小説『恥辱』
- カテゴリ:小説/詩
- 2018/12/22 13:25:53
J.M. クッツェー 著
『恥辱』を読みました。
恥辱・・
ネガティブでどこか刺激的な響きをもつ
そのタイトルと
エロティシズムを感じさせる
表紙カバーに惹かれ
昼ドラのような愛憎劇を想像しながら
読みはじめたのだけれど
けっこう硬派な
リアリズム小説でした。
南アフリカの大学で教鞭をとる男性が
教え子の女学生と関係を持ったことをきっかけに
大学を追われ
田舎で農園を営んでいる
実の娘のもとに転がり込むという話で。
西欧の
文学的・芸術的な要素を織り交ぜながら
南アフリカ社会の
都会の世知辛さ・田舎の混沌としたさまが描かれ
偏屈で
女たらしで
自らの立場と老いを自覚しつつも
夢への情熱と欲望を捨てきれない
インテリな主人公が
欲望の赴くままとった行動と
感情の赴くままとった行動により
つぎつぎと厄災にみまわれ
実の娘まで厄災にみまわれるという
因果応報にも程がある
転落のさまが描かれていました。
人間は強烈なしっぺ返しを受けることで
考えや行動をあらためるもので
私も数々経験があるのだけれど
本書の主人公は
固定観念や人生観まで
ちゃぶ台返しされるような憂き目にあい
はじめは好きになれなかった主人公が
だんだんと憐れに思えてくるのでした。
読後感はけっしていいとは言えないけれど
転落した主人公の再生をほのかに匂わせ
「愛とは何なのか?」という
深遠な問いを想起させるような小説で
軽妙な語り口の文章と
ハラハラな展開が続くことで
読むのを中断することがむずかしい小説でもありました。
まさに急坂をごろんごろんと転げ落ちて止まらない感じ。
でもこういうの、ちょっとした小さなきっかけで起こるんでしょうね。
決して他人事ではなさそう・・・^^;
近代小説の主人公はダメダメ人間多いですね。
若い頃はなんで人間の駄目さ加減をあげつらって逐次描写するのか意味が分かりませんでしたが、
爺になって分かる気がします。
ダメダメなのを自覚しない方が最悪な駄目なんじゃないか
と最近思います。(適当ですいません。m(__)m)