【ロイト小説】 カズール・コム 1 雨
- カテゴリ:自作小説
- 2018/03/21 20:50:02
【ロイト公安】 カズール・コム 00 影
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01 雨
目が覚めると、ベッドにいた。
監視を続けろと言う鰐江捜査官に応え、二度目の報告に行った時にはかなり朦朧としていたので、
うかつなことに倒れたのだろう。
熱が上がりきったのか、身体はふわふわとして安定感に欠けた。
だが、そんなことに気づく前に、打ちつけるような激しい雨の音が耳に飛び込んでくる。
宇宙には雨は降らない…。どこかの駅に停車しているのか。
その雨音に、嫌な記憶を引きずり出されそうで、私は思わず頭を振った。
「……寒気がする」
そうつぶやくと、側にいたらしいテロ対策官・イリヤが、心配そうに私をのぞき込む。
「まだ熱が高い。もう少し眠れ」
「雨がうるさくて眠れない」
そう言って眠ることを拒否すると、イリヤは困ったような顔で笑う。
やがてイリヤは、私の頭をゆっくりと撫で始めた。
……私は、辺境にある惑星ザクリスで生まれた。
この星の主流派は、性別を持たない。
男でもなく女でもなく、そもそもが中性という特殊な種族で、私もそのひとりだ。
男にしては小柄、女にしては柔らかさに欠けるのが特徴といえば特徴で、
見た目だけなら男女どちらにも見せかけることはできるが、中途半端な感は否めない。
成人すれば性別を選び男女どちらかに固定することもできるが、選ばずに生きる者も少なくないため、
いずれ種としては滅びるだろうと言われている。
それ以外は、さほど特筆すべき点はないが、雨の多い湿った土地柄で、
決して豊かとは言えない土壌を持っていた。
……雨は、幼馴染みの悲鳴を引き寄せる。
幼馴染みは余所の星から来た男に惚れ、女の性を選択しようとしていた。
幸せそうな笑顔に、私も嬉しくなって諸手を挙げて賛成した。
だが、男は、幼馴染みを選ばなかった。
最期の記憶は、電話での悲鳴、もう生きていたくないと幼馴染みは言った。
スコールの真っ暗な夜のことだ。私は幼馴染みのもとに走ったが。
途中で事故にあい、気がつくと全てが終わっていた。
雨の音を聞くと、幼馴染みの悲鳴が耳に甦り、不安が渦を巻く。
どれほど不安になったところで、引きとめることなど、もう出来はしないのに。
それでも、雨が降ると、あの全身からほとばしるような悲鳴を引き出し絡みつき、私を侵食する。
幼馴染みがそんなことを望むはずはないのに、
苦しくて、腐っていくようだった。それでまた浸食され、言い知れない不安に喰われ、
どんどん崩れていくような、そんな錯覚に囚われた。
だから私は故郷の星から逃げた。正確に言えば、雨から逃げたと言ってもいいだろう。
熱を発している時に、どしゃぶりの駅に停まるなんてツキがない、と私は思った。
イリヤは私の頭をゆっくりと撫で続けている。
「小さな子どもになった気分だ」
「いいだろう、誰が見ている訳でもないし」
そう言ってイリヤは微笑む。多少気恥ずかしい思いはあったが、嫌ではなかった。
「無理な指令をこなしたのか」
「いや、気になることがあったから、これは自発的だ」
「そうか」
総帥からの指令に若干の関わりを感じたとはいえ……。
興味本位で、のぞき見まがいのことを始めたのがキッカケだとは、さすがに言えなかった。
+ + +
「オマエが見つけたあの小娘だがな、復讐をしようと乗り込んだらしい」
「……」
「こちらの計画を邪魔されると困るからな、オマエが寝ている間に保護者に引き渡した」
「解りました」
その後の経緯を珍しくも親切に教えてくれる鰐江捜査官に、若干の違和を感じながらも、
あの小娘を見つけて監視をしたことが、無駄ではなかったと安堵する。
「それで例の続きだが…」
優しげな笑みのまま鰐江捜査官は言葉を続ける。
この人は、この笑顔ひとつで詐欺師にもジゴロにもなれるだろうと、
「惑星アビロのカラート侯爵は、このトレインに乗っている間に始末をつけることになった」
鰐江捜査官の話を聞きながら、まったく関係のないことを私は思う。
それほどまでに、柔らかな、いい表情だった。
「三時間以内に襲撃場所を選定し、カズールも襲撃に加われ」
……はい ?!
「解っていると思うが、一般の乗客に気づかれるような阿呆な場所を選ぶなよ、いいな」
病み上がりとか、気遣いという言葉は、たぶん、鰐江捜査官の辞書には載っていないのだろう。
呆けている私に、急げ !! という無慈悲な怒声が降ってきた。
.
雨は、カズールの記憶を呼び起こすのですね・・・
この時点で、既に、イリヤは男寄りの両性具有という事になっているのですね
(言葉遣いで判断しましたが、男らしいなぁ・・・)
おっしゃる通り、サイコーです !!!
演者・クリスタル氏、ガン無視 !(o ̄^ ̄)o で突っ走っておりまするwww
湿気でじんと古傷が疼きだすような、
情景と心情、記憶の入り交じる描写が美しいなぁ。
くすんだモノクロの色彩の、トーキー映画のようだ。
雨の冷ややかさに対比するようなイリヤさんの温かさと、
鰐江捜査官の苛烈さが良いなぁ。
というか、僕は和.comさんの描く鰐江さんがツボでしょうがないんだけどw
見た目な優しげな美人で、中身は苛烈って……最高じゃないですか!(ぇ
縛りが多いとキュークツになって書きにくくなる可能性もありますよー。
楽しくなくなったら困るしw
サクラ使ってくれると嬉しいです。
ありがとう。
本当言うと、みんなが書かないと言ってる中、書けないの
で、改装とか撮影会とかを頑張ってる感じです。
公安小説のカズールからダイレクトに第一話に飛ぶんじゃなくて
サイト内の『影』収録特設ページから文末の「1へ」リンクでここへ飛ぶようにした
体調良くないのに仕事に駆り出されるカズール氏に同情しますよ。
後でナーガからこっそりスイーツの差し入れさせようかな。
M体質…ではないと思いたいけど ヾ(≧▽≦)ノ゙
いじり甲斐のあるキャラは (書きやすくて私が) 好きだw
深いといったらイリヤのほうが深いでしょう。
コイツは、幼馴染みに死なれて、雨が嫌いなだけ~~~。
鰐江捜査官 = 鬼 …的イメージが定着しそうで怖いなぁ……。
私のせいかもしれないけど。
『中性のカズール』 と 『両性具有のイリヤ』 の比較については。。。
イリヤの情報が少なくて無理です ( ̄~ ̄lll)
こういうシリアス展開を掛ける人が羨ましい!w
鰐江捜査官……ドSだ~w
ん?
カズールって、えむ体質?(*≧m≦*)ププッ
なんと楽しげな展開w 鰐江話もそろそろ書かねば♪
中性のカズールと両性具有のイリヤの比較もあったら面白かったかもな
ナイス !! フォロー❤ グッジョブ (●ゝω・)ノ
てか、隊長なんだ、鰐江氏。んじゃ今度から隊長にしようかな……
きっと鰐江隊長は元気を出せよって言ってるんだよ( ´ ▽ ` ) グッジョブ
この捜査面白そう〜
優しげな顔と、柔らかな雰囲気を持つ、美形なんですwww
でも中身は、一切の容赦がない鬼という…
ヾ(≧▽≦)ノ゙
名誉棄損を食らわないよう、一応、気を付けてますw
そこに性別はいらないと思うので
中性で嬉しいというか^^♪
雨の記憶はなんとも辛いもので><
いつかカズールさんに雨もそれほど悪くはない
と思わせてくれるようなことがあるといいなぁ
にしても、総統のドエスっぷりwww
カズールは能力といい過去の記憶といい
深みのあるキャラなんですねー
カラート侯爵は公安に始末されるとは
稀代の犯罪者なのかな(。◔‸◔。)?
続きが楽しみ~o(^-^)o ワクワクッ
特に疲れてると、過去の封印したはずの思い出がボロボロと出てくる。
カズールにも悲しい思い出があるんだね。
それにしても鯖江のおにぃ~ww
いたわりの心はどこよ。
それだけ、カズールが優秀と言うことなんだろうけれどね@@
ごめんちゃーい(´・人・`)
こういうの私には書けないので素直にすごいと思う。
任務きつそうだーっ
こあいよ〜
カズールは雨に悲しい思い出があるんだねぇ。
体調崩した時に雨とか嫌になるね。
側にイリヤいてよかったよ(●´ω`●)