Nicotto Town


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【DH】 アルシア 5 セレスへのメッセージ 



      + + +
   セレスの住所を教えておく。
   詳しい場所は和衷が知っている。
   アルシアには世話になった。
   出来れば、セレスも頼む。
      + + +


ユベールの語り口調そのままに耳元で聞こえてくるような、そんな文面を読み、アルシアは和衷を睨む。
本人はいつもの通り我関せずといった表情で、アルシアの側に控えていた。
この手紙を渡せと言われたから渡した、和衷にとっては、ただ、それだけのことなのだろう。

「和衷、おまえ、ユベールにコキ使われたみたいだね」
「使い魔使いが荒いトコロは、主と主の従兄弟どの、よく似ているよね?」
「…………働き者で、助かるよ」

諦めたようにそう言って、アルシアは、ユベールの手紙を引き出しのいちばん上に仕舞い込んだ。

アルシアと従兄弟のユベール、その二人と同じ歳の従者セレスは、
幼い頃から共に過ごすことの多い間柄であった。
マイペースで自己完結型のアルシア、こうと決めたら一直線の行動派ユベール、その間に立つ思慮深いセレス、
なかなかに良い取り合わせだというのが、周囲のオトナたちの評価だった。

特に、ユベールとセレスは、歳を重ねるごとに互いの内面をさらけ出し、相談したりされたり、
といった関係を作り上げていた、ようにアルシアには見えていた。
それでもアルシアには、蚊帳の外に置かれているといった疎外感はなく、
男同士のほうが話しやすいこともあるのだろう程度のことだと思い、気にも止めずにいた。

そんな彼らの、アルシア抜きの会話の一端をユベールから聞かされたのは、セレスが消えた後だった。

「セレスはおまえに惚れていたんだ」

その時、アルシアには断れない縁談があった。
アルシアの家よりも高位で、縁戚となれば家の後ろ盾としては上等すぎるほど上等で、
むしろ歓迎すべきものであった。
……アルシア個人にとって、あまり条件の良いものではないにしても。

「気は進まないけど、まぁ政略だから断れないし」
「……そう、ですね」
「嫁に行く時、セレスは付いてきてくれるよね?」
「私が……ですか? 侍女ではなく?」
「うん、セレスがいてくれると心強いし。向こうに行っても私は退屈だろうし」

この会話の数日後、セレスが何を考え、どんなことを思って刃物を向けるという行動につながったのか、
正直、アルシアにはキチンと理解できているとは言い難い。

ユベールには、「セレスは空気のようないい人ではなく、アルシアに憎まれたかったのだろうな」と、
罪人として憎まれ生涯、アルシアの心に刺さった棘になりたかったのだ、と言われたが。

例え、それがキッカケであったとしても、時間が経てば、一時的な気の迷いだったと思うだろう?
アルシアはそう思い、凶悪犯罪者のひとりを拘束し呪をかけた、おまえはセレスだ、と。
そうしてセレスが処刑された、という事実を作り出した。

ユベールにはミゴトにばれたが。

それでもアルシアは、セレスだって誰にも追われない自由を手に入れたほうがいい、と思う。
偽物とはいえ罪人セレスが処刑されたニュースを聞いて、
本物のセレスに、もう自由になれ、というアルシアの無言のメッセージを受け取ってほしいと思うのだが。

(出来れば、セレスも頼む)

ユベールの言葉が聞こえて来るような気がした。
……さて、どうしたものか。
そんなことを考えているアルシアの視界に、和衷が食事を運んできている姿が見えた。

「主~、食事に……」

そう和衷が言いかけた時だ。
風が周囲の木々を巻き込んで騒めき一面窓の硝子が軋むような音を立てたかと思うと、
手にメインディッシュを持ったまま、こちらに向かって歩いていた和衷の姿が、すぅっと消えた。

「……また迷子か」

この様子では、数カ月くらい、帰って来ないかもしれない。
しんと静まり返った空間を見つめたまま、アルシアはため息をついた。



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ユベール 黒沢大和さん ↓
   https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=688666&aid=66858712
名もなき従者 改め セレス ―――
使い魔・和衷 和.com
呪術士アルシア 和.com

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2018/12/20 01:04
うんうん ボスが「従者セレス」を読んでくれたら
わかるものだろうか?
>顔を切り取るなならまぁ百歩譲ってわからんでもないが 理論上
そんな猟奇的なww
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2018/12/18 23:39
しかし惚れた女の顔に傷をつけるというのは納得がいかんな
顔を切り取るなならまぁ百歩譲ってわからんでもないが 理論上
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2018/12/18 23:37
もしかしたらラーメン横丁に迷い込んだら中国いけるかもな! マジな話
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2018/12/16 00:39
和衷ってこういう風に迷子になっちゃうんですかー( ̄。 ̄)ホーーォ。

そうかー
セレスはアルシアに惚れてたから斬りつけちゃったのかぁ(-ω-;)ウーン
これで縁談は破談になったのかな(。◔‸◔。)?
嫁に行くときついてきて と頼んだのは
デリカシーに欠けてたのかしら(´ε`;)ウーン…
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2018/12/15 23:32
アルシアのご飯は何処~じゃなかった
和衷さんは何処へ・・・
使い魔使いが荒いに笑ってしまいました、不謹慎ですね<(_ _)>

想い人が嫁ぐのについていかねばならないのは
(しかも想い人が幸せな結婚ではないとすれば)
離れるよりも辛いことだったでしょうね・・
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2018/12/15 20:43
セレスは別の男のところに嫁ぐアルシアを
従者として見続けるのは辛かったのかもしれないな。
「空気のように良い人」ではなく心に刺さったトゲのように
「良い縁談を壊した」「刃物を向けて傷をつけた」罪人として
憎んでも忘れられない存在でありたかったのか。
セレスの直接逢って胸の内をいつか知ることができるといいけどな。



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