Nicotto Town


今年は感想を書く訓練なのだ


霧の鷹留城と矢背負稲荷【その2.2】

2.2

『其方には既に力を開放した』

「そうですか、何やら不思議な自信のようなものは感じます」

 この力を授けし龍首は、闇龗神の化身、地域の守護神であると云う。

『付いて参るが良い』

 すると洞窟内にあった灯は、周囲の岩壁を押し広げて上方へ広がり、ついに天空へと貫いた。
 まんまるお月様は、既に天空から降りて、西の空へ沈もうとしている。
 龍首は月を追いかけるように上方へ舞い上がると、青白き光を帯びたその胴体もうねる様に続いた。

「どうやって、登ってゆけば良いでしょうか?」

『すでに力がある、我と共にあろうと念ずるのだ』

 私は上方より小首を曲げて言う、龍首を仰いだ。

「やってみます」

 私は淡い桜色の輝きに包まれると、足が地から離れて駆け出していた。
 まるで空を海のように、自由自在に泳ぐ小魚のようにであった。

『其方にこの地の昔を語ろう』

「はい」

 榛名山の上方高くから、黒髪山を見下ろした。
 その北方には、いつの間にか轟音と共に火柱が上がっている。
 古代榛名山麓には、隆盛を極めた毛野氏の一族が蔓延っていた。
 山肌の草原地帯に、大陸から持ち込んだ馬を放ち育てていた。
 火柱から躍り上がった焼け岩が、これらを飲み尽くしている。

『見よ、これが人のい思いあがった故の行く末じゃ』

「なぜ此れをお見せになるのですか?」

『あの辺りに、私の使いが働いておる』

「あ! 火を防ぎ、従うものを導いているように見えます」

『その通りじゃ、悪を良しとせず只生きるに精いっぱいのもの達を助けておる』

「どうしてでしょうか?」

『私を頼みにする者のみが、使いに従えよう』

 人とは、己の力を持て余すと間違った使い方をする。
 その為に毛野氏は、半島まで出兵して戦ったその振る舞いを咎められたとも言えよう。

『天災・人災に限らず、この地を守るために力を使うのじゃ』

「私の母は、正しい力の使い方を学べと言われました。正しいとはどのようでしょうか?」

『簡単な事じゃ、己の為ではなく他の者の為に使え』

「己の為に使ったらどうなりましょう?」

『己自身が暗闇の淵に沈んでゆくであろう』

「そうですか……」

『其方の心は読める、相手の為ならば良い』

「私の為なら?」

『使いに選ばれたとて、誰もが正しくは使えない、学ぶのじゃ、暗闇の淵に沈まんようにな』

「はい」

 眼科には、駆け巡るように様々な様子が映し出され、一度に観られぬほどであった。
 とうに月は沈み、東の空が暁を覚える頃になると、母の待つ穴倉に舞い戻った。


つづく

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2017/12/17 11:26
奈良市の北方の佐保山地区には、昔、遊園地があって、この辺りを
黒髪山と称しているのですが、地名の由来については調べたことありません。
従って、吉春氏の解釈で物語を書き進めてください。余計なことを言って、
迷わせてしまったと反省しています。地名由来伝説を独自の解釈で進めて
ください。当方も作品を書き進めます。お互いに完成させましょう。



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