Nicotto Town


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【石物語】 鍵 


ぅるせぇな、オマエは関係ねぇだろう

そんな声が窓の外から響いて来た。
窓から下、向かいのカフェでは、男がひとり、止めに入ったらしい男の腕を振り払っている。
ケンカだ。と思い、急いで、一段飛ばしで階段を駆け下りた。

深い濃紺の海が頭上をおおい、星がまばらに散らされている。

昼の空は、どこまでも行っても底が見えない果てしない世界。
見えない不安もゼロではないが、どこまでも羽ばたいていけそうな錯覚を覚える。

逆に、夜の空は、目に見えない巨大な扉に 封じ込められているかのようだ。
その閉塞感に、守られているような安心感を覚える者もあれば、
己れの内に抱えた不安を、爆発しそうなほどの昂ぶりを、持て余す者もいる。
その結果、封じ込められた夜という世界には、さまざまな感情が魑魅魍魎のようにうごめく。

いいかげんにしろ !

怒声とともに鈍い音が、石造りの街に反響したかと思うと
ざわざわとした複数の気配が伝わってくる。
階段を駆け下りて外に出た時には、すでに街はいつもの顔に戻りかけていた。

通りの右に目を向けると、警官に連れられた酔っ払いらしい千鳥足の背中が小さくなっている。
向かいのカフェでは、野次馬になってケンカを楽しんでいただろうヒトたちが
なにごともなかった顔で既に自分の席に戻りはじめていた。

なーーーんだ

ケンカ見物に間に合わなかった、というのが解り、私はガックリと肩を落とす。
さっきまでのウキウキとした気分の反動か、自分でも驚くほど消沈しているのが、解った。

せっかく出てきたんだから、カフェで甘いチャイでも飲んでいこうか…
そう思い一歩を踏み出した時、靴の先に何かが当たった。

足先を見ると、小さな鍵が、ぼっちで横たわっている。

なんの鍵だろう ?!
その場にしゃがみこみ、私は鍵を眺めた。
鍵穴に差し込むタイプの、何の変哲もない、どこにでもある、誰もがひとつは持っている鍵。
凹凸にわずかな違いがあろうとも、個性のカケラもない量産品だった。

どうしてこんな道端にいるんだろう。

誰かが落としたのか、だとしたら落としたヒトは困っているだろうか。
それとも捨てられたのか。
自ら家出をしてきたというのは、アリだろうか ?!

この鍵は、どんなモノを守ってきたのだろう……。

家族の平穏な暮らしだろうか。
机か、どこかの引き出しに仕舞われた仕事の書類だろうか。
金庫とか宝物庫…とかは無いだろうな。
思い出の品や誰かの大切なたからものを納めた箱だろうか。
それとも、開けてはいけない場所だろうか。

役目を終えたのだろうか。
それとも未練を残しているのだろうか。

私の最後の持ち主は、私を隠し箱に仕舞っていた。
博愛のルビー、リュビ・ド・フラテルニテが購入するまで、そこは私の家でありベッドだった。
隠し箱は今も私が持っているけれど、その鍵は……
そういえば、リュビが持ったままだ。

私の鍵は、今どこにいるのだろう。

ぼんやりと道端にしゃがんだまま、そんなことを考えていると、冷えた風が私の顔を撫でた。
いつのまにか、身体も冷えている。
私はいったい、どのくらいの時間ここにいたのだろう。

嬢ちゃん、何してんだ !? ポーカーやらないか

向かいカフェの常連たちから、そんな声がかかる。
それをしおに立ち上がり、心の中で、小さな鍵に別れを告げた。



~心をもつ宝石たちの軌跡をえがく物語群~
サークル幻想断片 創作企画


  石物語 Les Histoires des Pierres

石物語 第二期 公式サイト
http://cherspierres.blogspot.jp/






どこかのアパルトマンに住み、ニンゲンごっこちゅうのカーネリアン(蛇の紅玉髄)、コルナリーヌ
向かいのカフェにはテラス席があり、わりかし常連です ヾ(≧▽≦)ノ゙ という設定w

コイツ、便利だーーーっ。そして可愛いヤツだw
話に中身がま~~~ったく無くとも、例え雨が降っている情景を書くだけでも、
キッチンでお茶を入れるつもりで茶葉をぶちまけても、
アパートから出て向かいのカフェに行くまでのほんの数歩の間だけでも
なんとなくカタチになる。すげーーーwww

つい話の流れでリュビに鍵を預けたままにしてしまったが ヾ(--;)ォィォィ
ヤツに預けておいて… ホントに良いのだろうか。
.

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2018/05/10 02:31
階段を一段飛ばしで駆け下りるかと思うと
(´・ω・`) ショボーリ して、しゃがみ込み、鍵をしげしげと眺めるw
コイツは、こういうヤツです (((o≧▽≦)ノ彡

コルナリーヌは、些細な日常が話になるのよーーーw
そして頭、使わずに気まぐれで書けるwww
すんごく便利 (●ゝω・)ノ
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2018/04/30 21:22
かわいい。
向かいの通りで起こる、さりげない出来事がお話になるのがすごいな^^
コーデも素敵だね
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2018/04/30 13:21
おされだー
喧嘩をウキウキ見に行くコルナリーヌがめっさ可愛いんだけど。
間に合わなかったとしょんぼりしてるのも(〃▽〃)ポッ
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2018/04/29 20:53
仕事早い (@_@;) ありがとうございます。

コルナリーヌは私もめっちゃ可愛いと思いますわーーーっ。
なんというか、タブーがない !! 便利ですw
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2018/04/29 18:59
>ぅるせぇな、オマエは関係ねぇだろう
この冒頭の一行が秀逸だなぁ。
あー、声ってこんな風に聞こえてくるよねぇ、って。
思わず膝を打ちました。

コルナリーヌさん、本当に可愛いですねぇ。
喧嘩の気配にいそいそと野次馬に出かけちゃうとか、
落ちてる鍵にも物語を見出すとか、
とてもキュートです。
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2018/04/29 16:16
そういえば言うの忘れたけど
昨日、石物語の第二期ブログにこれ載せたからねーっ!
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2018/04/28 21:29
コーデもインパクトあって素敵です(*^^*)ポッ
お話も上手いですね~♬
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2018/04/28 00:42
あ、違う。
まとう系を4枚重ねたら、さすがにウザかったので、
3枚にしたんだった。
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2018/04/28 00:41
そう !! 鍵なんだよ。鍵は、何かを守ったり隠したりするじゃん。
意味深で~題材としては好きなんだよー。新作出たから未所持色を買おうかとw

リュビは鍵ひとつで他のところも開けたりするか ?!
ヾ(≧▽≦)ノ゙ できたらスゴイwww

ケンカ好きというか、物見高いというか、ヤジウマというかwww

そういえば、今までの話もほとんどが柄タイツだったよ。
鍵、よろしくw

実は、まとう系アイテム4枚重ねだ♫
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2018/04/28 00:10
おされー しましまタイツがお気に入りと見た( ´w`)ぐふ だいじにもっとくよw
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2018/04/28 00:06
わぁ!ケンカ好きなんですねw あわよくば参加しちゃおう!って、奔ってく気分、ウキウキがわかるwww
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2018/04/28 00:02
リュビ殿に預けられた鍵、あのお方はその鍵で他の場所の扉も開けてしまいそうですわね(ノ´∀`*)
コルナニールのキャラは和さんそのもののような感じがします♪中身の一本芯は変わらないけどその時その場所その時に関わる人にさりげなく合わせていけるような人って感じ♪
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2018/04/28 00:00
あぁ 鍵だ。
なるほど それだ。
それで書こう。←なにやら思いついたらしいっw

和.comさんのお話は 日常の様でもあり非日常の様でもあり
夢の中のような不思議な魅力があるのだよねぇ。
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2018/04/27 23:56
温泉街の客は、遊ぶぞーまたは休むぞーっていう気合いに満ちている、と思う。

旅の途中… それはお返ししよう。
クリスタル氏の書くキャラのほうが、目的があっても旅の途中に見たりするぞ?

自転車の鍵は~解りやす過ぎるかも (*ノωノ)
コルナリーヌ、私のなかでは未だに服が決まらないんだわー。
書くたび、着ているものが違うwww
ルールみたいなもんは、多少はあるんですけどw

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2018/04/27 23:46
和さんのお話は情景が想像しやすいというか
すぐにお話の中に入りこめてしまうのです♪
そしてこのコーデがまたお洒落なんだよなぁ(≧▽≦)

昨日外出した時に駅の自動改札の前で自転車の鍵落ちてるの拾って駅員さんに渡したんだけど
持ち主さんにかえったかな・・
自転車の鍵だとあんまり想像掻き立てられないけど
コーデみたいな鍵だったらいろいろ想像の翼が広がりそう~
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2018/04/27 23:31
和ちゃんの文章は曖昧な空気感と所在なさが特徴だなぁ。。。
目的なく生ぬるい夜を彷徨う温泉街の観光客(あ かっこよくなかったw 言い換えよう!
いつでも旅の途中            (決まったな ふ



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