悪魔なので邪神を育てる事にした 18話
- カテゴリ:自作小説
- 2018/11/13 19:48:21
~ 訳アリの入力装置 ~
秋葉原でキーボードやマウスを買った邪神様であるが、とても拘りがあり思いのほか時間がかかった。
と言うのもバアルが詳しくなかったのだが、プログラム専用に使うキーボードはテンキーと言うのがあまり使わないらしく、テンキーの無いキーボードと、逆にものすごい数のショートカットキーが付いた1680万色のグラデーションで光るキーボードが必要だと言っていたからでもある。
勿論テンキーも別売で買った。
それ以外にも何故か既に社内で用意しているPCでは不満だと、パソコンのパーツを金に糸目をつけずに買い漁り、何故かブルーライトで光るPCを1つ作れるくらい買っていた。 やたらと性能がいいらしい。
『フッヒッヒ、これでネトゲ最強なのじゃ』
「邪神様、よからぬことを考えておりませぬか?」
「そ、そんなことは無いのじゃ! 高速入力して一早く敵に対応できるのじゃ!」
「敵ですか・・・ コンピュータにも敵がいるのですね」
「う、うむ。 ハッカーとか社内の機密を盗もうとする奴が世界中におるからのぅ」
「まことに人間界は欲望の塊ですな」
何とかバレずに済んだと思った邪神様であった。
とは言えこの2人、やたらと目を引く。
何故ならバアルは気が付いていないが、キモオタの格好をしている邪神様と、イケメンのバアルの組み合わせである。
しかも金の使い方が尋常ではないのは、リュックからはみ出たPCのパーツでもわかるほどだ。
バアルもかなり高額なPCパーツを紙袋に入れて持ち歩いている。
因みに壊れ物ゆリュックに入らない物はその場で宅配に頼んでいるから、持ち帰らなくてもいいのではないかと邪神様に言うと、直ぐ必要だから持って帰るのじゃとのことだった。
それ故目立って、見るひとが見れば丸わかりらしい。
バアルは判らないまま邪神様の後についていく。
するとパソコンショップとはまた違う雰囲気の場所にたどり着いた。
女性が官能的な姿で呼び込みをしている。
「おにいさん、あの、よかったらこのチラシ受け取ってもらえませんか?」
何やら渡されるので受け釣ると、邪神様が反応した。
「うむ、今日の昼ごはんはここで食べるのじゃ!」
疲れた・・・
バアルは会社に帰ってくるなり、自分様に置いた机に突っ伏した。
あの後メイド喫茶とかで飯を食ったが、『あ~ん』とか言ってくる女性にはうんざりした。
邪神様はご満悦の様だが、女性の方は引いていた。
そこで気が付いたのだが、邪神様の姿はキモイのではないかと言う事だ。
バアルも元は人間界に居たことが有る。
それは古代バビロニアから、古代エジプト、ギリシャローマ時代までではあるが、それと比べてもかなり駄目だと思う。
「邪神様、会社で働く時もその格好をなさるのですか?」
「あれはアキバ専用の格好じゃ、安心せい」
「それであれば、普通に社長らしい格好で秋葉原に行けばよいのでは?」
「バカたれ! アキバに普通の人間が行く方が何倍も恥ずかしいわぃ」
「私は普通に行きましたが・・・」
「うむ。 別に普通の人も交じっておるので問題はない。 じゃが、特殊なお店に入る時はあの格好がいいのじゃ」
特殊な店って何処だろう・・・
「それはそうと邪神様、そろそろ仕事をしてもらえませんか?」
「うむ、ちょっと待つのじゃ」
そう言うと専用のキーボードとマウスをPCに繋げ感覚を確かめる。
「これならとりあえずは良いじゃろ」
「とりあえずなのですね」
「うむ、処理能力が普通のPCに毛が生えたくらいしかないからのぅ」
そう言うとお花クラゲの姿に戻り、プログラムの作成に入った。
早い! 凄く早いなんてもんじゃない!
流石にバアルも悪魔だけあって、決して目が悪いわけではないのに、邪神様の触手の動きがまるで見えない。
確かにこれではキーボードが追いつかないと言うのもわかる。
しかも1つのキーを押すだけでプログラムが1行できる勢いだ。
もはや画面が流れると言うレベルではない。
流石邪神様だ。
3分後・・・
「飽きた」
「邪神様、いくら何でも早すぎです!」
「仕事はするぞい、まったく直ぐに出来るのに・・・ ブツブツ」
邪神様はにょろりと触手を伸ばし、パソコンのUSBに触手を差し込む。
サーバー機のLANにも触手を差し込んでいるようだ。
するとHDDのランプが付きっぱなしになり、冷却ファンが全開で動き始める。
「邪神様、いったい何を・・・」
「キーボードの入力では遅いので、直接HDDドライブに書き込んでるのじゃな」
「・・・ キーボードを買った意味は・・・」
「我のやる気が出るものじゃから必要だったのじゃ!」
本当にそうなのか自信が持てないバアルだった。