Nicotto Town



ネタばれ読書日記『ジーヴズの事件簿』

〈バーディ&ジーヴズ〉ものはイギリス生まれのコメディ作家P.G.ウッドハウスの代表作である。


「事件簿」とタイトルですが編者が付けたもので内容は純粋なコメディで、おバカなイギリス人貴族バーティと従僕のジーヴズを中心とした20世紀初頭の英国を舞台にした人気シリーズ。
さて、日本人にとって執事の名前、と聞けば『セバスチャン』と回答する人がいると多いと思うのですが、欧米人では『ジーヴズ』と答える人がいるようですが、それのネタ元がこのシリーズです。正確にはジーヴズは従僕で、まあ、セバスチャンも『アルプスの少女ハイジ』の従僕のセバスチャンが元であろうと言われているし、従僕が出世すれば執事になることは可能なので、あながち間違いでもないと思います。
で、おそらくですが、元祖完ぺき執事こそジーヴズです。
仕事が完ぺきなのはもちろん、紅茶を入れるのが上手く、足が無いかのように静かに移動する。そして何かとトラブルに巻き込まれる主人を助ける。一冊読んだだけでも『~家の(執事、料理人etc)とは懇意にしておりまして』と異常に顔が広く、貴族名鑑もお屋敷の住所も頭に入っているらしい。
ただし忠実な執事とは少し違う様でバーディの叔母によれば『ジーヴズはバーディの飼い主』とのこと、言いえて妙で、読み進めてみるとバーディのことはだんだん血統書付きだが、芸もしないおバカな小型犬に見えてきます。事件の解決策もバーディが精神異常者だとトラブルの相手に思わせるなど、それでいいのかと突っ込みを入れたくなる内容もありますが、あっさりジーヴズに言いくるめられ、『最悪の事態は避けられたのだ』とバーディのジーヴズへの信頼は揺らがない。
なんだこの強烈なキャラクターの個性は、作品の最初の発表は1916年、まさしく20世紀初頭、読者の知識も世界観も変わっているけど、キャラクターの個性は抜群です。
兎に角バーディのおバカ加減が語りつくせない。
トラブルメーカーの友人が作った劇がパレス劇場の出し物をそのままコピーしていると気づくものの、歌を〈こういう具合だ〉と言っておきながら、
オー、君はオレンジを何とかにかんとかしないのか、
私の何とかなオレンジを、、
あと四行同じように続く
歌詞覚えてないやん!と思わずツッコミ。

しかし読者だった小説家たちも有能なジーヴズに感心しつつ、きっと小説を書く以外の生活のわずらわしさから『こんな従僕欲しい!!』と悶え苦しんだようで。かのアガサクリスティーも作品でウッドランドへの賛辞を述べているそうです。そして、ドロシー・セイヤーズはバーディとジーヴズの関係をモデルに己の主人公ヴィムジイ卿と従僕バンターを生み出したそうです。
・・・・あれ、ヴィムジイ&バンターがバーディ&ジーヴズなら バンターの前の主人とバンターも同じじゃない?? たしか、ヴィムジイ卿シリーズ1巻でバンターの元主人が第一次世界大戦で死亡、バンターが失業したことが語られている。主人の死で失業ということは屋敷付きではなく、ジーヴズと同じく個人に仕える従僕だったということだ。
・・・・セイヤーズ女史、頭の中でサクッとバーディを始末したな。。

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2020/09/28 22:39
従僕と執事はほぼ同格で、従僕が執事を兼ねることもあるようです。



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