新怪アウトプッター(17)
- カテゴリ:自作小説
- 2018/01/26 13:07:44
福村は初めて東条由梨花の部屋に入った。直感的な感想は奇麗に整っているということであった。細かい計算を得意とする性格からくるのか、棚の置物にしても、壁のカレンダーや装飾品にいたるまで、縦横がキッチリ並び、見て、美しかった。
業者はアンテナを持って、微弱な電波が出ていないか、確認しながら天井、部屋のコンセントを一つひとつ点検していった。由梨花のベッドの枕元にあるコンセントの蓋を開けた時に業者は言った。
「ありました。これです。」と断定した。
由梨花も福村も手に取って、眺めた。
「やっぱり。そうか。」
福村は自分の勘が当たったので、「どうだ。」と言わぬばかりに由梨花の顔を見た。由梨花は黴菌でも触るように指先で盗聴器の基盤を確認しながら、「もう、ショック。この部屋から引っ越す。」と断定的に言った。
「これは、なんですね。この盗聴器は、相当に精密な物ですね。これまで、この仕事をしていて、いろんなタイプの盗聴器を見てきたのですが、これは素人のものではないかもしれませんよ。ひょっとすれば、音を盗聴して、受信者に送信するだけでなく、受信者がこの盗聴機器を使って、相手を操作することもできるかもしれませんよ。初めて見ましたね。」
「こんな手の込んだ盗聴器を、どういう理由で設置したのですかね。」
福村は業者に尋ねた。
「いやー。それは私には、分かりませんよ。ただ、これだけの細工をしようとすれば、プロ的な技術もいりますからね。たぶん、ここに以前に住んでいた住人が設置していた可能性がありますね。」
盗聴器を設置した人間の動機などは、もう、どうでもよかった。由梨花はこの部屋の賃貸を斡旋し、紹介してくれた賃貸住宅の業者に腹が立った。
「異常の原因が、一応除去できたということですね。これからは安心して住めるということですね。」
福村は由梨花の気持ちを落ち着かせようと、業者に確認しただけであった。
「そうですね。安心と言えば、安心ですが、この部屋が、どうして狙われたのかという問題は残りますね。」
「私、これから駅前の不動産屋に行ってくる。」
由梨花は唇を噛みしめた。
家の毒母は、開けっ放しだ。
人類皆兄弟な、奴だ。なのに、比べる根性は凄いとい、矛盾。
あと、男は、露出してる女性より、普通の女性を狙う。ふふ。