おすがり地蔵尊秘話(33)
- カテゴリ:自作小説
- 2018/03/16 17:03:21
優子に子供が出来て、孫の顔を見たいのか、妻の秀子は満面の笑みを浮かべて、こう言うのであった。
「あなた、家に帰って来てください。もう、気ままに小説を書くことだけに専念してもらっていいですから、機嫌を直して下さらない。孫ができるというのに夫婦が別居しているのも、具合が悪いでしょう。」
私は勝手な言い草だと思ったが、この辺りが潮時かもしれない。地蔵尊の御堂が完成するまで、ここにいなければならない理由はない。後は、運善に託せばいいのだろう。運善にしても、地蔵尊の御堂が落慶すれば、このお堂の守り僧侶として、ここで十分に生活していける。こう考えると、何か大団円を迎えた気分になった。地鎮祭が終わって、部屋に戻ってから、運善に私の気持ちを伝えると喜んで賛成してくれた。
運善が言うには、秋には収穫祭と兼ねて、お堂の落慶式を行いたい。地域おこしを継続するためにも、幸福一杯のおすがり地蔵尊祭りを開催したいと考えている。この記念に、おすがり地蔵尊をお祀りする音頭を作りたいので、この歌の歌詞を作詞してくれないかというのであった。
「お祭り音頭の歌詞、歌詞をね。」
私は舌先に言葉を転ばしながら、気持ちよく引き受けてしまった。
『おすがり地蔵尊讃歌』
雨に流され 逆足ちしても
みんなの元気 やさしい心で 立てました
思いはひとつ ああ おすがり地蔵尊
夢さえあれば いつか陽は射す
泥を浴びても 嵐がきても 花が開いて
陽気な暮らし ああ おすがり地蔵尊
以上にて『おすがり地蔵尊秘話』は終わりです。ごま塩ニシン。拝。
音頭なんて、ホント、ルズムで、歌詞の意味は、なくていいいのだ。
踊るポンポコリン!で、いいのだ。