Nicotto Town



肝試し

高一の一学期も終わりに近づくと、勉強のできる人間、運動の得意な人間、合う合わないということもだんだん分かってくる。

グループを作りたがる女子の中で、香苗は、いつも一人でいた。仲間はずれではなく、一人でいるのが好きな感じだった。大人しくて、休み時間はいつも本を読んでいた。

クラス担任の提案でクラスでキャンプに行くことになった。名目は勉強会で、テントを張る本格的なキャンプでなくて、青少年の家に一泊する。詳しい内容は学級委員長に一任された。

一日目は、夕飯にカレーライスを作り、キャンプファイヤーをする。お風呂に入って就寝。翌日の午前中は勉強をして昼前に解散という内容に決まった。

カレーライスを食べ終え、後片付けが終わると、日もすっかり落ちた。キャンプファイヤーの準備をする間やキャンプファイヤーをしながら肝試しをすることになった。

担任がくじをつくり、男女がペアになり片道20分くらいのハイキングコースを歩いていき、帰ってくる。中間の地点にある東屋に副担任がいるので、翌日の勉強のプリントを貰ってくるという、高校生らしい中途半端なものだった。

くじを引いたら、香苗とペアになった。担任から懐中電灯を受け取り、出発する。5分おきにペアが出発しているので、時々帰ってくるペアとすれ違い、暗闇でも怖くなかった。

山あいのキャンプ場で街灯の明かりがなく、空には満天の星が輝き、天の川もはっきり見えた。これまで、香苗とほとんど話したこともないのに、ロマンチックな雰囲気になった。

「いつも、本を読んでいるけど、どんな本を読んでるの?」
「歴史関係の本。刀剣乱舞が好きで、戦国時代に関心を持つようになったの。今は、長篠の合戦の本。」

「長篠の合戦て、信玄と謙信の戦い?」
「織田・徳川と武田と合戦よ。読み終わったら、貸してあげようか?」
「ありがとう。」

懐中電灯は一つで、自分しか持っていなかったので、肩がくっつくくらい近づいて歩いている。香苗から、リンスなのか爽やかな柑橘系の香がしてくる。手をつないでもいいような雰囲気だったけど、その勇気がなかった。

※注
パソコンでご覧の方は、ここから、BGMに下の音楽を流してください。
https://www.youtube.com/watch?v=szyh2zUwFKs

キャンプ場に戻ると、横山が立っていた。横山は不良グループの一人だが、何かに反抗しているというより、軟派なタイプだった。もう、学年の何人かが毒牙にかかったと聞いていた。

「肝試し、終わっただろ。早苗と離れろよ。」

香苗に聞いた。
「香苗ちゃん、横山と付き合っているの?」
「付き合ってないわ。」
香苗は、僕の後ろに隠れるように、身体を動かした。

「早く、香苗と離れろよ。お前、邪魔なんだよ。香苗、俺と肝試しに行こうか。」香苗が、完全に僕の後ろに回り込んだ。

「嫌そうにしているだろ。あっちにいけよ。」
香苗の手を握った。

横山が、いきなり、殴りかかってきた。僕は、手で払うと、香苗に懐中電灯を渡して、離れるように言った。横山と向き合った。横山の顔は敵意がむき出しになっている。

左手を前に出し、右手の手のひらを身体に引きつけ、中段に構えた。小学生の頃から合気道の道場に通っていた。今では黒帯になっている。完全に防御の体制をとると、お互いにそうそう決定打を与えることはできない。

喧嘩慣れしている横山も分かっているのか、手を出してこない。小刻みに移動し、間合いを図っている。横山は蹴りを入れてきた。

イテ。太ももを思いっきり蹴られた。合気道の弱点だ。蹴り技がないので、受け身も不完全だ。そもそも、足軽どうしが戦って、蹴りを入れようとする奴はいない。具足が邪魔でそんな動きはできない。合気道で想定していない攻撃だ。

横山は、蹴りを繰り返してくる。さっきは、不意を突かれたが、意識をしておけば、蹴られる瞬間に太ももに力を入れれば、ダメージを軽減できる。何度か、蹴られるうちに、間合いが分かってきた。

横山が蹴りだそうとしたときに、踏みだし、横山の横に並んで軸足を取り、後ろに放りなげるように後ろに倒す合気落としの技をかけた。蹴りかかろうとしていた横山は受け身を取れずに、地面に後頭部を打ち付けた。

横山は寝転がったまま、後頭部に手をあてて、胴ががら空きになっている。横山のみぞおちに体重をかけて正拳を落とした。ウグっと嗚咽を漏らして横川は転がった。

「香苗は、お前が手を出していいタイプの女じゃないんだよ。」
横山に言ったが、横山は睨み返してくるだけだった。

片はついたので、振り返ると、香苗が近づいてきた。僕は、香苗を見てほほ笑んだ。すると香苗は、僕の横をすり抜けると、「横山君、大丈夫。痛くない。」と介抱をしはじめた。

横山は、香苗に肩を借りて立ち上がると、二人でキャンプファイヤーのかがり火に向かって歩いて行った。そして、空には、満天の星が輝き、太ももがヒリヒリと痛んだ。

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2019/08/15 15:33
あずささん
ドラマの中ではあるけど、現実には、彼女の前でのヤラセの喧嘩はないでしょう。本当にする人がいたら、付き合っても直ぐにダメな人だと気付くと思います。
仮に自分の為に女性が争うとしたら、困ったなとか、面倒だなとしか思えませんね。
合気道に限らず、真剣な姿は心を打ちますね。ちょうど、今は、熱闘甲子園ですね。
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2019/08/15 14:18
こういうふうに目の前で自分の取り合いしてくれるの
最高~って女子もいるけど、もうちょっと頭使って
根回しできないと社会に出てから生きてけないんじゃないかと
思います やられた方が介抱されて好きになられるように
男子同士であらかじめ談合してる話読んだことがあります
合気道やってるなら公式試合に連れてってくれて
凛々しい姿見せられたら好きになるかもしれません
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2019/08/14 17:46
まぎまぎちゃん
思ったようにならないのが、恋愛なのでしょう。名前のない主人公も、強いだけではいけないと悟ったに違いありません。「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない。」とレイモンド・チャンドラーの名言を理解したでしょう。
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2019/08/14 15:35
工工工エエエェェェェ((゜Д゜;;)))
香苗~
なにそれ、どない~?
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2019/08/14 08:46
ゆりかちゃん
伏線はありませんが、自分の身は自分で守るアメリカは強い男がモテる。もののあはれや惻隠の情の日本では、かよわきものが愛されると日米文化の違いが隠されたテーマなのかもしれません。それか、ユーチューブを見て、何も考えずに書いたのだと思います。
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2019/08/13 20:17
こんばんは、沖人さん。

え!最後のオチはなぜ~??
相変わらず意表を突く展開ですね。
香苗さんは、どうして横山くんのほうにいくのかな。

小説の中に、伏線が隠されているのだとしたら、
長篠合戦好きなヒロインは珍しいので、私の予想では…

①長篠と川中島を間違える主人公に幻滅した
②弱きを助けて強きを挫く、謙信のような性格だった
③実は横山くんが、長篠の勇士・スネエモン旗指物柄Tシャツを着ていてトキめいた

くらいしか思い浮かびませんが、そんな冗談はさておき^^

合気道を嗜む主人公のほうが、絶対カッコいいと思うのにな~。
本当の理由は何でしょう?

ヒロインの乙女心はいつも複雑ですが、一筋縄でいかない所が、沖人さんの小説の面白い所ですね♪
今回も楽しませて頂き、ありがとうございました(*^-^)
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2019/08/12 01:29
さなちゃん
誤字脱字は気にしない気にしない。勢いで書いているので、間違えだらけなのだ。登場人物の名前も途中で変わったりしてしまうのだ。

みゅうさん
至って、平和な人間なので、殴り合いはしたことがないです。サラダご飯、美味しそうですね。炒り卵とご飯の組み合わせが美味しくないわけがありません。オリーブオイルが意外でした。暑い日が続いているので、早めに作るようにします。

みーぴこさん
つっこまない、つっこまない。途中で香苗になったり沙織になったり、香になったり、名前があっちにいったりこっちにいったりしました。直し忘れてしまいました。

Cherryさん
合気道はちょろっとしていましたが、合気道で喧嘩をして勝てる気がしません。相手が油断をしているときには、有効だと思うので女性や弱そうに見える男子には向いていると思いますが、正面切っての戦いならば、逃げるが勝ちです。

環謝さん
顔ですよ、顔。横山君はイケメンだったのです。イケメンに興味はなかったのかもしれませんが、弱い一面を見てしまい、急に母性本能に目覚めてしまったのでしょう。

弓弦羽さん
そうです。とどめを刺さなかったのが失敗かもしれません。コテンパンにして、土下座して謝らせておけば、香苗ちゃんも情けないなと思って愛想をつかしたかもしれません。

オレンジ先生
BGMが元気がいいですからね。アメリカの喧嘩は、鉄パイプを振り回すどころか、ライフルでパトカーを爆発させたり、限度をわきまえていませんね。主人公は振られてばかりで、打たれ強いはずなので、大丈夫です。

蓮さん
女心は不思議なのです。青春ドラマでも、ヒロインが不良の彼女になっていたりします。一つでも惹かれるところがあれば、女性は十分なのでしょうか。

たまちゃん
相手が蹴りを入れようとしたら、マシンガントークでひるませればいいのです。グリッサードの動き知っているの?蹴るなら、両足を180度にきれいに開かないとだめよと、バレエ用語で攻めれば相手は当惑すること間違いなしです。

clefさん
深く考えていないので、ワンパターンになってしまうのです。寅さんが好きなので、ワンパターンでもいいかなと思っています。しかも、読者はパターンじゃないと怒りますので、伝統芸を目指して突き進みます。正露丸より、ご飯の中の砂糖の方が食べるのがつらそうな気がします。
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2019/08/11 22:17
拝読して、又戦国時代の話絡みか、、、と素通りしようとおもったけど。。。
皆さんのコメントの突込みが面白すぎて出て来ちゃいました(笑)
このヒロインのモデルはなぁ~んとなくわかる気がします、沖人さんの小説には
良く似たヒロインが登場しますよねw

肝試し、まさに高校の時の部活の夏の合宿でありました(笑)
憧れの先輩達が何人か居たので、ちょっとドキドキした頃でもありますw
最終日には代々伝統になっているお握りロシアンルーレットがあって、
中身は普通の具の他に、砂糖、生玉葱のみ、そして正露丸、この様になっていました。
正露丸が当たった周りの人は正露丸の匂いで大変なことになりました(笑)
勿論、作った私達はしっかりと怪しい中身のお握りは全部避けて食べましたが^^;
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2019/08/11 20:54
えーえーえー、まさかの結末ーーーーー!
結局のところ、横山君はイケメンってことなんでしょうかね?
香苗ちゃんもきっと物静かな美人さん。
合気道って、蹴り技がないんですか!
私が習っている八卦掌(人を倒す練習はしてませんが)も、
蹴る型はあまり入ってないんですよね。手がメインなので。
相手に蹴りを入れられたら、うまくかわすのがいいのかなぁ。
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2019/08/11 02:12
主人公の後ろに隠れてしまうほどだったのに
その男の子を介抱するのってどういうことでしょうか??
可哀そうに思っちゃったのかな?
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2019/08/10 23:58
素直にBGMをかけたら
音楽が気になって
文章が頭の中に入ってこなくて
困りました。
2つのことが出来なかった・・・(汗)

嫌がってたのに
やられているのを見たら
かわいそうになっちゃったのかしら・・・。
主人公がかわいそうです・・・。
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2019/08/10 22:49
あ〜ぁ。

いっそ息の根止めたった方がスッキリせえへん?
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2019/08/10 22:22
(*'ω'*)......ん?
嫌がって隠れるほどの男性から、守ってあげたのに
なんで沖、いや主人公がフラれたのかよく分からないんですが・・・

もしかしたら、普段よく話もしたことがない沖、いや主人公に いきなり
『 香苗は、お前が手を…(以下省略 』
なんて呼び捨てにされたから ちょっと違うと思ったのかしら(*´艸`)
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2019/08/10 21:55
沖人さんの実話?!

合気道やってたの?

最後に突然あらわれる沙織さんってだれかしら?
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2019/08/10 21:05
沖人さん、こんばんは✿

なんだか現実味のある 青春物語ですね^^
このお話は沖人さんの実体験をもとに書かれたのでしょうか?

主人公がちょっと腕に自信があるところにワクワクしてましたw
更にBGM選曲も喧嘩を盛り上げてくれて・・・
なのに~『何度か、蹴られるうちに』にふいちゃいました( *´艸`)ウフフ

最後の方の 僕の横をすり抜けていった『沙織』とは誰?
①香苗 ②実在の人物 ③幽霊

とても楽しかったです♪ありがとうございます^^
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2019/08/10 18:16
沖人さんこの話は若かりし頃の思い出ですか?フィクションですか?
結局彼は満天の星空のした振られたと言う事でしょうか
若いって羨ましい色んな経験や冒険が待っている
折角の素敵なお話に水を差すことにごめんなさい

此方に失礼します
サラダ御飯のレシピ
炒り卵&ロースハム&キューり&とうもろこし&トマト準備
トウモロコシ半分を包丁でそぎ落とし湯銭に欠ける
キューり縦に4つに切り角切り
炒り卵
ロースハムも角切り
トマトも角切り粗熱が取れれば冷蔵庫で冷やしておく
炊きたての御飯を大きめのボールに移しオリーブオイルをふりかけ塩コショウで味を整える
お寿司を作時と同じように御飯を切るように混ぜる
粗熱が取れれば具材を入れ(注意)2回分が限度
残ればタッパに入れ冷蔵庫に保管夜食べあくる日のお昼にひんやりしてのぞ越しが良い
分からなければ又お声掛けください
追伸オリーブオイル多い目にかけてくださいね
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2019/08/10 16:09
片道20分のハイキングコースって結構な距離・・・
と思ってたら途中の誤字はわざとですか?ww
沙織さんてだれ?www




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