【ロイト小説】 カズール・コム 0 影
- カテゴリ:自作小説
- 2018/03/10 23:13:57
00 影
「どうだった ?!」
総帥が、底意地の悪さを滲ませた鋭利な美貌で、入室した私に問いかける。
気の弱い奴なら一目で逃げ出すだろう……。頭の片隅でそんなことを考えながら言葉を返す。
「総帥の予想通りでした」
私の返答を聞き、では早々に吊るし上げてやろう、と総帥は笑う。
それは悪役の笑顔だ、と言ったら、少なくとも数人は賛同してくれるだろう。
簡潔に報告を済ませ、総帥に帰宅の許可を得ると、私は早々に外へ出た。
空は厚い雲におおわれ、まだ夕刻だというのに、ずいぶんと暗い。
それでも多くの人々が通りを行き交い街に活気があった。
今日の仕事は死体が相手だったからか、そんなにぎやかな空気が余計に救いに思えた。
そんなことを思いつつ歩き出そうと片足を踏み出した時だ。
目の端を、1人の少女が通り過ぎた。
背中まである長い髪を揺らし、小走りに急ぐ少女。
その少女の動きに釣られるように振り向き、私は反射的に後をつけた。
+ + +
私には生まれつき 〝影の能力〟 がある。
他人の影に自分の意識を忍び込ませ、影の持ち主の行動を監視することができる。
だが、この能力、もれなくリスクも付いてくる。
私の場合は、1日1人に使用するごとに、体温1℃上昇というもの。
1人に使えば37℃超、その程度なら一晩眠れば平熱に戻る。
1日で3人にも使えば39度超、こうなると熱にうなされながら寝込むはめになる。
が、諜報活動には有効な能力であることは間違いなく。
今日も今日とて総帥に便利に使われていた。
今日、私は総帥の命令で、ある男の行動を監視し、某事件に関わる死体のもとに辿り着いた。
死体は監視しても意味ないが、代わりに、その記憶は有用な場合が多い。
その記憶が持つ情報を引き出し、総帥に報告するまでが、今日の私の仕事だった。
あの少女の 〝顔〟 は、その死体の記憶の中に出てくる。
死体の主人の娘だろうか。顔や姿が似ているだけでなく瞳の色、髪の色も同じだった。
総帥に報告をした後、帰宅して早々に眠るつもりでいた私は、トレインの食堂車にいた。
正確に言えば、食堂車にいる少女の影の中だ。
愛想良く車両のスタッフと会話を交わし、注文をする少女を見て、私は嘘くさい笑顔だと思った。
表向きを作り笑いで生きている人間というのは、さほど珍しくない。
笑いも、怒り顔でさえ状況に応じて作り、本音を顔に出さない人間というのは存在する。
だが、13~14歳くらいの小娘が、ここまで表情を作るなど……。
あり得ないだろう。しかもトレインにひとりでなんて。
そう思うと、興味が湧いた。
注文を待つ間、少女は席を立ち、隣にある展望車両に向かう。
ひとけのない通路にさしかかった瞬間だった。
その顔から、それまで張り付いていた笑いが消えた。
真顔でなく厳しい顔でも冷たい顔でもなく、無表情といった平静さを崩さない顔とも違う。
あえて言うならば……、空虚、だろうか。
まるで死人のような、中身が虚の人形のような、そんな顔。
まさか…本当に人形なのか。それとも生前の姿のまま動くアンデットか。
そうだと言われたら信じてしまいそうな、その顔を、その表情を、私は影の中から見続けた。
いつしか夢中になり、時間を忘れていた。
少女が食事をし始めたのを見計らい、いったん能力を解除して通路へ出た。
同じトレインに乗っているはずの 〝総帥の懐刀〟 と呼ばれる人物、鰐江捜査官へと報告に向かう。
歩きながら、体温が急上昇しているのを感じた。ついでに頭痛と寒気と。
それでもなんとか足を動かし、鰐江捜査官がいる車両に辿りついた、その後の記憶は。
……いまひとつ定かではなかった。
+ + +
気づくと、鰐江捜査官が執務に使っている部屋のソファーにいた。
頭痛が増している気がする。
ついでに頬やら腹やら、あちこちに痛みを覚えた。
報告の前に気を失い、殴られて意識を取り戻したらしいことは容易に想像がつく。
「気が付いたか」
鰐江捜査官が笑顔で私に話かけてくる。
この人の笑みは、総帥とは違い、優し気な気配をまとっていた。
が、その裏に、総帥以上に容赦のない個性を隠していることを私は知っている。
「報告をしろ」
私の仕事は、総帥からの密命であることも少なくない。
だが、鰐江捜査官だけは例外で、総帥と、鰐江捜査官はすべての情報を共有していた。
私は、今日の仕事から先刻の少女までの一連の話を簡潔に報告した。
鰐江捜査官が必要だと判断すれば、監視を付けるだろう、そう思ってのことだ。
「解った。では引き続き、監視を続けろ」
「私は本日、総帥から帰宅許可を得ていますが……」
「40℃の熱くらいなら人間は大丈夫だ」
鰐江捜査官は、答えにならない答えを返し、微笑んだ。
アンタは鬼か !! と叫びたくなるような言葉に反して、優しく美しい笑みだと私は思った。
諜報官 カズール・コム (影の能力の持ち主)
探知した影に自分の意識を忍び込ませ、影の持ち主の行動を監視することができる。
死体の場合、死体の記憶を探ることも可能。
但し、使用1回につき体温1℃上昇のリスクを伴うため、時々寝込む ヾ(--;)ォィ
……という設定ですw
これ以上の設定は、いませっせと構築中です。
ちなみに性別は、男でも女でもない 〝中性〟 でいこうかと思っております。
.
うーあー……。
久々の美味しい文字が五臓六腑に染み渡る…。
物語の情景が、緊張感が、描かれる人物像が美味しい('~')モグモグ
設定も良いなぁ。
シンプルながら応用範囲の広い能力と、その使用制限のバランスが見事だ。
続きが読めるのが嬉しいなぁ。さて、よもーっと。
能力ゆえの大変な任務、お疲れ様です♪
続きを読みます♬
そこはちょっと自信ないですw
とりあえず、総帥はエライ。鰐江もエライ… らしい。
ということにしておけ…的な。
近日中に先日伝えたストーリーの前振りを物語化するので
本編よろしく!
作品を書いた場合はこちらの掲示板にURLを紹介すると宣伝になるよ
自己紹介ページ
http://www.nicotto.jp/user/circle/articledetail?a_id=2446328&c_id=257717
【作品展示】
http://www.nicotto.jp/user/circle/articledetail?a_id=2446330&c_id=257717
うちらより、あちこちに絡んでるやん!w
もう~仕事が早いんだから~~( ´艸`)ムププ
いきなり絡みまくってるー(〃 ̄∇ ̄)ノ彡☆ウキャキャキャッ
鰐江氏はとりあえず、総帥の懐刀と呼ばれる鰐江捜査官、としました。
ボスの懐刀というのを「鰐江」に直してくれるかな?
その方がわかりやすいからな
テロ対策班のイリヤから連絡が入った為我々黒服組はスカイファンタジーへ急行する
海賊壊滅作戦展開だ
今回は残念ながらカズ―ルは留守番だ
つまらないだろうから被害者にINして殺戮者を探る事件を用意しておくよ♪
ボス、お願いだからムチ打つんじゃなくて勞って差し上げてぇぇ゚(゚´Д`゚)゚エーン
↑あっあっw
早速。。物語に浸りましたぁ~(ˇ◡ˇღ)面白かったですぅ。
続きが。。。楽しみですぅ。
ボスって。。。クリさんですよ゚゚ネ─d(-ω・。)─?
ボスの懐刀ゎ。。エメちゃまかなぁ?^^w
それで総帥とか鰐江とか言ってたのかー( ̄。 ̄)ホーーォ。
さすが和さんです(๑•̀ㅂ•́)و✧
じわじわくるお見舞いシーンをサービスカットで入れちゃおう❤
私には双子の姉妹がいてすれ違うくらいではどっちがどっちかわからないくらい似ている設定です
双子の姉妹 ミルはみん♪さん いきなりやりますね^。^
カズールカッコいいねぇ。寝込むけど♡(。→ˇ艸←)
あちこちでひっぱりだこになりそうだね〜
総帥の迫力も、これ以上に亡いぐらい表現されていますとも(๑•̀ㅂ•́)و✧
40度は意識朦朧レベルだもの。
しかし、あの場の時間で↑これを書き上げられたんですね!
和さんさすが過ぎですって(≧▽≦)
自分は名前と特技考えるので精いっぱいだった(笑)
リスク背負ってしまう設定が面白いです
一晩で元に戻れるみたいだけど 積もってくると体に変化ってあるのかしら!
設定、面白ね。
影にひそませることが出来る。ただし、その代償もしっかり払うんだけれど。
ww
それにしても殴って起こすとは。。ww