「あーあ、見つかっちゃったかぁ」
「〝見つかるようなところにいるなよ、このアホウが！〟 ……と、我が主からの伝言じゃ」

八つ当たりのようなアルシアの伝言を事もなげに、それでいて臨場感たっぷりに伝える使い魔・和衷に、
ユベールは苦々しい顔を向ける。

「なに、その言い草」
「見つけたことで、主の自由気ままな日々が終わってしまうのだそうだ。それを主は嘆いておる」
「……それ、俺のセリフだと思うけど？」

アルシアの探し人、ユベールは、とある王国の高位貴族の長子であった。
母の身分が低いがために後継にはなれなかったが、
見目に優れ、ダンスの名手でもあったことから社交界の華と謳われ、
さらに武芸にも秀で、国境線における戦いにおいては救国の英雄とまで称えられ……。
何ひとつ憂いのない貴公子、のはずであった。

それがある日、突然、何の前触れもなく失踪した。
その彼を探しだし連れ戻すように、との命を受けたのが、従姉妹のアルシアだ。

失踪の理由は解らない、とアルシアは公言したが、なんとなく心当たりがない訳ではない。
だから、探すフリをしながらも、見つけるつもりは欠片もなかった。
その一方で、ユベール捜索の命は、家から出て自由に動き回ることを目論んでいたアルシアにとって
なかなかに美味しい大義名分であった。

ゆえに、過日の舞踏会で得た錬金術師ルパンの情報が、望んだ以上に正確だったのは、
アルシアにとって誤算だ。
なんで見つけるんだ、あのヤロウ…とひそかに錬金術師ルパンにまで悪口雑言を吐いたほどである。

「アルシアは何で自分で来ないんだ」
「顔を合わせたら本当に見つけたことになってしまうから、とか言っておったな」
「現実逃避かよ。まぁ、元気そうで何よりだ。で、アルシアはどこに？」

使い魔・和衷はふと視線を窓の外に向ける。

「主は、山裾の館で新しい呪術の開発に励んでおる」
「そっか。……じゃあ俺、また隠れるから、ってアルシアに伝えてくれ」

使い魔・和衷は黙ってただ頷いた。



その頃、アルシアは書斎のソファーに横たわり、夢を見ていた。

自分の目前で鋭利な刃物が振り下ろされるのを、まるで他人事のように見てる夢。
痛みも、恐怖もない、夢のなかで、単なる過去の記憶だ、と認識しながら見ているような現実味のない夢。
それでも、刃物を振り下ろす男の顔を見て、
自分がひどく驚いている、その感情だけがひどくリアルだった。

男はアルシアの家に仕える従者のひとりだった。
従者であると同時に、アルシアとユベールにとっては、幼馴染みでもあった。

刃物を振り下ろす男の顔は、後に、悪鬼のような怖ろしい形相であったと、
あの日の光景を見ていた者からは繰り返し聞かされたが、
どう思い返してみても、アルシアの記憶に残るのは、決して恐怖を引き起こすようなものではない。
むしろ、傷をつけられたアルシア自身が罪悪感に苛まれるような、そんな表情だった。

夢から覚め、アルシアは凝り固まった身体を伸ばし、庭から森へと足を踏み入れた。
ふと、そう遠くない場所で何かが動く気配を感じ、拘束の呪を放つ。

かかっていたのは、鹿によく似た魔物だ。
使い魔・ゼリーなら、角は薬にも装飾にもなる !! と喜ぶだろう。
和衷なら、どう調理して食おうか、と考え始めるだろう。

アルシアはそんなことを思い、森の奥に目を向けた。
月の細い夜、落葉しても無数に伸びる木々の枝に阻まれ暗い森にあって、
ぽっかりと開けた一角だけが、まるでスポットライトのように降り注ぐ月光を集めている。

それを見て、アルシアは思い出す。

ユベールがある貴族の庭園で、月明かりを頼りに踊っていた光景を。
お相手は、どこか戸惑いがちな表情を見せながら、それでも美しく可憐であった。
一方のユベールは、公の場で常に見せている社交辞令バリバリの、うさん臭い笑顔ではなく、
とろけるような満面の笑みを振りまいていた。
アルシアは、とうとう惚れたか、アイツ… と心のなかでニヤニヤと笑っていたものだった。

とめどなく巡るアルシアの記憶は、従者であった男に戻る。

きっと今も、罪人として追われているのだろう。
捕まったという話が聞こえてこないから、まだ、逃げ続けているのだろう。
アルシアには、追う気持ちなどない。
それどころか逃げられるものなら逃げ切ってくれればいい、とさえ思う。

ただ気になるのは、アルシアが最後に見た男の表情だ。

「おまえは未だ泣きだしそうな、哀しい目をしているのか？」

細い月明かりが照らし出す森の一角は、もうアルシアになんの幻影も見せなかった。



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ユベール　黒沢大和さん ↓
　　　https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=688666&aid=66858712
名もなき従者　―――
使い魔・和衷　和.com ↓
　　　https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=180002&aid=66866159
呪術士アルシア　和.com　※傷はメイクで隠れる設定ですｗ



テキトーに書きなぐってみたら、なんか、探しているのが二人になった。
いや、正確に言えば、どっちも探してなんかいないけど… でも。でも。でも。どうしてこーなった？

　　アルシア　「和ちゃん和ちゃん、どこまで話を広げるんだ？」
　　和ちゃん　「ノープラン！」
　　アルシア　「続きの構想はあるのか？ END マークは打てるのか？」
　　和ちゃん　「神のみぞ知る！」
　　アルシア　「このままだと単なる 〝思わせぶり詐欺〟 で終わるんじゃないか？」
　　和ちゃん　「かもな！」　　

……ああ、なんて不毛な会話　ヾ(--;)ｫｨｫｨ　でもこの話、書いていてはすごくオモシロかったんだｗ

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