悪魔なので邪神を育てる事にした 30話
- カテゴリ:自作小説
- 2018/11/25 19:34:27
~ 第二部終了とおまけ ~
「「キャー!」」
有栖川レイと幽霊が同時に悲鳴を上げる。
レイはまさか幽霊がセキュリティーだとは思わなかったし、幽霊もまさか人が来ると思ってなかったのである。
その頃邪神様は魔道球を見ながら爆笑していた。
「邪神様・・・ これが見たかったのですか?」
「うむ、我の会社に幽霊が居る事は知っておったでの。 夜中に誰か来たらどう言う反応をするのか見てみたかったのじゃ」
「流石邪神様です。 まさかセキュリティーに幽霊を使っていただなんて」
「あれは偶然じゃ」
因みに会社のセキュリティーは本当に無い。
ハッキングに対する防壁は完ぺきなのだが、泥棒には全く対応していない状態。
わかればバアルが何とかすると言うだけだ。
レイと幽霊は戸惑っていた。
『『何でこんな所に』』
二人とも同じことを考え、動けない。
幽霊は人間相手なら即座に呪い殺す事も出来るのだが、昼間居る悪魔の残滓とも言える魔力で、只ならぬ場所であると思ている為、目の前の有栖川レイもそう言う力を持っているかもしれないと思っているし、レイは生まれて初めて見る幽霊がどのような力を持っているかわからなかったのだ。
最初に話しかけたのは有栖川レイだった。
「ちょっと、あんたここの警備員か何か?」
「あんたこそ悪霊退治かなんじゃないでしょうね」
「警備じゃないなら見逃してくれないかしら?」
「私も幽活があるから、そう言う訳にも行かないわ」
その会話は魔道球を通じて邪神様とバアルに筒抜けだった。
「邪神様、この場合実体のない幽霊が圧勝でしょうね」
「そうじゃのぅ、じゃがどちらも美人じゃし、失うのはちと惜しいのぅ」
「幽霊の方は顔が見えませんが・・・」
「心眼で見るのじゃ! 色白で少したれ目、無き黒子がある整った顔をしたスレンダー美人じゃぞい。 対する女スパイは正反対の我儘グラマラスボディーに、ハーフ独特の美しさを持った顔じゃ!」
「では、どういたしましょうか?」
「二人とも社員にしようと思うのじゃ」
こうしてバアルと邪神様が会社に駆け付け、幽霊も有栖川も見つかってしまう。
幽霊は邪神様のコンビニウエィブで実体化し、身なりを整えられ、怨念を消されて社員にされた。
有栖川レイはバアルに説教され、無かったことにする代わりスパイを辞めて、邪神様の会社に就職する事になった。
こうしてこの二人は会社の新しい美人受付嬢になったのだ。
今、邪神様とバアルは夜の冬山富士山のてっぺんに居る。
ご来光の時期でもないし登りにくい剣ヶ峰の旧富士山測候所近く、南側で両側が崖なので朝日が見にくいため人はいない。
しかも周りはアイスバーン。
テレビで見る様な元旦の富士山御来光の人だかりには、素人が含まれない。
一般の人の入山制限は7月~9月であり、12月ともなれば-30度にもなる。
その薄暗い山頂から徐々に太陽が顔を出し、白い雲海を光らせていく。
真っ青な空に輝く白い雲海。
「人間界も美しいものですね」
「そうじゃろう。 魔界じゃろうと、人間界じゃろうと、美しい所は沢山あるのじゃ」
「このままにしておきたい風景です」
「うむ、我からすれば、皆我の一部じゃからな。 どこが欠けても悲しいわい」
「ところで邪神様、火星人が攻めて来た時、何故人間界で騒ぎにならなかったのでしょう? 26話で「ん」と仰ってましたが」
「あれは我が30年ほど前から地球の大気に放っておる"ナノマシーン"で人間の脳やコンピュータから記録媒体まで操作したんじゃな」
「昔からそんな事をしていたのですか?」
「昔の我はそのような手段を知らなんだ。 それ故人間の子等に"神の耳目"としての能力を持たせ、世界を見ておったのじゃよ」
「それをどうして御止めになったのですか?」
「うむ、人の技術が進むにつれ、直接手を加えると健康診断で引っかかる事が有るのでな」
「それだけですか?」
「それに人が居ないからと言っても人工衛星なども出来た事もあり、人の目の届かない所まで見るのには、ナノマシーンが都合がよかったのじゃよ」
「結局、魔力は科学に劣るのですね」
「そんなことは無いぞい。 人間の知る自然の力なぞ2%程に過ぎぬ。 ある意味きちんと統計分類すれば、魔法とて魔法とは言わず科学と言うものになるじゃろうの」
「そうだったのですね・・・」
バアルはこの美しい風景を背景に、自撮りして妻に自慢しようと思ったのだった。
第二部終了
富士山の山頂って、吹雪になるとそのくらいらしいですよ。
元旦にご来光を見る人がよく山岳救助隊に助けられてるらしいです。
しかも車が入れないのでおぶって降りてくるんだとか・・・
救助隊は必ず「ブドウ糖」を持ち歩いてるんだとか。