【源氏遊び】 宮様に問う
- カテゴリ:自作小説
- 2020/06/13 23:39:38
「まさか……。まさか… そんなことが…」
空木宮は、ひどく困ったように言って、口を閉ざした。その言葉の先は、なんと続くはずだったのだろう?
ある訳がない、か? あってはならない、か? もしくは、あったら迷惑、か?
醍醐寺からの帰路、得度式を経て出家しようとしているのを知り、和泉こと影和は思わず叫んだ。
和泉が悲しみます! 和泉は宮様をお慕いしているのです、と。
その返答が、コレである。
影和のほうこそ、まさか! と言いたい心境であった。
その上、和泉に会って、その意を確認することさえ、バッサリ拒否である。
空木宮にも言い分やら理由やらがあるのであろう……。だが、それにしたって。
(さすがにこれは…… あんまりだ)
影和は心にあふれる悲しみを、こみあげそうになる涙を、
そして同時に、身の内に渦巻く言い知れない怒りを、拳を握り力尽くで抑えた。
その一方で、影和はもったいなくも純白の直衣を賜り、夏の装束を生地から織らせているという。
さらに時折、柔らかな眼差しで影和を見つめ微笑みかけている宮の視線にであう。
気づくと今も、己れをじっと見つめる空木宮と目があった。
(まさか……… 宮様には本当に衆道の気が?)
まさか和泉のライバルは影和?
もしもそうならば私はいったいどうすれば……
和泉は影和に嫉妬する。
悶々としたものを抱え着いたのは、宮が亡き祖父・右大臣から贈られた宇治の別邸であるという。
つぼみを付けた桜の木が、視界をほんのりと薄紅色に染める。
そこに足を踏み入れた時、影和に向かって駆け寄ってきたのは、和泉の父の従兄弟・匡衡叔父の娘・匡子。
「帥和お兄さまー(≧∇≦)」
呼ばれた名は、なぜか兄のものであった。
ちょっと待て! なんでここに匡子が? と心の中で叫んだが、誰も答えてはくれない。
影和は半ばパニックであった。
……ここ数日、これでもかと畳みかける〝まさか〟の疲労。
加えて、心の中で何度発したか解らない〝待て待て〟の防御力は、効力はゼロ!
影和の視界はいびつに歪み、身体がくらりと揺れる。
(いいかげんにしろーーーっ)
これが、影和が切れた瞬間であった。
そうして和泉こと影和は、狩りを始める。
獲物は言うまでもなく、空木宮であった。影和は、宇治の別邸の一室で、筆を走らせる。
まずは兄・帥和経由で帝に。
空木宮様が、帝の許しを得ずに出家の準備をなされています。
このままでは帝の御弟君がいなくなってしまいます。
絶対に許可しないください! そして、気合を入れて引き留めてください。
次に深雪典侍である。
帝にキッチリ、空木宮様を引き留めさせてください。サポートよろしく!
お願いを聞いてくれなきゃ、白藤中将様との深夜の密会を黒鏡衛門督様にチクります。
「これ古ネタ過ぎるか? ま、知っているよと伝わればいいか。深雪様ならなんとかしてくれるだろうし」
もちろん和泉から空木宮への恋文も書いた。
今後も暇を見つけては書き溜め、期を見て一日一通、宮に届けて和泉の意を伝える魂胆である。
次に、大江匡子を宮の動向・言動チェックのスパイとして引き入れた。
ひとまず帝の命だから、和泉であることは内緒で協力して。
呼び名はもう影和でも帥和でもいいから! ……とかなんとか、なりふり構わず理解を得て。
「お任せ下さい! 影和お兄さまー(≧∇≦)」
匡子への報酬はもちろん〝噂〟である。
帝と帥和、白藤中将と大江鳴綱、そしてこのところ内裏で浮上してきている新ネタ・白藤中将と藤原阿鳥。
多少の誇張も含めて、臨場感たっぷりに語ってやれば、たいそう喜ばれた。
和泉が内裏を離れた後の噂に関しては、深雪典侍に集めておいてもらう文も送っておこう。
……この間も、影和の心に灯った怒りは、鎮火することなく揺れていた。
あわや〝和泉お姉さま〟と言おうとする匡子の口を手でふさぎ、耳元で事情を説明すれば、
それを見た宮が顔を赤らめ〝ごめん〟と出ていく……。
慌てて追いかければ、宮は心なしか潤んだ目で何事かを問いかけているようであった。
誤解です! とは言ったものの……。本来なら影和が誤解されようがどうでもいい話である。
宮を口説きたいのは、影和ではなく和泉なのだから!
そう思いつつも、それでも、宮にあらぬ疑いを持たれるのは許容できそうになかった。
そんなある日、宮の別邸に仏師が招かれる。目が覚めるような美少年だった。
みごとな御仏を掘られるのだと紹介する宮のたいそう嬉しそうに語り、手放しでほめちぎる。
(まさか! ライバル登場かっっっ)
本当に宮に衆道の気があるならば、何としても道を正さねばならない。
意を決する影和の耳に、不穏な言葉が飛び込んだ。
「こちらの方のお姿を象って孔雀明王像をお造りすればよろしいのですね。なるほど、孔雀明王様はもともと天竺では守護の女神であられましたから」
えっ? バレてる?
影和は一瞬、ひるんだ。バレていること自体は、正直どうでもいい…… が。
もし作られた仏像が影和よりも和泉に似ていたら?
(宮様は、どう思うだろう)
「空木宮様、少々お時間を頂きたく存じます」
影和の形相にひるんだか、鬼気迫る様子にドン引きしたか、空木宮は即座に首を縦に振った。
深夜、亥の刻。またの名を、23時。
高貴な御方の私室に突撃するには非常識な刻限であるのは、重々承知しているが。
反省や後悔は、後でまとめてすればよいだけの話…… とばかりに影和は正面から宮を見据える。
宮邸に仕えて以降、空木宮が、人間とは思えないほど謙虚であるのは解った。
それも神か、仏なのか! レベルである。こういうひとに好意を伝えるのは遠慮してはダメだろう。
「なぜ宮様はそこまで和泉を拒絶なさいますか」
和泉は……まぁ多少は先走る傾向があり、
物静かな環境を好まれる宮様にとっては少々わずらわしく思われるかもしれませぬが、
それほど忌避するおなごではございません!
と、ひとまず冷静に自己分析をして、影和はアピールを続ける。
第一、宮様を心から好いております。ハッキリ言って惚れています。
風雅なお姿に見惚れ、涼やかなお声にときめき、清廉な心根に射貫かれ……。
滔々と和泉の想いを語る影和の目に、
空木宮は静かに話を聞きながら、徐々に疲弊しているように見えた。
多少の罪悪感に、己れの勢いが失速していくのを感じる。
「…… 宮様はそれほどまでに和泉には会いたくないのですか? そんなに和泉が嫌いですか?」
言って影和は、潤みそうになる目をそらした。
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~共有物語企画~
源氏遊び
https://genji2017.blogspot.jp/
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空木宮 ☤ネコ衛門☤さん
今上帝 ロワゾ―さん
白藤中将 ロワゾ―さん
深雪典侍 ミュ☆ミュさん
黒鏡衛門督 ❧響さん
仏師・定朝 黒沢大和さん
大江鳴綱 ❧響さん
大江匡子 ☤ネコ衛門☤さん
大江帥和 和.com
影和(和泉命婦) 和.com
。(o☯ _ ☯o)。ぅるぅる゜・。。 和泉、ついに行動を起こしました。
以下、覚書
空木宮誕生 ※白藤1~2歳 帝5歳
合歓ちゃん誕生 ← ※現在17歳くらい
常陸宮没 (合歓ちゃんの父) 16年前
今上帝即位 15年前 当時8歳たぶん ※白藤4~5歳、空木宮3歳
↓ 先帝島流し 卯花御前の夫連座
↓ 隠岐内侍懐妊 →→ 約10ヶ月を経て →→ 如雪誕生
↓
↓
↓ (この間、14~15年)
↓
↓
如雪事件
右大臣死去
現在(995年想定)
↑ ※空木宮18歳、白藤19~20歳、帝23歳、如雪14歳くらい
和泉17歳、深雪17~18歳、帥和22歳以上、阿鳥22歳くらいか
やっぱ和泉は行動しないとw
宮様の反応次第ですかねw
>人のくせにそんじょそこらの妖よりある意味たちのわるいw白藤中将や
これは完全に同意します。
深雪様はなんとかしてくれますよ。……という和泉の信頼はきっと厚い。
なぜかラグビーの気迫のスクラムを思い起こしてしまいました。
宮様のお返事はいかに!?
私も事情がわかってないので(鬼との約束?)うっちゃん唐変木?
とか思ってしまっていてすまん(笑)←ここで謝ってもw
人のくせにそんじょそこらの妖よりある意味たちのわるいw白藤中将や
そんな中将を少しは転がせる(?)深雪内侍(脅してだいじょぶなのか?w)
それにラスボス曹達!出そろいましたね~(^▽^)/
月鬼もうまい酒がぐびぐび進みそうです♪
(((o≧▽≦)ノ彡 フツーの勘違いはともかくw
宮様が、影和を孔雀明王の化身のように見ている…… って根本のところが、
影和の発想からはゼッタイ出てこないし。
そもそも宮様は鬼との約束なんていうデカい隠し事をしているし。
この二大謎を知るまで、やきもきは終わらんかも?
いろいろ空木宮の中での勘違いもアリなんだけれど、それを知らない和泉ちゃんはやきもきするばかりだよね。
とりあえず、外堀を固めてじわじわと責めていくのだ。w
影和がライバル?
和泉ちゃん、影和に負けずに頑張れ!!
とはいえ、宮様にしか興味のない和泉より、
匡子のほうがネタとか噂とか、いろいろ耳に入れているような気もするw
> さて うっちゃんはどう答えるのか(´・∀・`)ナ-
和泉にとってはココ! いちばんのポイントです (((o≧▽≦)ノ彡
そういえば、なぜ孔雀明王像のモデルが影和なのか、ってのも本人は知らないよね。
これも和泉が影和に嫉妬する要因になりそうだわーw
> 宮様は、「影和が私を避けている」と思われるかなぁ・・・
影和は『和泉の押し売り』真っ最中だからなぁ……あり得るかもしれない。
って、ホントにあったら和泉大泣き 。・゚(゚⊃ω⊂゚)゚・。 だな!
> 何気なく脅迫めいたこと言われてる?
ォ-ホッホッホ (ノ∀≦。) してますのよw
匡子の報酬である〝噂〟集めもお願いしますね、深雪様。
> は入らないだろうか(≧▽≦)←期待しているwww
この二人の結託は痛い! 怖い! ヤバすぎるw
> 影和くんの姿なら緊張しないんだよね
> ってうっちゃんが言ったとしたら
> お二人はもしかしてその姿で・・・
これやったら『空木宮が和泉命婦を男装させて囲っている』という噂が
本当になるよねヾ(≧▽≦)ノ゙ 匡子が喜びそう。
夜中に突撃和泉ちゃん(≧∇≦)
深雪ちゃん脅迫されーの
匡子懐柔されーのwww
さて うっちゃんはどう答えるのか(´・∀・`)ナ-
↓のリアクションもありかしらー(〃ノωノ)キャーッ
宮様はどうなさるのでしょうかっ
リアクションが気になります・・・
影和に和泉をプッシュされると
宮様は、「影和が私を避けている」と思われるかなぁ・・・
複雑ーーーっ
で、深雪典侍だ。
帝にお伝えするのは問題ないけども
何気なく脅迫めいたこと言われてる?
いやまぁ、なんかいろいろあったりなかったり
ほほほ
って和泉ちゃんの勢いを感じました(≧▽≦)
この行動力、うっちゃんにはベストマッチだと思うんですけどね~
うっちゃんのお答えはこれ如何に!?
さらにいえば若干脅され気味の深雪ちゃんと白藤中将の結託からの邪魔
は入らないだろうか(≧▽≦)←期待しているwww
影和くんの姿なら緊張しないんだよね
ってうっちゃんが言ったとしたら
お二人はもしかしてその姿で・・・
キャーキャー(*ノωノ)
と、匡子ちゃんたちの仲間になってみました(笑)