霧の鷹留城と矢背負稲荷【その1.2】
- カテゴリ:自作小説
- 2017/11/28 10:51:52
彼の住む集落は、大久保の里から沢が榛名山に向けて伸びる谷津にあった。
谷津から東へ向けて斜面を登ると中腹に社があり、脇を通り抜けて更に登ると鷹留城の大手門へ通じている。谷津を南に降り出口の西側の高台には、砦が築かれてその本廓には鷹留城守将の一人石井讃岐守が館を構えていた。これは鷹留城の守りを固めると同時に、信州街道の道筋を守る役目も果たしていた。
彼の名は小三郎吉春と言い、祖父母と共にこの谷津の地に住んでいる。
「ほんに、吉春はせっこが良いで助かるわ、これで嫁でも貰えれば言う事なしじゃ」
「じいちゃん、俺そんなものまだ早えと思うんだけど」
「馬鹿言え吉春、わしがばあさん貰った時はお前より若かったぞ」
「じいちゃんは、そうかも知れんけどさ……」
「おめえ、あれだんべ、榛名神社に来とった巫女さが気になるんじゃねえか」
「そんなんじゃねえよ」
囲炉裏にくべた蒔きがぱちりとはじけ、揺れる灯に照らされた吉春の頬は赤く染まって見えた。私はその様子を物陰からそれを覗いていたが、彼の頬を赤く染めた巫女さの事が気がかりで仕方がなくなってしまった。
月が巡り桜の季節がやって来ると、この村の神社の祭りのために舞台が築かれていた。明日の祭りを前にして、榛名神社からやって来た巫女様の舞う演習が行われている。吉春は、白衣に緋袴を履き、柄付きの手鈴を掲げて舞う姿に見とれている。
舞が終わると吉春は、ひなた山へ入り山菜を探し始めた。舞う巫女様の姿に気を取られて、すっかり陽は傾き始めたので少し気がせいているようだ。私はそんな彼を遠巻きにして、歩く姿に気を取られて追いかけた。
(きゃうぉーーーん)
私は自身の周囲にあった危険に気づかず、右足に激痛を覚え思わず泣き叫んでしまいました。
「うん? どうした、あっちの方だな」
腰ほどの藪をかき分けて彼がやって来る。
「なんだ! もしかしてあん時のおめーじゃねえのか」
罠を外されて傷口の塵が払われると、切なく小さなうめき声をあげてしまう。
そして小刻みに震える私の足を、懐から取り出した布で優しく包んでくれた。震えたのは、痛いからじゃあない。初めて会った時のような、あの眼で見つめられて胸に抱かれている。なぜだろう、私の体の芯から込み上げて来る、この暖かな拍動が内側から震わせてきている。
「しょうがないなあ、この先のお稲荷さんまで連れて行ってあげるよ」
そう言うと彼は、私を抱っこして連れて来てくれた。この社まで。
「いいか、ここでじっとしてるんだぞ、時期に良くなる」
そして、ついさっきお備えして行った感じの干物を私の所へ持ってくれた。私はこの時彼に、普通ではあり得ない感情を持ってしまっていた事を確信した。
万物の霊長のみにしか持ちえない感情を……
>狐さん。すごく苦しいだろうな(>_<)
ここですね難しい所は、何回も書き直してよいお話ができればと思っています。
良い出来栄えになったら何か地方紙にでも投稿してみようかなと思います。
ありがとうございました。
すごく綺麗な文章ですね!
話の内容も好きです(*´-`*)
前回のあらすじ部分を読み、
今後の展開にとても切なく感じています
狐さん。すごく苦しいだろうな(>_<)
続き、楽しみにしてます(❁´ ︶ `❁)*✲゚*
そうなんです!古めの機械でとっていたら
気付けば容量オーバーで録画できてなかったのです
一応家が自営で電気屋をしてるので
機器は無駄に贅沢です(^^;;
機種はPanasonicのVIERAです
機械が別々になってしまったので
ディスク作業が少々めんどくさくなってしまいました(^^;;