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【闇の貴公子】 エピソード (影バージョン) 

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夢を見ているような瞳を向けられ、ひどく苛立った。
公園の奥の巨木の下で、陽射しを避けながら本の頁をめくっていた時のことだ。

気まぐれに足を運んだ昼前の公園は、
刺すような陽光と、貴婦人方とそれに付き従う侍女たちの悪意に満ちていた。
口を開けば、他者を貶める噂話か、探りあいのような会話…。
それが空気を染め、陽光とともに降り注ぎ、そこかしこに生まれる緑陰に溜まっていく。

そんな不健康極まりない、公園という名の社交場を、少年は駆けていた。
何の変哲もない、まったくもって普通の少年であることが、逆に目を引いたと言ってもいいだろう。

そんな私の感想は、私自身によって撤回される。

一見、無邪気に見えた少年もまた、その身の内に満たされぬものを宿しているのか、
幼い瞳を濁らせていた。
たが、生まれて十数年も経れば、この程度の濁りは自然と生じる。

キズィローヴァの側に侍る少年たちは、良きにつけ悪しきにつけ、みな野心家だ。
愛し愛されることに、ひどく貪欲だと言ってもいい。
それに比べれば、その少年は、まだ年齢以上に 〝無垢〟 と言っても差し支えはないだろう。

少年は私を見つけ、一瞬、その表情を動かした。そのまま立ち止まり、私を見ている。
もっと正確に言うならば、私が持っている本を見ているように思えた。
その本を通して、記憶の中にいる誰かに思いを馳せている、といったところか。

夢を見ているような瞳だ、と思ったのは、その時だ。

いずれにしてもキズィローヴァなら、この機会を逃さないだろう。
仕方がない…とため息を殺し、私はキズィローヴァの影を演じる。これが私の役どころだった。

「こんにちは。本に興味があるのかな」

声を掛けられるとは思っていなかったのだろう。少年の淡い紫の瞳が揺れる。

「……すみません、不躾に見てしまって」

戸惑いながらも表情を輝かせる少年の瞳から、濁りが消えていた。
そうして少年は語る……。知を得ることの喜びを。この世の深遠を識ることの尊さを。
穏やかな慈愛の笑みを顔に張り付けながら、
私の不愉快さは、少年の話を聞くたびに、加速度を増していく。

「我が館には本がたくさんある。いずれ君を招待しよう」

そう言って私は柔らかく微笑んで見せた。

この少年を見て、キズィローヴァがどう感じるか、それは解らない。
どうせ私には、彼の心の内を伺い知ることなど出来はしないし、したくもない。
それでも、見目のいい、まだ無垢な少年は彼の好みに合うだろう。

館に戻り、私は、昼を過ぎてようやく起き出してきたキズィローヴァという名の主に、
午前中の出来事を報告する。

「やぁキズィ、ようやくお目覚めかい。オモシロい子を見つけたよ」

私の身の内にとぐろを巻く、ささやかな悪意を感じ取ったのであろう。
キズィローヴァは、ニヤリと口の端を上げ、私にキスをする。

この男は、なぜ自分と同じ顔の男に口づける気に、なるのだろうか。
そんなどうでもいいことを私は考えた。





後日、キズィローヴァは一通の招待状を書き上げる。

   ランジャディール。
   きらめく木漏れ日のもと、眩しき緑の公園を駆け回っていたあなたに、
   我が庭園で遊んでいただきたい。
   夜にこそ輝く我が園で。

…… と。



  + + +

闇の貴公子・キズィローヴァ 公式サイト ?
https://jackthenikotto.wixsite.com/kizilova

ロイトで遊ぼう♪ 企画 外部サイト
https://jackthenikotto.wixsite.com/royal-train

  + + +



「和ちゃ~ん、ラデルとの出会いを書いて~。私、変態しか書けないから」 と、エメラルドさんが唐突に言った。
はぃ ?! いったいナンのお話しですかい ( ̄~ ̄lll) そもそもラデルとは何ぞや。
…とは思ったが、まぁいいか、とテキトーに返事をした。
オッケー、と。
それを即日、後悔した。無理無理無理ーーーっ。私にキズィなんて書けねーし。
で、速攻ご辞退申し上げた。申し上げた。申し上げた……が。
いったん引き受けたもんをブン投げるのはオトナげなさ過ぎでしょ、と思う私も存在した。
なので、ご辞退申し上げた数時間後、書かせて頂きます…と撤回を撤回した。

 ヾ(≧▽≦)ノ゙

私、可愛いw うん。(殴

.

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2018/07/07 23:28
ラデルの生みの親のみうみです。
このたびは…ってわあああ!ラデルの無垢さを買ってくれて、影武者さまが暗躍してたぁ!!
すばらしい設定に心が躍ります。ありがとうございますノωノ!
私まったく、藍色さんと同じ反応ですw だからラデルは父の面影を再確認できなかったのかと。

>だが、生まれて十数年も経れば、この程度の濁りは自然と生じる。

この表現がすごく好きです。
多感な時期の少年の描写。すてきです♪
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2018/07/06 16:50
ww
増殖の2人目でしたか?

相変わらず素敵な文章ですね。
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2018/07/03 20:38
すごいすごい
コーデといいお話といい見事な完成度(*゚▽゚ノノ゙☆パチパチ
増殖ってゆーかスタントマン?だったのか( ̄▽ ̄;)!!

しかも4人いるって?Σ(゚∀゚ノ)ノキャー

それだけいれば宇宙をまたにかけて剥製候補者
見つけまくっちゃうよねー(゚▽゚;)
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2018/07/03 19:51
このキズィさんの人の道にもとる性癖を滅却して、りっぱな盗賊になるため、修行の旅に出るとかw 
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2018/07/03 12:38
( ´∀`)
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2018/07/03 09:22
すごい。
エメ様の無茶ぶりにこの完成度の高さ。
私無理無理無理ーってこれから逃げる予定です。(o´艸`)
スタコラサッサ。
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2018/07/03 08:00
わぁ!またキズィさんっちはよからぬことを・・・www
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2018/07/02 23:45
恋人ジェルベーラがキズィにかどわかされる話 もカッコ良さげー
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2018/07/02 23:28
4人目のキズィ公爵発見してきたー(´▽`*)
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2018/07/02 23:27
ミュ☆ミュさんちの 「キズィローヴァの最期、募集中」 ブログに
三人キズィの画像もありますよ ヾ(≧▽≦)ノ゙
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2018/07/02 23:19
うぉっ 増殖してた(゚▽゚;)

ちっと待ってー
まだカズールの結末も読めてないので
また来るだー(;^_^A
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2018/07/02 23:12
せめて後書きは小文字にしてみました (*ノωノ) え ?! 意味ない ?
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2018/07/02 23:03
>…とは思ったが、まぁいいか、とテキトーに返事をした。
>オッケー、と。
イイハナシダッタノニナー

なんというか、舞台裏読んじゃったら…w
いえ、面白い話でした。
そうか、ランジャディールが初邂逅の公爵に父の面影を見出したのに
二度目にはその面影を見つけられなかったのはこういう理由か。
アバター
2018/07/02 23:02
3人目のキズィになって(影武者的に)活動するか。
私、青春ものしか書けないと思ったので
ロザリオくんの恋人ジェルベーラが
キズィにかどわかされる話にするかねーと思ってたんだけど
いっぱいいる意味がないかー。
あぁ でも影武者で あっちこっちでスカウトしててもいいのかーw
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2018/07/02 22:58
キズィ卿、まさかの増殖!!(゜ロ゜ノ)ノ
エンディングがますますの楽しみになってきました~( ̄∇ ̄*)ゞ
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2018/07/02 22:51
変態はロワゾーさんの専売特許だったね^^
アバター
2018/07/02 22:50
すごくない?キズィ3人になったけど
実は幻の四人目もいるんだよー^。^
アバター
2018/07/02 22:47
自分と同じ顔にちゅーしちゃうのかw
あれだね。自分の顔も大好きなんだな。

エメさんが変態しか書けない。とか言ってるのに
ウケてしまった♡(。→ˇ艸←)
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2018/07/02 22:34
ミュミュちゃんはまず設定を作りましょうね〜^^
和ちゃんみたく影武者にします?
それともキズィローヴァの本物として成り代わって書いていただいてもOKです
打ち合わせに伺いますね
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2018/07/02 22:33
和ちゃん あんたはエライ!
しかもまさかの影設定までお素敵よ❤︎
アバター
2018/07/02 22:29
あぁ 素敵だねぇ❤
バル・ミャウのPVをスライドで作ろうと思ってたんだけど
私も書くかなーww



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