【アナカン】 独白または告白
- カテゴリ:自作小説
- 2020/01/02 15:56:48
いつから、好きなのだろう。
何に、これほど惹かれたのだろう。
「今日は泊まっていけよ」
そうレドが言うと、モーヴはすぅっと右手の指先だけでレドの頬を撫で、口の端を上げる。
あごから首元にかけて、ゾクリと刺激が走った。
スクール卒業後、レドは英国に留まり、モーヴはパリに拠点を置いた。
無理をすれば日帰りできないこともない距離だが、会う機会はそうそう作れるものではない。
そもそもレドには先ごろまで妻がいたし、モーヴには付き合いの長い女性がいる。
さらに言えばモーヴは、カーマインに寄せた心を完全には捨てきっていない、とレドは思っている。
「明日の朝、アールグレイのミルクティを入れてくれるなら、いいよ」
何が本気で、どれが浮気なのか……。
自分の心の中さえ解らないのに、モーヴの本心など理解できようはずがない。
それでも……とレドは思う。
ここにモーヴがいる。いまはそれが、レドにとっては全てだった。
「そんなもの、いくらでも入れてやる」
安請け合いをして笑えば、ありがとう、とモーヴはレドの耳を軽く噛んだ。
ああ……、どれほど愛おしいと思えば、俺は正気に戻れるのだろう。
レドは上着を脱ぎ、開けたばかりの白ワインを、ゆっくりとモーヴに流し込む。
彼がアルコールに弱いのを知りながら、モーヴの正気を奪うように。
『…… 僕の天使、慈悲をください』
深夜、耳もとでささやかれたようなリアルさで、モーヴの声が響く。
それに驚いてレドは飛び起きた。
闇の中、かすかに目に映る光景は、見慣れた自分の寝室。
隣には昨夕久しぶりに顔を合わせたモーヴが、レドの方を向いて眠っている。
(またか……)
深くため息をついて、レドは両手で顔をおおう。
何がキーになっているのか解らないが、時折こうして古い記憶が、あざやかに甦ってくる。
それは全て、スクール時代のモーヴだ。
いま現在の彼が、レドのそばにいようと、いまいと。
(あのセリフは、どこでだったか?)
……レドが、その時のモーヴを見かけたのは、ただの偶然だ。
スクールの敷地内であったのは間違いない。
ただレドには馴染みのないエリアだったから、今もって正確な場所を知らない。
そこにモーヴはひとり立ち、空を見上げていた。
そして、あの、慈悲をくださいというセリフ…… 静かに祈るような、救いを求めるような。
その姿を思い出すとき、まるで対のように必ず頭をよぎるのは、廊下での一幕だ。
何か、たぶん嫌味のようなことを言って通り過ぎようとした生徒二人と、モーヴが対峙していた光景。
『僕は何もしていない。でも、君がそう信じたいなら、止めはしないよ』
その時のモーヴは静かで、そして冷ややかな、人をバカにしたような笑みを浮かべていた。
どちらもレドの知らない顔、レドが目にしたことのないモーヴだ。
『彼は強いね』
遠巻きにした生徒たちの後ろにいたレドにそう言ったのは、同期のエクリュ。
その時は単純に、生徒たちから非難を浴びる苦痛から、天使に慈悲を求めたと思っていたが、
いわれのない、たかが外野の中傷程度でモーヴが折れるはずがない、
と、いまのレドは確信に近いものを持っている。
(だったら何故……)
それはスクールに在学している当時から、さんざん考えた。
レドが思いつくのは、カーマインが関係しているかもしれない、という程度。
それが的外れである可能性もあるし、
そもそも、モーヴの求めるものが、自分に対する慈悲なのか、他者に対するものなのか。
そして、その時のことをモーヴ自身が覚えているのか、それすら解らない。
だからいつも、
(まぁイマサラか……)
そういう結論に達してレドは思考を止める。
それでもまた時折、あの時を振り返っては思いを馳せるだろう。
実際、解ろうが解るまいが、たいした問題ではない、とレドは思っている。
その全て含めて、レドはスクール時代を愛していた。
モーヴと過ごした、あの時を愛している。
そして、決してレドの自由にならないモーヴを……。
だからレドは答えを探さない。正解を欲さない。そして結果を求めない。
それでも、やはり時折、どうしても寂しいから、
レドはたぶん、これから先、まだ、いくつも離婚歴を増やすだろう。でも、それでも。
(それでも俺は、お前のものだ、モーヴ……)
それは口に出さない、決して声に乗せない本音。
モーヴがきっと、一生聞くことのない、レドの告白だった。
~ * End * ~
モーヴ:ミュ☆ミュさん
カーマイン:ネコ衛門さん
レド:和.com
以下、2019年に書いて先日ようやく公開しました (*ノωノ)
【アナカン】 モーヴの結婚式当日
https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=180002&aid=68122152
【アナカン】 最初の離婚報告
https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=180002&aid=68281363
https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=180002&aid=68281363
■――
晶元P制作美麗まとめサイト
【シーズンⅠ】
https://jackthenikotto.wixsite.com/nicozaka46/blank-17
【シーズンⅡ】
https://eleonorra.wixsite.com/anakan/portfolio-2
コラボ作品ライトニング(こちらから各ブログに飛べます)
https://writening.net/page?E67Zsx
――■
.
一夜を共にしても、片方がその後拒絶してれば 本当に一夜限りになる可能性はある。
モーヴがレドに懐いてることも心を許してることもレドはわかってたと思うよ。
イマサラながら。。。思ったんだけどさ~。
毎日毎日同じ部屋にいて、一夜限りって無理だよね?
下のコメント ↓ の内容、私たぶん…… 今やっと理解しました。
自分が当事者として妄想って? それ楽しめるんですかっ Σ( ̄ロ ̄lll)
ごめん、私、無理っ。ゼッタイ無理です~。
うわぁ~響さん、スゴイ……。
それも楽しみだったりして
なんだかそれの強要みたいになってしまってごめんなさい。
突っ込みというよりもそういう妄想を楽しんじゃうのです^^;
レドが二度目三度目の結婚を隠したのって、
結婚している間、モーヴが誘ってこない、誘いにも乗ってこないからではないかと、
私としては疑っていまして (*ノωノ)
この話はたぶん、最初の離婚報告の後で、
レドはモーヴに触れたくて、どうしようもなくて、それが破綻~離婚の根っこになった
とか、あり得そうだなぁ、と今ひそかに妄想しております。
この話ですかい? だって、ねぇ、ありそうじゃーーーん。
レドだしw モーヴが誘ってこない誘いにものらない、ってのも、ありそうだし。
おお♪ 呪いのような一言! うぇるか~む ヾ(≧▽≦)ノ゙
わかって、大興奮中の昼休みです。
じゃあ、最初の結婚の報告の時に
寂しそうな顔したけど、笑っておめでとうと言ったあとに
離婚の根っこになる何か言わせるか。
なんか呪いをかけたくせに、離婚報告を聞いて
幸せになれって言ったよね!とか
ひどいこといっちゃうモーヴ、いいね。
でも…… 完全なる王道BL? そうなのかな。
私、BLって一度も読んだこと無いんだよ。なので手本がないんだけど……。
フツーの女ならともかく? 婚約者で嫁がミムだよ?
変質者はともかく、BLは難易度高いと思う。
私の仕事仲間のひとりが、結婚して嫁が変わったと嘆いていたことがある。
結婚前は、生活の中心に仕事があるのも、そのせいで帰宅が遅いのも許容してくれて、
そこが良いと言ってくれていたのに、
結婚したら仕事ばかりであることが責められる、
自分は変わってないのに、嫁が変わってしまった、と。
> 私的に BLの醍醐味は執着だと思うんだよねw ←謎の問題発言
なるほど。コレはありだね。
執着する小悪魔www それを相手にするレドは、幸せだと思うw
ミュ☆ミュさんがいちばん最初に書いたモーヴもまたモーブの一面とすると、
このくらいはいつでも出来そうじゃないですかw
レドや仲良くなった後のカーマインには見せない顔のひとつやふたつ、
あると思うんですよ。
これ、考えるのヤメましょうよ、響さん。
ここ突っ込んだら、BLなんて書くも読むも出来ませんて~。
> むしろ二人は確信犯の共犯でしょう。
うん、それは間違いないですね、共犯 (((o≧▽≦)ノ彡
この二人に関しては、付かず離れず、って感じでしょうかね?
レドが二度目三度目の結婚を隠したのって、
結婚している間、モーヴが誘ってこない、誘いにも乗ってこないからではないかと、
私としては疑っていまして (*ノωノ)
この話はたぶん、最初の離婚報告の後で、
レドはモーヴに触れたくて、どうしようもなくて、それで破綻~離婚の根っこになった
とか、あり得そうだなぁ、と今ひそかに妄想しております。
すごく面白い 完全なる王道BLだね〜♪( ´▽`)
仮面夫婦が続かないレドが密かに胸に秘めた面影は、芸術肌で悪にはなれないまっすぐなモーヴだった
BL難しい 仮面BLの生半可な私が目指したアンバーはせめても変質者でいようという決意だったはずなのに
結局女の子に走ってしまいました ああ BL さりとてBL なぜにBL
女じゃダメなのかぁああああああっ と叫んでみる
そして「いい男」の定義ってなんだ?って考えてた。
「良い家庭人の男」は家族を護る為に働いてカネ稼いでヨメと子供を裏切らない かな。
でも いい男は魅力的な男 なんじゃなかろうか。
人の気持ちなんて複雑なもんだから あきらめたって想いは簡単には消えやしないし
何が本気で何が浮気かなんて誰もわかりゃしないわよ。 本人すらね。
んで、レドはいい男だと思う。
私的に BLの醍醐味は執着だと思うんだよねw ←謎の問題発言
モーヴが最初はただのワンコで、それからよくわかんないながら レドに急速に傾いていって
執着深める小悪魔になっていく ってのにしよう。
わくわく
今回のウチのテーマは
キャラの「表情」なんですが
>その時のモーヴは静かで、そして冷ややかな、人をバカにしたような笑みを浮かべていた。
ここ いいなぁ(´ω`*)。o○
無邪気そうなモーヴのこういう表情サイコー(≧∇≦)
一夜限りのカンケイではなかった!!
モーヴのやつぅぅぅ
こうなるとレドの気持ちを分かったうえでモーヴは誘ってるのかと思えるな。
いや待てよ、モーヴもカーマインへの気持ちをレドで満たしているのかな・・
↓レドがズルいって和さん書かれてるけど、いやいや、ズルくないと思う。
むしろ二人は確信犯の共犯でしょう。
て、いいなぁそういう男二人の関係ニマニマしてしまう。
これが男女の関係になると突然嫌悪感が混ざるんだけど
男同士には勝てない_| ̄|○って思いがあるのと、これぞBLの醍醐味だと思うので
イイッ(≧▽≦)←テンション上がりすぎwww
ただねぇ、リアルでもたまーに聞く旦那が男と浮気した
女との浮気より許せない!っていう話、もし自分が浮気された当事者だったら
どうだろうと考えると・・
やばい、応援して喜んで隠れ蓑になって、だが二人の関係を見聞きして楽しんじゃうかも。
(ごくまじめに考えたw)
そういうつもりは全く無かったんですが。
そうとも言えるのか……。
私の解釈は、レドにとって結婚とは『寮生活最後の一年数か月の代用品』かな。
冷静に見ると、とんでもなくズルい男なんです。レドは。
そしてレドの見ているモーヴは、捕まったら最後! 奈落の底まで… な小悪魔なんです。
(ミュ☆ミュさんの書くモーヴは違うんですがw)
素敵な演出(o´艸`)
>何が本気で、どれが浮気なのか……。
>自分の心の中さえ解らないのに
僕はここが好き。
そして白ワイン……逃げ道というか、言い訳のクッションを作るのか。
結婚はレドにとっての白ワインなのか。
これを読んだら ( ̄~ ̄lll) ゼッタイいい男には見えんよ。
自分のキャラとしては、かなり好きだけど。
この前から 「齟齬」とか「レドしか見てないモーヴ」とか
言ってる流れなんだろうな。
なんかそういう方向の話を書いてるのかな???
続きを待ちましょう。
続き、お待ち申し上げます (。- 人 -。)
やっぱりどう考えても
ここにカーマインがちっとでも入り込む展開は
超むずかしい~(≧∇≦)
さっさとウチの方も書かなければ(ノ∀`*)ペチ
モーヴもセルリアンも
カーマインに対する遠慮から解放してあげたいのだ(*。-ω-)。 フフフ
レドはもともとメンドーな奴だ。
モーヴは一生、手放してもらえない (((o≧▽≦)ノ彡
ここも好き。
うむむ。
書きたい。
ちょっとまって、やばい書きたいっっw
あぁ、使いたかったセリフ『…… 僕の天使、慈悲をください』
を使ってくれてありがとう!!!
これは、何のために誰のために祈ったのかはわからないままのほうがおもしろいかな。
慈悲 (mercy) は、努力をしても成就しない何かに途方に暮れて
あとは神様に憐れんでもらうしか道がない 助けてくださいってことだよね。
>いつから、好きなのだろう。
>何に、これほど惹かれたのだろう
ここすっごい好き。
>(それでも俺は、お前のものだ、モーヴ……)
やばい、ここもすっごい好きだw
きゃはーっ 早く書こう、私も。
で、印を付けるんだ、レドは僕のものだよって。
あ、ねこちゃんを待ってからね。