デスサイズが振るわれるたび切り裂かれるように空気が揺らぎ、
ぽとりぽとりと軽い音を立てて茸が地面に落ち、それを使い魔たちがちまちま集めていく。

目に見える範囲に存在する最後の茸を、腕を伸ばし飛び上がって仕留めた光光は、
眉をしかめながら地面に降りた。

「つまらない」

そう言いながら自らの手を開き、再び握り、ため息をついた。

しょせんは茸である。
妙な弾力と柔らかさがあるために瞬時に狩るには速さや返しの角度は重要だが、
パワーなど一切、必要ない、どころか邪魔になる場合もある。

光光にとっては、ストレスが溜まる狩りであった。
薔薇が咲き誇るルシオール家の優雅かつ瀟洒な庭園で光光は吠える。

「なんか切りたい！ バッサリやりたい」
「じゃあ～お館様の人形を一体二体、切ってくればいいじゃないですか……」

茸を両腕に抱えながら、使い魔のひとりが光光の横を通り過ぎながら、ぼそりつぶやく。

「ああ、それなら……って、んなことしたら殺されるわっ！」

ついウッカリ同意をしかけた光光は、慌てて叫び、
あはははは…と笑いながら厨房に戻る使い魔たちをギロリと睨みつけた。

そんな光景を二階から庭を眺めていた、主・キズィローヴァの目が怪しく光る。
だが、それに気づいたものは誰ひとりいなかった。



キノコ集会は、魔界の秋の風物詩。
集まっては胞子を撒き散らし、幻覚に取り込まれ、または笑いが治まらない魔族が増える。
魔界では珍しくもない光景だが、
今年は何故か、はぐれキノコがルシオール家の庭園にまで入り込んできた。

食材が庭で狩れるとは、なんてお手軽な！ と厨房メンバーは喜んだ。

「大漁ですね。で、何を作るんですか？」
「さてな……」

光光はデスサイズをぶんぶん回しながら、何やら考え込む様子を見せ、
邪魔はしないように、と使い魔たちは下処理をしながら勝手に料理の話しを始めた。

「蟹か帆立と共に鶏白湯スープの塩あんとか、美味いよー」
「いやいや、茸なら青菜といっしょに醤油あんだろう。鶏油で照りよく仕上げて」

中華料理派の使い魔がそう主張すれば、

「アヒージョも茸は定番ちゅうの定番！ 魚介との相性もいい」
「フリッティーはどうですか。旬のオリーブを肉詰めにしていっしょに揚げましょう」

と、イタリア料理派。

「素材を殺さない料理なら土瓶蒸しとか！ 絞り汁は酢橘と橙の二種で」
「茸と厚揚げを含め煮にするとかもいいですね」

日本料理派が言えば、フランス料理派も負けじと、

「お館様はやっぱ肉ですよ！ 茸は肉汁でソテーしてガルニチュールで」
「茸ならテリーヌもいいですね！ 生クリームたっぷり滑らかに仕上げましょう」

やいのやいの… と盛り上がる使い魔たちの話に耳を傾けながら、
光光は、先刻からずっと背に感じている、ゾクリとするような何かを探り続けていた。
が、その正体がイマイチ知れない。不気味ではあるが、それほど切迫した危険も感じない……。

「もしや魔界風邪でも引いたかな？」

光光は人差し指を頬にあて、こてりと小首をかしげた。





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光光ｗ きっとこの後キズィに呼び出され、鉄拳をくらうと思われる _(L〃_ _)ﾉｼ ﾊﾞﾝﾊﾞﾝﾊﾞﾝ‼


キズィローヴァ （薔薇の館に住まう悩める主）　エメラルドさん
ローシルト （キズィの友人・ヴァンパイア）　❧響さん
キュルビス （ローシルトの料理人）　藍色さん

光光 （キズィ館の料理人）　和.com　※グアングアンと読むらしい (￣～￣lll)
　　　死神社会から逸脱してキズィ館に棲みついた、はぐれ死神。
　　　繊細な料理の前には必ず、デスサイズを振るうが如く、調理ナイフを振るいます。 ← 準備運動ｗ
　　　切断面が美しくないと、しばらく機嫌が悪いです。










藍色さんの後に、料理を…… って (￣～￣lll) めっちゃキツイわーーーっ。
ダブっているメニュー、調理法は多々ありますが、そのくらい許してあげてやってください (((o≧▽≦)ノ彡

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