小説『ザ・ロード』
- カテゴリ:小説/詩
- 2020/09/26 16:09:56
コーマック・マッカーシー 著
『ザ・ロード』を読みました。
コロナ禍で外出を自粛しているせいか
最近テレビで
お笑いやバラエティ番組をみる時間が
ぐっと増えてきたので
せめて読書は硬質なものをと思い
ピュリッツァー賞受賞作で
映画化もされたという本書を
選んでみました。
街と自然が焼き尽くされ
わずかに生き残った人間以外は
動物も植物も死滅し
分厚い雲と灰で覆われたアメリカを舞台に
一組の父と息子が
南に向かって旅をするという話で。
なんというディストピア。
これまでいくつかのディストピアものを
読んできたのだけれど
その中でもダントツの
ディスっぷりではないかしら。
昼は灰色
夜は漆黒に覆われ
食料を生産することが不可能となり
国家も社会秩序も道徳心も崩壊し
生き延びるためには共食いもいとわない
弱肉強食が容赦なくはびこる世界の描写に
ただただ戦慄しました。
飢えに苦しみ
幾度も危険な目に遭いながらも
人間性を失うことを拒み
お互いを心の拠りどころとし
懸命に旅を続ける父子の姿を
目の当たりにするのは
なかなか気が重かったのだけれど
父子の目指す先には
はたして何が待ち受けているのかしらと気になり
一度読み始めると
途中で読み止めるのが
なかなかむずかしかったです。
加えて父子の会話が
まるで一服の清涼剤のごとく
詩的な雰囲気を醸し出していて
誰もがやさぐれた世界において
息子の浮世離れした純真無垢さが
あまりにももどかしく
あまりにも神々しくて
それを何としても守り抜こうとする父の姿に
より寂寥感が募ったのでした。
陰惨な場面が多いのにもかかわらず
聖書の中の物語のようにも感じられ
読み終えてからも
さまざまな想いが
ふつふつと湧きあがってきて
それらを取捨選択して
感想を記すのには苦心したのだけれど
一番に思ったのは
ベッドで眠ることができて
お風呂に入ることができて
三食食べることができて
おやつも食べることができるって
なんてすばらしいのかしらということで。
それらの幸せを
あらためて噛みしめつつ
今日も私は
お笑い番組をみながら
シュークリームを噛みしめるのです。
硬派な本でバランスとるとは、ユウさん、流石の心がけ!
私はカミュの『ペスト』を読み返したり、アタリの『未来予測』をパラパラと。
本当に、今の"あたりまえ"がいつまで続くのか……
感謝と知恵と努力、忘れないようにしたいものです。
コーマック・マッカーシーは検索したら映画『ノー・カントリー』の原作者なんですね。
『ノー・カントリー』自体、現代アメリカの行き場のないドス黒い部分を切り取った作品だったような。
なるほど、こちらは未来に到来するであろうディストピアを描いた作品なんですね。
でも、未来ディストピアを描いた作品は大体現代の事をさり気なく未来に
差し替えて変えて語っていたりしますよね。(乱暴な言い切り)
現実になることもよくあるんですよね。いやん、さらに怖くなる!
弱肉強食の世界だと、私は真っ先に弱肉側にまわってしまいそうです。
ぼーっとしている間に食われるわ~~~~気づいたら食われてた、って感じです(^^;)
幸せは味わえる時にしっかり味わっておくのが平和への鍵かもしれません。
私も好きなことをしながらおいしいものを食べようっと♪
格別でしょうね。
もしかしたら僕も
その至福のひとときのために
ハードボイルド小説を読むのかもしれません。