Nicotto Town


ユウの想いごと


小説『大きな鳥にさらわれないよう』

川上弘美 著
『大きな鳥にさらわれないよう』を読みました。

「自分と異なる存在をあなたは受けいれられますか」
作中のこの台詞が刺さりました。
私も含め現実社会の多くの人々への
問いかけであるような気がして。

滅亡の淵に立たされた
人類を存続させるために
人間を地域ごとに隔絶し
地域固有の遺伝子集団をつくり
異なる遺伝子を持った人間どうしが
出会い交雑することによって
進化し繁栄していく可能性のある
人類をつくりだすという試みの話で。

物語の中で数千年の時が移ろう
スケールの大きいSFだけれど
特別にむずかしい文言はなく
さっぱりとした文章で読みやすいです。

連作短編集のかたちとなっていて
それぞれの人々の営みの
エピソードを読みすすめていくうちに
だんだんと世界の在りようがみえてきて
さまざまな情感を味わいつつも
同時に漠然とした不安感が
だんだんとつのっていきました。

けれど最終章を読み終えてから
思わず第一章を読み返してみて
深い感慨に浸ったのでした。

川上弘美作品は
『センセイの鞄』を読んで以来
本作が2作目だったけれど
これからもチェックしていこうと思います。
 

アバター
2020/01/04 21:18
一口にSFで片付けられない物語ですね~
そんな時が来ないとも言い切れないし。
種族の保存のためとなると、恋愛感情は二の次になっちゃうのでしょうか。
でもある意味、一致団結して平和な世の中になったりもするのかな。
アバター
2020/01/04 18:37
私は存じ上げない作家さんです。
人類はどんな風にその種を終わるつもりなのか、分かりませんが、
SF映画を観ると、地球が終わろうという日にも宇宙で生きながらえたいと
いう方向みたいですね。なにかそこまですると云うには、大袈裟な哲学が必要になりそうですが
私にはそういうモノ(人類の意義というもの)が見つけられる気がしませんです。
爺ゆえの厭世とお許しください。(勝手に独り言?)
アバター
2020/01/04 15:40
川上弘美の著作の中では
僕は『どこから行っても遠い町』が好きです。
一見不条理で不可解と思えることが
闇と光が反転するように
慰めや癒しに変わっていく、
そんな不思議な優しさに満ちているように思えるんです。
今回紹介してくださったものも是非読んでみたいと思います。



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