Nicotto Town


ごま塩ニシン


脳活日誌1027号

   映画を久しぶりに見た。
 昨日は午前中に義弟の見舞いに病院へ行った。症状は一進一退である。私の顔を見て名前を言ってくれたので記憶は蘇っている。倒れて約半年になるから、ベッド生活が長くなっている。腕や足は細くなり、筋力は減退してきている。積極的にリハビリに取り組んでくれたら、流動食や点滴生活から脱出できるのだが、本人に気力が湧いてこないのだろうか、寝たきりになったままで認知の方も出てきている。

 昼過ぎに病院を出て、行くところもなかったので帰り道にあるステーションシネマへ寄った。目的があって入ったわけではないから、10分後に見ることができるシネマと言えば、『ジャコメッティ』最後の肖像画しかなかったので切符を買った。シニア割引料金である。肖像画が描き上がるまでの一部始終を克明に映画にしている。スイス生まれのジャコメッティがフランスで独特の彫刻とデッサンを繰り返して、作品を仕上げていく労苦を映画にしている。彼を取りまく、画商や娼婦たちの姿が赤裸々にスクリーン一杯に展開されていく。

 横で見ていた奥さんは、これは純文学だ。私にはちょっと退屈だと音を上げる。挙句の果てには、煎餅を取り出して食べ始めた。私は結構、楽しめた。単調な展開と言えばそれまでだが、芸術は鑑賞するだけではない。作家が自分の魂を画像に投げつけられるかが勝負である。こうした苦悩が見事に描かれた映画だった。私の隣に座っていたアベックの男の方は鼾をかいていたようである。彫刻や絵に興味のある方は必見のシネマだろう。お陰で精神が高揚したのか夜中に思いだして寝つきが悪くなったので本日は寝不足でもある。




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