『マタギ』(1982)
- カテゴリ:映画
- 2018/02/14 14:58:13
◆概要
一般的にマタギとは、マタギ郷として有名な土地に生まれ、鉄砲を生業とする猟師のことを指すのが一般的である。
物語の舞台は秋田県の阿仁町で撮影されている。
老マタギの関口平蔵は、かつて巨熊の爪痕を、頬から顎にかけて受けたが、人々はそんな大きな熊の話を信なかった。
しかし、そんな「ホラ吹き平蔵」の噂に心を痛めながらも、孫の太郎は祖父を誇らしく思っていた。
秋も深まったある日、あちこちで熊の被害が出始め、ついに人間の被害が出るまでに至った。
すると平蔵は、因縁の巨熊の仕業と悟り、これを求めて山へ入って行く。
◆感想(ネタばれあり)
新式5連発のライフルと比べ、一発づつ込めてしか打てない村田銃に
不利を感じて心配する太郎に、平蔵は3発あれば足りると言う。
太郎「でも外れたら」
平蔵「負けたら俺が死ぬんしゃ」
熊は山神の授かりもので、安易に狩ることを嫌い、命を懸けて仕留めなければならないと説く。
平蔵の相棒であるマタギ犬の白が、老いて不治の病に侵される場面。
「白を一人にしてやれ」
「なしてだ」
「マタギ犬は死ぬとこ人に見せね、立派なマタギ犬は死骸も人に見せねえもんだ」
「白は山さ行きたがってる、見ねでやれ」
よたよた歩いて行く白を見送る太郎は、生きる事の辛さをかみしめる。
小さな犬に期待をかけて、マタギ犬にしようとする太郎。
目を患い鋳型に込める弾丸の鉛をこぼし、老いてゆく自分を知る平蔵。
マタギ犬の競技会に出るもしり込みして役に立たないチビ。
それでも太郎は、期待をかけ平蔵も頼りにする。
そして、激しく吹き付ける吹雪の中二人は、因縁の熊を探して山へ入っていった。
木の枝にロープをかけて吊り下げ、それを中心にして鎌倉を作り中でしのぐ。
時々ロープを揺らして空気穴が塞がるのを防ぐ。
巨大熊との対決、一発当たるが致命傷にはいたらず。
足を滑らせて倒れると、チビが駆け込んできて窮地を救う。
体制を整えた平蔵は、積年の思いを込めてとどめを刺す。
仕留めた熊は雪に埋めて、その傍らにマタギ犬のチビも葬った。
こうして伝説のマタギとしての、平蔵の人生に終止符を打った。
最後に太郎は、マタギ犬として勇敢に戦って死んでいったチビに、
防寒具の耳隠しをそっと添える場面があるが、その胸中はどうなのだろう。
もしかしたら、マタギ犬にするんじゃなかったと思ったのだろうか。
それとも、雄大な自然の中で生と死を見つめ、それを教えてくれた祖父と
マタギ犬の血を引くチビに敬愛の念を抱かずにいられなかったのだろうか。
喜びとか悲しみとか全く違う大自然の何かと共に……