坂道を転がり落ちるような批判は誰も得をしない
- カテゴリ:映画
- 2020/10/04 01:26:01
私の人生と共にあると言えるほど長く愛している、某作品の某映画が賛否両論になっています。
それは別に良いのです。好きな人も居れば嫌いな人も居ます。
しかしどうにも「私これが嫌い! 皆も嫌って当然!!」みたいな勢いで、
感想を叩きつけてくる人がSNSに目立ちまして……
自分はその映画で問題とされるところは特に気にならないので、
そうした声の強い人に対するやっかみだろうと言われてしまえば、
そうなのかもしれませんが、
ただ、どうも作品ファンの界隈の空気が悪くなっているのが残念です。
おそらくは多くの方が、「気になるところもあるけど良かったところもある」
という感想なんじゃないかと思うのですが、
「アレがおかしい! コレは許せない!」という嫌いな人の勢いに引っ張られて、
「うんうん、自分が引っかかった理由がよくわかったよ」と同調していき、
確かに感じていたはずの「良かったところ」が薄れていったり、
「それはそうとしてあの演出は良かった」などと言い出しにくい雰囲気になってしまっているのが気になっています。
また、主にストーリー面に関する(なぜか脚本家への名指しが多い)批判が多いので、そこの議論に終始してしまい、
映像や音楽、演技に関する感想まで至っていないのも非常にもどかしく思います。
自分はそれらの技術面に関する知識が乏しいので、ぜひ色々解説を読みたかったのですが……
さらに最も悲しいのが、「なんだか評判悪そうだから観ない」という人が出てきてしまっていることです。
「いや、嫌いかどうかは人によると思うよ!」
と力いっぱい叫びたいところですが、そういう口コミも映画を観るかどうかの指針にしている人がいるのは間違いないので、ただただ悲しくなります。
私も微力ながらこの映画について良かったところと、批判されている点についての考えをまとめた文章をネットに上げてはいるのですが、それほど影響力を持つわけではないので、ハンカチをかみしめるしかありません。
(嫌いだという立場の人は某有名サイトにレビューを載せてYahooでも紹介されていたり、某有名作家だったりしていて拡散力が大きい故にこんなことになっています)
この状況に加えて、便乗して「このシリーズそのものがダメだ」「原作者没後は要らない」などなど、今回の映画じゃない部分にまでケチをつけて叩く人まで出てきてしまっていて、批判的な感想を書いた方ですら困惑している状況にまで至っています。その方も今作が苦手なだけで、今の作品そのものを否定している訳ではないのに……
他には、批判を書いた人が「以前の○○という映画は良かった」と語っている部分について、「いや○○はアレがダメだろ」、「今回の映画なんかより△年前のあの映画のほうが百倍ダメだろ」という意見が付けられていたりと、過去作にまで遡ってダメ出しがされていくという地獄のようなコメント合戦になっているところもあります。
なんというか、批判が批判を呼んで、悪いところを語る会のようになってしまうことで、関係ないところに飛び火したり、その作品まるごとイメージが悪くなったりすると、誰も得しないし、楽しくないと思うのです。
感想は褒めるだけにしろ、批判は書くな、とは言いません。
でもバランス感覚は必要ではないかなと考えます。
私も偉そうなことを言えた立場ではありませんが、
「自分が嫌いだと感じたことは全世界に共通する真理だ!」とはせずに、
「自分は嫌いだけれど好きな人も居るだろう」
という心構えを忘れないようにしていないと、
不満点だけが次々に広がっていったり、
面白かったと感じた人がそれを言えなくなったり、悪く言う人を憎んだり、
作品そのものが避けられるようになってしまったりと、
坂道を転がり落ちるような負の連鎖に陥ってしまうと思います。
そもそも、今年のようないろいろな問題が生じている年に、
映画を公開してくれたこと、
ここに至るまでに携わった方々に対する敬意も忘れてはならないなあと感じます。
裏を返せば自分もまた、その闇の坂道を転がっていないか、
気をつけていかなければならないと
改めて感じました。
この状況にくじけずにくさらずに、
映画の良かったところを少しでも伝えられるよう頑張りたいです。