Nicotto Town


ヤツフサの妄想


悪魔なので邪神を育てる事にした 3話

~ 邪神、萌え化する ~


「それでは邪神様、スライムは置いといて上げられるなら速やかにレベルアップ致して下さい。」

「何のためにじゃ?」

「勿論、魔界で威厳を見せる為にございます。」

「見せてどうすると言うのじゃ?」

「邪神様の力を見れば魔界の物とて活気づくでしょう。 現在の魔界は少子高齢化が進み、その勢力を落とし続けているのでございます。 邪神様が統治する以前は魔界でも争いが絶えませんでしたが、みな己の力を保持するために人間界から人をさらってきたりしてはその戦力を保持したり、また子袋として子孫を残すなどして多くの子孫を残していたのです。 ですが邪神様が降臨されて以来魔界は平穏となり、いえ平穏になり過ぎて子孫を残すのに力を入れておりません。 元々魔族の発情期も少ない者が多いうえ、無理して多くの子孫を残す為に危険を冒して人間界に行くなどと言う気概が薄れ、人間よりは長寿とは言え年々少子化の一途をたどっているのです。 ここは是非とも邪神様を先頭に人間界を蹂躙し、悪魔や魔物の繁栄を・・・」

「メンドクサイのじゃ。」

言いかけている途中で邪神様は「メンドクサイ」の一言で片づけてしまわれた。

「面倒くさいと言ってる場合ではありません。 魔界の未来がかかっているのですよ、サクッとレベル上げ出来るのならその意向を魔界の民に見せるだけでも民草と言う物は・・・」

「わかったわかった! わかったから段取りをせい。 全くなんじゃ、我が来たから魔界が滅ぶようなことを言いおって。」

ブツブツと文句を言うタコヒラメを何とか説得したバアルであったが、本当にそんなに簡単にレベルが上がるのかは懐疑的であった。

まさか邪神様に限ってとは思うが、民草の前で出来ませんでした等となれば逆効果である。

それに魔界の統治者がレベル4とか知られれば一大事となりかねない、ここで確認してみようと考えた。

「邪神様、披露する前にレベルアップのリハーサルを致しましょう。 少しでよいのでレベルアップしておかないと、民草の前に現在の様なお姿では威厳も何もなくなってしまいかねませんので。」

「わかった、今からサクッとレベルとやらを上げてやるぞい。」

「お願いいたします。」

「うむ」

そう言うと邪神様は体に力を入れるように、タコが青筋を立てているような状態になった。


カッ!


一瞬の閃光が邪神様を包む。

そして次の瞬間そこに現れたのは、タコの上にヒラメを乗せ黒い眼球に金色の光彩で真ん丸のつぶらな瞳のその下に、人間の女性、しかも年頃は14~5くらいかと思われる女の体が生えていた。

日に焼けたような人間の体には襟を深く開けたシャツに紺色のブレザーを羽織りチェックのミニスカートの裾に全く合わないレースが入っている、足にもレースの入ったニーハイソックスを穿いて、手には謎のステッキを持って居た。

「邪神様! いったいどういう事ですか!」

「うむ、可愛いじゃろ?」

「ダメです! これでは逆に民が不安になってしまいます!」

「なんでじゃ! レベルは上がっておるじゃろう?}

バアルには相手の力を見る魔眼を持って居る。

確かにレベルは先程の4よりもかなりアップしたレベル99。

しかしなぜこのような姿に?

太古の邪神様と言えば、頭部に12本の角を持ち、口はイソギンチャクの様な触手の間から白い目の無い蛇の様なものを出し、体は多くの魔物を合わせた複雑怪奇な出で立ちで、全身に蛆などが湧いていた、それは悪魔ですら見るものを恐怖に陥れる姿だったはず。

それが今目の前に居るのは、つぶらな瞳のタコの下に人間のオボコな女性が生えていると言う、なんとも見っとも無いお姿になって居るではないか。

「そ、それにしても、邪神様は女性だったのですか?」

「いいや、我は邪神。 神ゆえに性別などはない。」

「ではどうしてこのようなお姿に・・・」

「うむ、萌え化じゃよ!」

「萌え化ですか?」

「そうじゃ、今人間界では何でも擬人化するのが流行りなのじゃ。 見よ、なかなか可愛いじゃろ? 我は今、絶滅危惧種と言われる黒ギャルが好きでのぅ、それをベースに魔女っ娘風にしてみたのじゃ」

可愛いわけがない。

と言うかアンバランスすぎる。

ブレザーにレースとか気が狂ってるとしか思えない取り合わせだ。

それに黒ギャルってなんだ?

なんだか人間界の黒歴史を見ているような気がする。

いや、これは気がするなんてモノではなく確信に近い!

以前邪神様がいんたーねっとで見せてくれた「ゆるキャラ」なんて目にも掛けないダメっぷりである。

敵を脅かしたり魔界の民草を納得させるどころか、身内が精神的苦痛を受ける位恥ずかしい。

邪神様は何故かノリノリだが。

とりあえずイキナリ民草の前に出さなくてよかった。

こんな邪神様が突然現れたら絶対下克上となり、反乱分子が暴れるだろう。

そうなれば魔界の治安だけでも手が回らなくなり、人間界への進出が遠のいてしまうのだ。


それだけではない。

人間界に進出するのには邪神様がカギとなる。

悪魔は色んな魔法や特殊能力を持ち、単体として破壊や魅了と言った力を持って居るが、それだけではダメなのだ。

既に人間どもは邪神様がおっしゃられていた通り、核兵器で世界を何度でも滅ぼすだけの力を持っている。

人間の居なくなった人間界を支配しても意味がない。

勿論力は必要だが、邪神様が復活すれば大きな信仰となり、それが今の信仰と戦い自分を正義だと思わせる事が出来るのだ。

その支配力は悪魔が束になっても勝つことが難しいだろう。

人間は弱いが、宗教の元に団結する力は強いのだ。

その為の鍵となる邪神様がこのような出で立ちでは非常にまずい。

正義を勘違いさせるためにも雄々しい男性か、地母神の様な慈愛に満ちた女神の様な姿が好ましい。

又は逆に禍々しい醜さをもって、神の為に人間は死すべきと言いながら自分は生き続けると言う矛盾を持たせる事でも信仰は成立するであろう。

その為には、これじゃない感が半端ない今のお姿は、いち早く改善してもらわなくてはならないだろう。

バアルは頭を抱えて暫し悩むのであった。


一方その頃人間界では、大都会岡山で謎の大停電が起こっていた。




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