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今年は感想を書く訓練なのだ


アルキメデスの大戦(ネタバレあり)

 昭和20年4月7日坊ノ岬沖にて、戦艦大和の沈没から始まるこの物語は『アルキメデスの大戦』という。旧式化した戦艦金剛に変わる平山造船中将案の新型戦艦を推進する嶋田少将派と、山本の発案する空母機動部隊による航空主戦を支持する永野大将との間で海軍内部の派閥争いが起っていた。
 大鑑巨砲主義の象徴たる巨大戦艦の余りにも低すぎる見積もりを暴くため、航空主戦派の山本はひょんな事から、天才数学者の櫂直(かいただし)を抜擢して任に当たらせた。櫂は数々の苦難を乗り越えて平山案の見積もりを暴くことに成功するが、土壇場へ来て平山の国家戦略的な思惑により巨大戦艦の建造が支持されてしまった。
 戦艦の建造は軍事機密であり、その性能や建造費を公表することは敵に対応策を打たれることに成る爲だ。この事が航空主戦派の敗因であるが、櫂が平山案に対する設計ミスを指摘すると、平山は自らのミスを認め巨大戦艦案を取り下げてしまう逆転劇が起る。こうして永野大将率いる山本等の航空主戦派は、新型航空母艦の建造を採択され手に入れることとなった。
 もともと山本は櫂に対し「巨大戦艦は国民を熱狂させ戦争へ導く」と、戦争させないための任務だからと説得していた。しかし、実のところ山本は戦争は避けられないと確信しており、戦争の序盤で有利に立とうとして航空母艦を手に入れたいというのが本音だったのだ。

 その後櫂が平山に要請されて彼の所へ出かけて行くと、そこには巨大な戦艦の模型があり、平山は言った。

「日本は負け方を知らぬ、敗れて一兵になったとしても敵に向かい最後は滅んでしまうだろう」

「このように美しく巨大な戦艦は、決して沈まないと国民を熱狂させ日本国の象徴になるだろう」

「日本は必ず負ける、その先にあるものは滅亡しかない」

「そうなる前に、負けを悟らせねばならない。沈まぬ船は無いとな」

 やがて完成した船は『大和』と名付けられ、櫂はその祝賀式典に参加した。送迎用の小舟から埠頭へと降りたった櫂は、洋上に浮かぶ巨大な大和を振り返ると呟いた。

「僕にはね、あの船が、この日本という国そのものに見えるんだよ」

 涙に黄昏たその船体からは、斜め上方へ向かって黒煙が空を染めあげていた。

 後に大和は沖縄へ向けて出撃し、米艦隊攻撃の主役である菊水作戦による航空特攻を支援するための陽動作戦を敢行した。昭和20年4月7日14時23分坊ノ岬沖にて、囮となった大和はお椀をひっくりかえすように横転し、直後に大爆発を起こして船体が3つに分断され海底に沈んだという。
 この映画は巨大戦艦大和が身代わりとなり、滅亡から日本を救ったと言いたいのであろう。松本零士のアニメ『宇宙戦艦ヤマト』は、地球を救うために遥か銀河の彼方へ旅立って行った。私には二つの場面が重なり、この名作の主題歌が鳴り響いて止まない、涙の海に浮かぶその姿とともに・・・




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