夜霧の巷(12)
- カテゴリ:自作小説
- 2018/04/11 13:27:32
由梨花は考える顔をしていたが、複雑な思考に耐えかねた。
「交通事故による当て逃げ事件じゃないの。」
この意見に伯母も頷いた。
「この画像から、車が男を跳ねたということが証明されますか。車は男の前で急停車をしている。もし、当て逃げだったら、スピードを落とさないだろう。警察の発表によれば、溺死体には目立った外傷はなかったと言われている。だから、男の横を車が通過する際、過度に体をよけようとした。男は酔っぱらっているから、上体がふらついてバランスを失って、橋の欄干から自ら転落したということになりはしないか。こういう解釈も成り立つわけなの。」
「慎一郎さん。私、あなたを見直したわ。私には全然、思いつかないことよ。ルポライターを目指すと慎ちゃん言ってるが、あなたの分析力に感心したわ。応援するから頑張って。伯母さんは、どう思います。」
「わたしも、由梨ちゃんと同じ意見よ。」
こう言って、陽子は、にんまりとほほ笑んだ。
二本目のビデオ映像は15度ほど角度を変えて、しかも、望遠がかかっていて拡大した映像であった。だが、カメラが小さなものであったのか、鮮明度はなかった。それでも、この画像には車の車内にいる人物象が写されていた。慎一郎は修正ソフトで画像を指定して拡大し、さらに修正を施した。すると車内の人物がくっきりと映し出された。
「どうだ。由梨花。腕が出ているように見えないか。」
慎一郎が言うと、由梨花は彼の顔に、自分の顔をくっつけて画面を見た。この時点で伯母の陽子は側から離れて、キッチンで洗い物を始めていた。伯母には二人の子供の戯れのように思えたのかもしれない。
「そうね。窓から腕が出ているように見える。」
「見えるって、そう簡単に言われたら、困るじゃないか。」
「どうして?」
「これは男を狙った殺人事件だよ。」
「ええ。殺人事件!」
由梨花は驚愕して、大きな声を出した。
あと、「ようつべ」とは、youtubeの読み方パロだ。(わらい
交通事故の検証、捜査だが、日本の検察の執念たるや、半端ない。
雨でも。現場100回。犯人は、逃げれないよ。