【茨木家】番外編 小姓2 ゆぅり
- カテゴリ:自作小説
- 2019/12/15 19:01:18
くるくるとみぃにゃが踊りながら庭をまわると次々に松明に灯がともる。
今夜は城主さまのお酒のお供にささやかな出し物をお見せする。 いつかお客様がいらした時に披露できるようにとふたりで練習をしてきたものだ。 きっと心配したさうびがどこかでこっそりと覗いているに違いない。 すべての松明に灯が入ると、俺と双子のみぃにゃは目で合図をして、庭の端と端から同時に走り出す。思い切り地面を蹴って勢いをつけると、地面に手を付けるとんぼ返りを3度してから、手を付かない宙返りをしてみせる。 ふたりで子供の頃から毎日毎日、それこそ孤児院時代からこの茨木家で過ごすようになってからも毎日練習した技だ。 失敗するはずがない。 ポーズを決めて俺たちは笑顔を見せる。
城主さまは、もうそんな曲芸をしなくても、この家にいていいとおっしゃってくださる。 それでも俺たち双子の曲芸を披露できる機会があるのならお見せしたいと思っている。 それができる体力のあるうちはずっと。 それがいくらかでも城主さまのお役に立てるのであれば。
地面に片膝を着いて後ろ手に手を組むと、みぃにゃがそれを踏み台にしてひょいと宙を飛ぶと俺の肩の上に足を開いて飛び乗った。 まっすぐ立つみぃにゃを乗せたまま、俺はそろりと立ち上がる。 みぃにゃは片足を頭の高さまでゆっくりとあげると両手でポーズをとって静止する。
俺たちの孤児院時代の修練・・・という名の体罰は過酷だった。 失敗すれば、食事をもらえず、逆らったり、不満のある顔をしただけでも叩かれ水さえ飲ませてもらえなかった。 次第に俺は感情を抑えるクセが身につき大人の顔色を見ることも覚えた。 しかし、妹のみぃにゃは何度言っても、失敗しては泣き、不満に満ちた目で先生をにらみ返すことを辞めなかったので、食事をもらえないことが多かった。 夜中にこっそり服に隠したパンやイモを与えて、声を殺して泣く妹を抱きしめるしか俺にできることはなかった。
「曲芸を覚えればお金持ちの家にもらってもらえる」と言ったのは先生だったか孤児の仲間の誰かだったか判然としないが、あそこを抜け出られる唯一の手段がそれであり、目標になった。
みぃにゃが上げていた足を下ろすと「はっ!」とかけ声をかけ、俺の両肩を蹴って前方に空中を一回転した。 俺は彼女の腰を支えて着地の衝撃を和らげる。 ふわりと地面に降り立ったみぃにゃの誇らしげな満面の笑みが後ろからでも手に取るようにわかる。 城主さまの喜ぶ顔を見て俺も緊張が解けて笑みがこぼれた。 さうびもほっとしていることだろう。
いつかお客様にお見せできる日がくるだろうか。
「みぃにゃ、おまえ太っただろう!」
と、後ろから恨みがましい声で言うと 間髪入れずに
「太ってないもんっ!!!」
と反論して俺を睨んだ。
妹は相変わらず感情の起伏が激しい。
「前見て! お辞儀するぞ!」
と声をかけるとみぃにゃが笑顔に戻り、ふたりで城主さまに丁寧に挨拶のポーズを取った。 穏やかな夜のささやかな出し物。 ささやかだけれど幸せな一幕。
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城主:ロワゾー
【いとも優雅な?】城主
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さうび:Yure
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番外編
小姓2 ゆぅり:黒沢大和
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美味しいお料理のお話はさうび(料理人:Yureさん)のところでお楽しみください。 双子のゆぅりとみぃにゃもはりきって配膳してます。
色っぽい話も書きたかったんだけどなぁ。うむむ。
カワイイ配膳係だぁ(´∀`*)ウフフ
https://syourandouzi.wixsite.com/itomo-ryourinin/blank-27
露伴一家追加完了〜
全然違うものになっちゃってて申し訳ないです。
美味しものに今まで縁のなかった双子なので
ここに来てすごく幸せなんだと思います。
城主さまはきっと涼しいお顔と反して内心ははあはあしてるに違いありませぬw(断言w)
魔物になってずっと幸せに暮らせた方がいいかもねー。