日曜日は、レ・ミゼラブル東京公演の５月分ネット販売の開始日だった。1年前から楽しみにしていた発売日だ。先行予約抽選にはずれてしまい、東京公演は5月で終わってしまう。最後のチャンスだ。3時に目が覚め10時になるのを、まだかまだかと待っていた。

9時55分にネット予約のアイコンを押したが、発売初日のため10時にならないとアクセスできませんと表示される。マウスのポインターをアイコンに合わせ、パソコンの時計とにらめっこ。9時59分59秒に、一呼吸おいてマウスをクリック。

HPの中で渦巻がグルグル回り、しばらくたつと、ただいま回線が込み合っています。しばらくたってからアクセスしてください、ブチっと画面が変わる。何十回と繰り返し、12時にようやくアクセスできた。予約画面を開くと、全て完売になっていた。

この憤りと無情さをどこにぶつければいいんだろう。東京公演が終わると、名古屋、大阪、福岡、札幌へと公演場所が移っていく。追っかけをしてもいいけど、一人だと寂しい。同じ趣味の人がいればいいが、レ・ミゼラブルとスイーツ作りが好きなおっさんの同年代は、そうそういない。

レ・ミゼラブルの主人公ジャンバルジャンは、1本のパンを盗んだせいで、流転の人生を歩んでいくことになる。フランス革命後のパリが舞台だ。ジャンバルジャンが盗んだパンは、フランスパンに違いない。

フランスパンは細長いバゲットを思い浮かべるが、細長いのが主流になったのはつい最近の20世紀になってから。1920年代にワークライフバランス働き方改革で、パン職人が夜10時から朝4時まで働くことが法律で禁止され、朝食に間に合うように、直ぐに焼きあがる細長いパンが普及した。

そうWikipediaに書いてあったけど、手元のフランスパン巡りの本には、「フランスのパン屋さんの1日を知っていますか？フランスのパン屋さんのスタートは夜中の0時です。」と書いている。何を信じればいいのか。

チケットを逃した無常を、フランスパンづくりにぶつけることにした。フランスパンは、グルテンの少ないフランスパン専用粉（準強力粉）を使う。砂糖もバターも使わない。生地を優しく軽くこねる。発酵時間が長く、一次発酵、二次発酵合わせると2時間近くになる。

発酵を待つ間が退屈になり、太巻きを作ることにした。一人暮らしだが、巻きすと寿司桶がある。巻きすは、うどんを茹でて水で締めたあと、水をきるため。寿司桶は、釜揚げうどんをしたときの入れ物。

一番簡単で、美味しい讃岐うどんの食べ方が釜揚げうどん。半生麺を買ってきて、10分少し茹でて、水で締めずにそのまま、ゆで汁と一緒にどんぶりに入れる。ネギとショウガを入れたツユに付けて食べると釜揚げうどん。

水で締めずに、麺をどんぶりに入れて、生卵と少しの醤油をかけると釜玉。高松を訪ねると屋島の麓の「わらや」に案内されることがある。そこには、釜揚げうどんしかなく、寿司桶に入れて出てくる。各自で食べたい分だけ食べることができるので、子供連れの家族には便利。別名、たらいうどん。

太巻きは、エビ、アボガド、きゅうり、カイワレとおでんの時に余ったかんぴょうを煮て具材に。味は、コンビニの太巻きに完敗。敗因は、カロリーを気にしてマヨネーズを少しだけにしたから。シェークスピアが語ったように、「美味しさをとるか、カロリーをとるか、それが問題だ。」

太巻きづくりを終えて、炬燵の中で発酵をさせていたパン生地を焼く。バゲットはオーブンレンジに入りきらないので、ちょっと短く、太いバタール（中間という意味）に。

上手なフランスパンの焼き上がりは、大小まばらな気泡のあとがあること。フランスパンは、でこぼこしてて、バターを塗りにくいじゃないかと思っていたけど、それが、いいパンらしい。

バタールの焼き上がりは、外皮はフランスパンらしくカリカリで香ばしかったけど、中身は普通のパンのようになり、フランスパンらしい軽い焼き上がりにならなかった。

しかし、チーズとハムを挟んでパニーニのようにして焼くと、食パンとは違った皮の固さ、身の柔らかの変化を楽しむことができる。バタールは、あと2本残っている。チーズフォンデュにしようかな。