかカッコ良く書けないwww
私にとってコイツはぜんぜんカッコ良くないんだ (*ノωノ)
一番怖いのは和泉だな。。
「出立、琵琶湖へ」の下にものすごく空白があるのは
私の話を入れるために 横着してスペース確保しましたー。
雪姫の霊力を高めるために みんなの霊力を貸してもらうっていう
ガソリンスタンドでハイオク満タンみたいなシチュエーションにするつもりです。
ばばぁが龍に化身したところで、じじぃ陰陽師が術で「気でできた龍」になります。
わかりづらいか なんかもうちょっとうまい表現考えようw
半透明なやつ。 ニコタのアクセサリーにあるやつ。
それで宝珠を持って 雪姫がばばぁの頭上まで一緒に飛んで
雪姫は青い雷の鉾になって じじぃの龍と一緒にばばぁの龍に突っ込む つもりです。
ちょっと3000文字で収まる気がしない_(L〃_ _)ノシバンバンバン‼
妖の皆さんにも登場してもらうつもりだよ。
阿鳥がちょっとピンチのときには月鬼が加勢するし
妖狐軍団と、一つ目の入道にも参戦してもらうつもり。
阿鳥にも戦ってもらうつもりでいたけど
ねこちゃんアイデアがかっこいいので取り入れよう。
雪降らして 冷気で雑魚共の動きを封じるのね。
阿鳥が切り捨てても、やつら分裂してまた復活しようとするから
月鬼の毒で止めようかな。
毒で止めて切り捨てたら復活できないことにでもするか。
阿鳥は剣の腕がたつってことだから、かっこいいところ見せなきゃねー。
和泉の空木宮様、いっちばんも健在でw
阿鳥のやきもきもかわいいʚ❤ɞ
近くに出来る男がいたら、信じてても、ちょっと、モヤモヤするよね。
雪姫も言えないけれど、決死の覚悟なんだろうなぁ~。阿鳥を護りたいばかり
続き気になります。
おお
雪姫が雪降らせてる中で
阿鳥が蛇でできた検非違使の群れを斬りまくるんだねー
カッコいいー(≧∇≦)
冷気で動きを鈍らせた彫像のような検非違使たちを
次々斬りたおしていく阿鳥
めっちゃ絵になりそー(*゚▽゚ノノ゙☆パチパチ
アニメ化希望Σ(゚∀゚ノ)ノキャー
そっか、囮役として雑魚戦を引き受けるんだね。
その後真打登場となる訳だ!
阿鳥から取り出し、たぶん保憲が持って移動でしょう。
リスク分散!
匡子通信、お待ちしておりますよっヾ(≧▽≦)ノ゙
なので戦う前に拗ねる _(L〃_ _)ノシ バンバンバン‼
多方面に目をつけられている起爆装置みたいなもん。
……と考えると、状況がちょっと暗いからね~ せめてイチャイチャくらいしないと~w
このあと、琵琶湖でばばぁの手下どもとわぁわぁ戦ってると
じじぃたちが遅れて合流 ラスボス戦となります。
そのとき宝珠持ってるよー。
寝落ちしてましたw
まずはそれを書いときます。
保憲の呪文で
阿鳥の宝珠は取り出されたワケね(・・?
宝珠は誰が持ってるんだろー(。´・ω・)?
えっと帝とうっちやんと匡子の場面
こちらでも書きますねー^^
↓すでに決戦が始まりそうだから
間に合うかな(;^_^A
ま 本筋にあんまり関係ないから前後してもいいか^^
が、きっと例えば深雪とか同行してたら雪姫に勝てぬ、、てこっちもドキドキはらはらかもしれないなとか。
ニコタで読めるなんてもう感激なんですよ(≧∇≦)
ヤキモチやくとか阿鳥氏可愛すぎかー!!
もえカプ!
二人の萌え萌えきゅんなメロメロっぷりがよひー〜
誰が気づかなくとも、阿鳥だけは気づかんといけんだろうーーーっ。
と、思うんだよ (*ノωノ)
そうでもしないと、このメンドーな男と化した阿鳥は立つ瀬がないwww
さほどあからさまなものではなかったが、阿鳥が気づく程度に雪姫は、緊張しているのか、何かを案じているのか、常とはどこか異なるように思える……。
そうそう。
じじいは最初っから特攻でばばぁを道連れにするつもりでいるけど
雪姫も霊力を最大限に使うから 最悪命を落とすことになるかもしれないけど
それでも阿鳥と都を護るためだと覚悟を決めてるからね。
阿鳥にはさすがにそれを言えないので、隠してるつもりなんだけど
ふとした拍子に 緊張感が伝わっちゃうのだろうな。
すべては些末!と切り捨てられたww_(L〃_ _)ノシバンバンバン‼
まぁ、和泉にしたら宮様がすべてのモノゴトに優先するんですもんね。
そりゃまぁそうだけどww
すっごく面白かった。雪姫嬉しいだろうなぁ。
ヤキモチを焼く阿鳥が愛しすぎてきゅーんとなったじゃないですか。
いよいよ琵琶湖の戦いだ。
雪姫は自分と陰陽師の力では弱いと感じたときには
陰陽師と共に特攻するつもりだからね。
めっちゃ面白かったです。
また何度か読みに来ます。
いよいよ、私の番だ。
琵琶湖決戦!