【源氏遊び外伝】 再会(前編)
- カテゴリ:自作小説
- 2020/06/05 23:03:02
式鬼「雪姫」 3 ミュ☆ミュさん
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月鬼の酒席 teresaさん
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◆
夜歩きをすれば、妖がひとつふたつ寄ってくる。
その大半は、さほどの意思を持たず、衝動でつき動く最低クラス…… だから阿鳥はまだ生きていた。
妖は力が強いほど、それに比例して高い知性と意思を有している、と家では教えられたが。
それほど強い妖に行き合ったことはなく、過日の鬼婆と、せっきが初めてだった。
(せっき、逢いたい、逢いたい、逢いたい……)
頭の中を、心の底を、占拠する。
そんな想いが呼び寄せたのか、単に偶然か、はたまた妖にも酔狂なものがいるのか。
「そなたの魂、うまそうな照りと艶をはなっておるな」
頭上から降ってきたのは、そんな言葉だった。
見上げれば、射干玉のような艶やかな髪と角、銀の虹彩と猫のように細く長い瞳孔を持ち、
それらとほぼ同色の衣を身に着け、あざやかな雰囲気をまとった鬼が大岩の上に、月を背に立っている。
見た瞬間、叶わない、と思った。ここまでか、と。
同時に、せっきに逢える機会がようやく巡ってきたのだと、心が歓喜した。
「わらわと賭けをせぬか」
あやつが助けに来るのが先か、わらわの酒肴になるのが先か……。
どうじゃ、楽しそうであろう?
そう言って、射干玉の鬼がくくくと笑い、手をこちらへ差し出した時。
既に身体は思うように動かせなかった。
首の右側に鬼の手が触れ。左側に舌が触れ……。
それからゆっくりと正面から顔を覗き込み、鬼は一瞬、怪訝な顔を見せた。
「そなた……」
何を言おうとしたのか、その先は言葉が続けず。
代わりに口の端を上げ、鬼は愉悦に満ちた笑みを深める。
その顔が、楽しみを見つけた時の白藤中将と重なった。見目に似たところなど欠片もないのに。
杯を片手に、鬼は酒を楽しみながら阿鳥を眺める。
どれほどの時間が経った頃か。やがて上空で風が吹き木の葉がいっせいに騒めいた。
「つーきーおーにーーーーーーーっ!」
青白い光をまとい、叫びながら目の前に降り立ったのは、沫雪のような白妙の鬼だ。
それでいて表情は凛々しくもひどく険しく射干玉の鬼を睨みつける。
せっき…… 逢えた。阿鳥は歓喜する。
◆
『どこぞの姫君とお会いになるという?』
記憶の端についた小さな傷のようにかすかな痛みを伴いつつ、それでもさして気にも留めていなかった、
そんなせっきの言葉が阿鳥の意識の表層に浮かび上がってきたのは、
二度目に助けられた翌の宵のことだった。
『姫君のもとへ御通いと…… 破れ家に女連れで…… そなたの噂には事欠かぬ』
かつて白藤中将に聞かされた言葉と相まって、もしやと思う。せっきは誤解しているのか、と。
阿鳥の顔から血の気が引いた。
とはいえ、すぐには動けなかった。
検非違別当を兼任する黒鏡衛門督と検非違佐を兼ねる鏑木衛門佐より届けられた
羅城門に鬼が出た可能性があるという第一報を期に、
警護増強や宿直増員を決めたのは、近衛府次官格の白藤中将と同・有白少将。
そしてその二人から降りてきた命に沿って実行するのが、阿鳥ら近衛将監以下の面々である。
「逢瀬も叶わぬとは哀れなことよな」
月華門の近く、背後から声を掛けられ阿鳥は足を止めた。
振り向くと、白藤中将がニヤニヤとした顔をこちらに向けている。
他者の言であれば、非常時をわきまえない危うい言動か、または盛大な嫌味か何かと受け止めるところだが、
白藤中将にとっては、せいぜい言葉遊びの範疇でしかない。
もしくは、背中を押すため、と取れないこともない。好意的に評すれば。それでも。
解っていながら、神経を逆なでされるような苛立ちを覚えた。
命じたのは貴方ではないか!
八つ当たり気味に叫んでやれば、どれほどスッキリするだろうと思いつつ。阿鳥はふいと視線をそらした。
午前一時に宿直の引継ぎを終える。阿鳥が伯父から与えられた別邸に戻ると、ほどなくして雨が降り始めた。
雨音を聞きながら、阿鳥は雪姫にもらったヒトガタを取り出す。
確か『せっき、参れ』と言って息を吹きかけ、宙に放てば…… そう言っていた。
さすがにこの時間では、洛北に用意した古屋敷まで足を運ぶわけにはいかない。
そして鬼が出たことで神経質になっている洛中に、ただ逢いたいという理由で呼び出すのは、
せっきを危険にさらすだけだろう。その程度に理性は残っている。
阿鳥は外に目を向け、そぼ降る雨を眺めた。
「おほかたに さみだるるとや 思ふらむ 君恋ひわたる 今日のながめを」
一般的な訳:あなたは単なる雨だと思っているでしょうけれど、この雨は、私があなたを慕い心を乱して流す涙です。
逢いたい、逢いたい、逢いたい……。
心の中で繰り返す言葉は、いつしか音になり、名を声に乗せていた。
「せっき……」
それでも『参れ』とは言わず口を閉ざしたはずだが、
瞬間、青みをおびた白い光が散り、沫雪のような白妙の鬼が目の前に現れた。
源氏遊び 特設ライトニング https://writening.net/page?emzkkR
~共有物語企画~
源氏遊び
https://genji2017.blogspot.jp/
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式鬼・雪姫 ミュ☆ミュさん
月鬼 teresaさん
白藤中将 ロワゾ―さん
黒鏡衛門督(兼検非違別当) ❧響さん
鏑木衛門佐(兼検非違佐) 黒沢大和さん
藤原阿鳥 和.com
ラブラブまで行きつかなかった (っω`-。) 本当に会っただけ……。
次こそは! ってか土日には上げたいと思います(予定w
ちなみに射干玉の鬼と阿鳥が読んでいるのは、月鬼(teresaさん)のことです。
阿鳥は初めの時点で、種族名を知らないので。
雪・白妙(=雪姫)と対比させたらキレイだろうなぁという単純な発想です。
所属設定は下記の通り。たぶん史実とそう大きくは違わないハズ (*ノωノ) はず、ハズ……。
【近衛府】
帝および内裏中心部守護。儀式や祭礼の際に帝や貴人の傍らに侍ることが多く家柄と見た目重視の傾向大。
武器の扱いも儀礼重視で実戦にはあまり向かない。が、この部隊の剣舞は一見の価値あり。
次官格(=白藤中将・有白少将)までは帝の側近職を兼ねるため、専従・実働はその下からになる。
【衛門府】
貴族から平民までを含む最大規模の軍事組織。高位貴族でも実力を兼ね備えた人員が配される。
内裏から洛中、洛外(主に夜間)まで警護範囲は極めて広い。
衛門府の督(長官格=黒鏡)や佐(次官格=鏑木)などは検非違使の上位職を兼任する。
「✿外伝・雪鳥物語✿」というコーナーに
こちらのお話を挿入させていただきたく
ご挨拶に伺いました。
画僧と文章を転載させていただくことを
お許しいただければと。
どうぞよろしくお願い致します。
あー ダメとか言われると悲しいかも。
いいよって言ってねー- ̗̀(๑ᵔ⌔ᵔ๑)
月鬼と白藤は、なんとなく似ているような気がするんですよねーーーw
>悪戯か善意か分らないところもw
善意にも悪戯が含まれていそうだし、悪戯のなかにも善意が見え隠れしそうだし。
複雑だよねーーー (((o≧▽≦)ノ彡
雪姫いっぱい人型作ってるから、呼んでやってね^^
恋しい気持ちが募るばかりだ。
月鬼。白藤中将。なんか分っててやってるところが・・・悪戯か善意か分らないところもw
けど。宮様の能力と話の先行きが見えないので、どの方向に走ったらいいのか悩み中w
次の心配はしなくてよいっていいですねーw
>月鬼がおや?と思ったのは、普通の人間じゃないな、おまえってことに気付いた
これは、その通り! でしょうねぇ。
ハッキリわかるほどではないけど何かしら感じるものはあるんじゃないかな。
心臓ないんだ (@_@;) その設定を使うなら、探さなきゃないよね?
どこにあるんだろう……。
>雪姫と出会う運命だったのでもいいかもね。
会ったのは必然と ( ..)φメモメモ ものすごく壮大な話になるわーーー。
でも雪姫といっしょなら、、それはそれで楽しいかもw
そう、白藤と月鬼って、印象が似ているんだ。私の中で。
黒鏡、武闘派よ! 可哀想かどうかはともかくwww
例によってこっちで勝手に自炊しとくか( ゚∀゚)・∵. グハッ!!
ウエディングベール(フィオラ)が角の上から使えるので、
そんなイメージで後編を書いた!
月鬼はたいそう魅力的なキャラでございましたw
楽しい。
ただ呼び寄せちゃっただけでも
お酒のお供もできるし
膝枕もできるし
お話を聞いたりもできるよー。
いつでも呼べるようにヒトガタいっぱい持ってきてると思うw
この前話してたやつ・・・阿鳥のお父さんとうちのじじい陰陽師が若い頃
大津の大蛇(龍なんだけど)を封印するときに
龍の珠を取り上げて、息子の心臓をどっかに預けるかわりに
そこに龍の珠を埋め込んでるって話。
阿鳥の心臓はどこにあることにしようか。
それを取り返してこないとね、鬼婆との最終決戦前に。
それこそ百鬼丸みたいに、内蔵のパーツが別々のところにあって
それを探して取り返して体に戻すために 雪姫と出会う運命だったのでもいいかもね。
まぁ 心臓だけでもいいけど。
阿鳥が雪姫と惹かれあう理由に何か意味をつけたいなと思ったりします。
月鬼がおや?と思ったのは、普通の人間じゃないな、おまえってことに気付いたってことだよね。
白藤さんに文句の一言でも言っちゃいましょう。
白藤さんの悪魔の笑みは月鬼に似てたんだ(o´艸`)
想いに身を焦がす程逢えた時の喜びが増しますね❤️
私、雪姫ちゃんはもちろん、月鬼さんも好きなので登場わくわくしてしまった♪阿鳥さんには迷惑なことと思うけど(笑)
黒鏡、武闘派だったんだ、ちょっとは訓練してるところとかおつむはぽややんでも本気出したらスゴいとか書かないと可哀想かもって気がしてきました(≧∇≦)
射干玉(ぬばたま)=黒 と
雪・白妙(しろたえ)・沫雪(あわゆき)=白 の対比はきれいだ❤
そうそう。 ヒトガタに息を吹きかけただけでも召喚できるんだよw
呼んでもらえて雪姫嬉しかろうなぁ。
近衛府と衛門府の説明もありがとう。
漠然と「戦闘班」くらいにしか理解してなかったので
鏑木衛門佐の立ち位置がとってもよくわかりました。
うむ。
ソーダが出てきて大騒ぎになってるときに
鬼を呼んじゃうのは問題ありそうだw
でも鬼は角とキバは伸縮自在なので ただの人にしか見えないようにもできます。
だめだ。やっぱり今夜は眠すぎるのでまた明日来ます!!!
雪姫も鬼気迫る勢いでヒトガタ作ってるし・・・
会えない時間が愛育てるのね~♫(歌っている)
せっき、前のめりで登場して自作が楽しみです~
美しくもせつないお話に黒々と登場させて頂いて光栄至極に
ございます。私の書き散らしたいろいろを拾って頂いて感謝(o*。_。)oペコッ
雪姫めっちゃ聞き耳立ててるとか( ̄m ̄* )ムフッ♪
これからどーなるのか(´・∀・`)ナ-
けどねー ( ̄~ ̄lll) 羅城門に鬼が出た! と神経質になっている平安京に、
鬼を呼ぶのはさすがにマズイでしょう~。
という自主規制だったんだけど!
参れとか言わずとも来るんだ、雪姫は (((o≧▽≦)ノ彡
汚れを知らぬ沫雪の如き美しさでありながら、人の常識をかけ離れた修羅を生きてきたであろう雪姫に恋焦がれて悶える妖艶なあとちゃん 呼びつけるという行為が許せない 純な男心なのですね〜 嗚呼
雪姫にお知らせしたい^m^ あっちもこっちも悶えるのよ〜