……夢を見ていた。幼い頃の、楽しい夢だったような気がする。
だが、目を覚ましたら、覚えていなかった。

「熱が下がっても目を覚まさないから心配した （=・ω・=） ニャ」

声のほうを振り向くと、食堂車両で使っているワゴン、その奥にナイが立っている。
どうしてナイが ?!

眠る前の記憶をたどると、幼いカラート侯爵の顔が頭に浮かぶ…。
ああ、そうだったと、すぐに気づいた。

クリンケンベルグの影響か、カラート侯爵の記憶に巻き込まれ、戻ったと思ったらゾエに圧し掛かられ
そこからほうほうのていで逃げ出して、いつもの通り熱を出し……。

いったい何日、眠っていたんだろう。
ナイが食堂車両を離れるほど、クリンケンベルグの影響がまだ色濃く残っているのだろうか。

「なに言っているのニャ。食堂車は通常営業ニャ」

そうして、しっかり栄養を取るニャ、と言ってナイはワゴンをベッドに寄せ、
自分はベッドサイドに腰を下ろした。

「カズール、どんな夢を見てたのニャ ?! 幸せそうな顔をしていたニャ」
「……覚えてないんだ」

けれど、ナイの言う通り楽しい夢だった気がする、と言うと、ナイは

「ロイトのメンバーはみんな、幸せの沸点が低いニャ」
「……」
「だから、みんな優しいのニャ」
「うん」
「カズールも、いいコだニャ」

よく解らないようなことを言って、ナイは笑う。
ただ、このままでいいのだと、肯定されているようで、私も笑った。

　　+　+　+

目が覚めてすぐに呼び出された。何故か、総帥のところだ。
鰐江捜査官はまだクリンケンベルグの後始末に奔走しているのか、と頭の隅で思う。

総帥は、オマエが寝ている間に… と前置きして、

「カラート侯爵の遺体はアレクシスに引き渡した」

それを聞いて初めて、総帥が約束した情報の報酬が遺体だったのか、と気づいた。
憎んでいるはずの弟の遺体を、あの人は何故、望んだのだろう。
遺体をどうするつもりなのだろう。

「考えても仕方ないことは考えるな。無駄なことだ」

人の思考を読んだかのように、刃物のように鋭利な美貌が言う。
ノアールが色気駄々洩れ… と言っていたが、
その色気も美しさも、毒をたっぷり含んでいるようで、怖ろしいという思いが先に立つ。
これほどまでに人は、内面が顔に現れるものだろうか。

「カズール」

ぼんやりと総帥の顔を見ていると、改めて名を呼ばれた。

「オマエに休暇をやろう」

一瞬、何を言われたのか解らなかった。休暇…… とは、休みのことだろうか ?!
休暇という言葉に、何か別の意味があっただろうか。

「休暇先は、惑星フェーレースだ」

オマエがやるべきことは、全てこれに書いてある、後で読め、と差し出されたのは指令書。
言葉の使い方を間違っていませんか… というのも虚しい流れに、
指令書を受け取る手が怯んだ。

「猫好きの楽園とも呼ばれる観光地だ。しっかりと鋭気を養って来い」

指令書を人に押し付けながら、それを言うんですか…。
情報収集すら内部に秘密にしたい理由があるんですか ?! そう聞こうと思ったが。
私ごとき下っ端に、総帥がマトモな答えを返してくれるとは思えなかった。

総帥はそれで用件は終わりだと言うように、無造作に手の平を振る。

「了解しました」

と、頭を下げ、退室しようとすると、背後から思い出したような総帥の一言が飛んでくる。
声にかすかな喜色が含まれていた。

「ホテルは女で取ってある。女装していけ」

……そうして私は一年ぶりに、表の乗降口からロイヤルトレインを降りた。

END



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カラート侯爵の遺体をアレクシスに引き渡した…
この一行が書けたので、もうカズール･コムの話は終了です。
終わったーーーっ 嬉しいーーーっｗ 踊りま～～～す ヽ(∇⌒ヽ)(ノ⌒∇)ノ ♪

クリンケンベルグでカズールをイジメ過ぎたおかげで、
この回のカズール、冒頭はどんなテンションで始めればいいのだろう…
凹んでいるのか、怒っているのか、まだ引きずっているのか、さてどうしようか
と、実は、ものすごーく悩んでいましたが (*ﾉωﾉ)

ここはやっぱり、いつもの通りで行こう !! と開き直り ヾ(--;)ｫｨ 片づけましたｗ
カズール・コム 0話～6話まで、全7話ｗ
よく書いたなぁ (*´-ω-｀)・・・ とは思いますが読み返す元気はありません (((o≧▽≦)ノ彡



また、20日締めが近づいて来ています (￣～￣lll)
来週は4月ほどじゃないにしても、バタバタしそうな気配が…
一カ月って、どうしてこう早いんだろう。
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