Nicotto Town



サンタクロース

夕飯を食べ終わり、ママと一緒にお風呂に入った。湯船につかりながら、髪を洗っているママに向かってつぶやいた。

「ママ、どうして、健太のところには、サンタクロースが来ないの?健太が悪い子だから?」
「どうしたの?」

「幼稚園で、麻里ちゃんが、サンタクロースは、いい子のところにしかこないって言ってた。」
「健ちゃんは、いい子よ。」

「貴志君が、貧乏だから来ないって言っていたけど、ママ、貧乏って何?」

ママは、髪を洗い終わると、湯船に入った。僕を抱きしめながら、ママは話し始めた。

「貧乏の前に豊かさは何かを知らないといけないわね。絶対君主制時代のヨーロッパは、重商主義だったの。重商主義の豊かさは、『富とは金であり、国力の増大は、金の蓄積だ』と言われていたの。市民はお金がなくても、王侯貴族が豊かだったら、それでよかったの。日本も同じよ。百姓は生かさず殺さずと言われていたけど、それが正しいことだと思われていたの。」
「ひどーい」

「それに異論を唱えたのがイギリスのアダム・スミスよ。豊かさとは、人々が欲しいものが手に入る状態かどうかと言ったの。難しい言葉だと、需要が満たされているということね。市民が満足している状態が大事って言ったの。健ちゃん、分かった?」
「分かんない。」

「欲しいものが手に入ることが大事なの。大事なものを持っているかどうかということよ。世界一貧しい大統領と呼ばれたウルグアイのムヒカ大統領は、『貧乏な人とは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ。』って言ったの。」
「・・・・」

「健ちゃんの一番、大切なものは何?」
「う~ん・・・ママ!」

「ママの一番大切なものは、健ちゃんよ。健ちゃんもママも一番大切なものを持っているわ。だから、貧乏じゃないの。お風呂からあがるわよ。」

身体を拭いてくれているときに、ママの顔を見たら、頬に涙が流れていた。ママは、僕が布団の中で、本を読んでいるのを見ると、「いい子にしててね。」と言って、アパートを出た。

ママは、忙しい。昼間は工場で働いている。仕事が終わると、幼稚園に僕を迎えに来て、急いで夕飯を作って、ご飯を食べて、一緒にお風呂に入る。それから、近所のスーパーにパートに行って、僕が寝ている間に帰ってくる。

ママから、絶対に布団から出たらだめと言われているので、いつも絵本を読んでいた。今日は、マッチ売りの少女。とても悲しい話で、少女の大切なものは、天国のおばあちゃんだけだった。僕には、ママがいてよかった。

クリスマスイブの幼稚園のお昼ごはんは、ママが作ってくれたいつものお弁当だけど、おやつにケーキが出た。先生に、食べないのと言われたけど、持って帰って、ママと一緒に食べると言ったら、先生の分のケーキもくれた。

すっかり暗くなった頃に、ママが自転車で迎えにきてくれた。ママがいつもよりウキウキしている。アパートに帰る途中でスーパーに寄り、いつもよりたくさん買い物をした。

ママに、おもちゃを片付けて言われたけど、ママは自分で、すごい勢いで、絵本やおもちゃを片付けると、料理を作り始めた。チキンが焼けるいい香りがしてきた。ママの携帯が鳴り、話し終わると、お皿を出して、料理を並べはじめた。

チャイムが鳴り、知らないおじさんがやってきた。テレビで見るようなスーツ姿でネクタイを締めていた。ママに案内されて、おじさんは、椅子に座った。おじさんは、僕に挨拶をしてくれたけど、僕は、なんて言っていいのか分からずに、黙っていたら、おじさんから絵本と大きなケーキをプレゼントされた。

ママもおじさんも、あまり話さずに、「美味しい」、「ありがとう」とばかり言っていたけど、化粧をしたママは、お姫様のように可愛くて、おじさんは、「いい子だね。」と言いながら、僕の頭を何度もなぜてくれた。

僕は、おじさんが持ってきてくれたケーキをたくさん食べて、ママとおじさんは、幼稚園でもらったケーキを、美味しいと言って食べてくれた。

おじさんが帰り、ママと一緒にお風呂に入った。化粧を落としたママもとっても可愛い。ママと一緒にお布団に入ると、ママに、「健ちゃん、さっきの高橋さんはどう思う。」と聞かれた。「ママ、高橋さんのこと好きなの?」と聞くと、ママは、僕を抱きしめて、「そうなの」と言った。

ちょっと、焼餅を焼いたけど、こんなに嬉しそうなママを見たことがなかった。きっと、高橋さんは、ママにとって大切なものなのだろう。嬉しそうなママを見ていると僕も嬉しくなる。僕は、ママに、「高橋さんのこと好きだよ。」と言った。ママは、「健ちゃん、ありがとう。」と言って、もっと強く抱きしめてくれた。

ママが、高橋さんがくれた絵本を読んでくれていたけど、最後まで読み終わる前に、僕もママも寝てしまった。

朝、目が覚めると、枕もとに、リボンを結んだ自転車が置かれていた。僕の大切なものが、クリスマスに、二つも増えた。

アバター
2020/01/01 12:48
ゆりかちゃんが
さすがゆりかちゃん。感性が合ってますね。作者はおやつのケーキのシーンで涙でウルウルして、ベランダに煙草を吸いに行きました。

姪っ子は変わっています。去年、一番きになったことは、あおり運転だそうです。姪っ子との会話は、9割はニャンコさん集めのゲームとマリオの隠し技です。

ゆりかちゃんも、抜群のスタイルを維持できるように、お餅の食べ過ぎに注意してください。
アバター
2020/01/01 09:39
こんにちは、沖人さん。

クリスマスもとうに過ぎ、お正月なのに、コメント遅くなってごめんなさい^^;
ママが知的すぎる!
こんな賢いママに育てられた健ちゃんは、どんな聡明な御人になるやら。将来が楽しみですね~♪

ママの性格が、聡明な沖人さんを思わせますが、
もしかしたら沖人さんも、姪っ子ちゃんとこんな会話をしていたりして^^
まだ小学生なのだから手加減してあげて下さいね。
あ、そういえば全力でマリオにも付き合う良い伯父様しているのでしたっけ?
お正月休みも、楽しんで来てください*^^*


おやつのケーキの所が泣けてきますね。健ちゃん、良い子だ~T_T
健ちゃんはママの幸せを思って、ヤキモチを堪えたのですね。幼稚園児なのに大人だ。
大好きな人が笑顔だと自分も嬉しくなりますものね♪
もうすっかり大人になっているはずの私も、そんな健ちゃんを見習いたいです。
ママも健ちゃんも高橋さんも幸せになりますようにv

心温まるお話をありがとうございました。
コメントは遅くなりましたが、クリスマスイブに読ませて頂いていたので、
素敵なクリスマスプレゼントを貰った幸せな気分になれました(*^-^*)
アバター
2019/12/27 15:43
スズランさん
クリスマスや年末年始は、楽しい話がいいですね。特に、年始はおめでたモードで、漫才番組が多いですね。お笑い小説を目指します。
アバター
2019/12/27 15:23
読み始めは知的なママさんが、
待ち工場で務める厳しさに、世の中を憂いました。
その後、素敵な彼氏が登場して、
ほっこりしました(*^-^*)ノ

私も、もっと記憶力を強化したいです(><)
アバター
2019/12/25 22:23
たまちゃん
千葉で、バンパーをひっかけた頃、母親は家の前の電信柱にぶつけたそうです。DNAは恐ろしい。息子は、ガムテープを貼ったまま、直すつもりはありませんが、母親は高いお金をかけて修理するそうです。もう、運転しないように、母親の免許をかっぱらってきてください。
アバター
2019/12/25 21:26
新境地!子どもの目線も新しくていいですね~
ママとの関係がやさしくていいな。愛された記憶があると、子どもはちゃんとやっていける。
今年もクリスマスの実感がないまま過ぎてしまったので、
ほっこりするお話を読めてよかったです!
アバター
2019/12/25 18:21
リンゴさん
簡単に説明しようとすれば、「貧乏、暇なし。」という言葉があります。すなわち、貧乏は、暇なしの十分条件で、暇なしは、貧乏の必要条件です。高橋さんは、きっといい人です。ケーキ好きに悪い人はいません。ケーキ好きは、十分条件になります。
アバター
2019/12/25 12:57
貧乏の説明を具体的に難しい説明で整然と説明できる賢いママを見て
私ならどうやって説明するのかと考えてみました。
あまりにも稚拙な説明になりました。
ママの一番大切な建ちゃんを、同じく一番大切にしてくれる高橋さんであることを望みます(#^^#)
アバター
2019/12/25 03:47
ろくさん
店長のサポート役のろくさんは、経済学を身につけなければ、いけません。近代経済学のポイントを教えましょう。10%引きや半額のシールを見つけたら、迷わず購入。買ってから後悔です。

mさん
いやいや、高橋さんは、ご飯食べたら帰る紳士で、プレゼントの自転車は軽量カーボン製の数十万はする高級品で、太っ腹の小金持ちでしょう。応援しなければ、いけません。

環謝さん
いつもアンハッピーエンドになるとは、限りません。作者は空気の読める素直な性格です。クリスマスの夜には幸せを配るサンタのように、心温まる話を贈ろうとしたに違いうりません。

あずさちゃん
幸せには、いろいろな形があるから、決まったことは言えないけど、ママも幸せになる権利がある。健ちゃんも幸せになる権利がある。それを満たそうと頑張ってくれる男がどこかにいるはず。その男性に出会ったのでしょう。

つん
ママが頑張っている姿を毎日、見ているからら健ちゃんは、いい子に育ちます。心配は、自分で何でもできる子になってしまうので、結婚の必要性を感じず、世界をさまよう冒険家になってしまうかもしれません。健ちゃんに素敵な人が現れるのを願っています。
アバター
2019/12/24 22:15
ママはいつもあんな難しいお話を健ちゃんにするのでしょうか?
そして健ちゃんは スレてなくて純粋でよいこ^^
どうかいろんな事に負けない素直な健ちゃんでいてくださいね

健ちゃんメリークリスマス(。→‿◕。)☆*
アバター
2019/12/24 21:13
健ちゃんが虐待されないといいです
女を捨てるなとは言わないけど、子供は親を選べないしほかに頼れないから
母になったら男に走ってほしくないです
瀬戸内寂聴って偉そうに説法してるけど、子供を捨てた人だから
嫌いです
アバター
2019/12/24 20:24
ママ…例え話が難しすぎるんではなかろーか_(┐「ε:)_
↓の方と同じく、沖人さんお得意のアンハッピーエンドに向かいそうな予感がするけど、、、続くのかな!?
アバター
2019/12/24 20:10
・・・・・このまま高橋さんと・・・うまくいかない予感がする、私(/_;)
アバター
2019/12/24 19:46
ママのお話が難しくて私もわかんないw
今日のために用意したケーキが食べられなくてどうしたらいいかわかんない。
大切なものは健康。健康な体が欲しい。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.