タウン
街に出かける
日記
広場
みんなの投稿
コーデ
広場
友達探し
無料ショップ
無料アイテム
プレミアムショップ
有料アイテム
フリマ広場
みんなでトレード
サークル
広場
仲間と集まる
ニコッと
合成
デコを作ろう
ニコッとプラス
さらに楽しむ
ヘルプ
ログアウト
ニコッとタウンにログインして、きせかえ仮想生活を楽しもう♪
無料新規登録
ログイン
しーちゃん
友だち・お気に入り
ホーム
日記
アルバム
ニコみせ
旧友との過去話3(伝言板)
カテゴリ:
伝言板
2017/11/26 00:02:43
ここは私と梅さん専用の語り場part3です
他の人は閲覧不可、書き込み不可。
発覚した場合には・・・・どうなるか分かりませんよ?
拷問具がそこそこ好きな私が地の果てまで追いかけるかもしれませんねぇ
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/27 22:01
リシア(琥珀)
「……む、エルからの通信か」
彼からの通信は計画の最終段階に入った事を示す。
精霊曰く、そのまま寝てしまっているようなので敢えて返事はしないでおこう。
内容を聞いて、自分と同じ瞳の色の宝石は何だろうと思案したが、金色もしくは黄色は種類が多すぎて絞り込めなかった。
「残念だな、エルからの初めての贈り物を受け取らずに死ぬなんて」
これで後は、明日の日が暮れた後、夜の静けさに生じて計画を終わらせるだけ。
心の底から残念に思いながら、計画の段取りを確認して。
~そして、日が暮れて夜の帳が訪れた~
「さあ……派手に逝こうか、紅」
薄い白の寝間着をきちんと整えて、片手には刀を携える。
空いている方の手を前へ突き出して謳う。
胸元を飾るルビーが、これまでにないほど強い輝きを放っていて
「世界を焼き尽くす君に願う。その灼熱の力を以て、我が生まれしこの地を余す事無く蹂躙し、我が肉親のみを残して全てを灰塵とせよ。逃げれぬように檻を編め、その力を以て枷へと繋ぎ、ゆるりと炙りて地獄を見せよ。」
自分を中心として、陽炎が揺めくほど高温の炎が吹き上がって屋敷全体へと広がっていく。
屋敷の塀からも火柱が上がり、まるで鳥籠のような形をした檻を形成して外部との干渉を灼熱で妨げる。
同時に自分を縛っていた枷も鉄格子は跡形も無く溶け落ち、自身も周りに炎を揺らめかせながら地下を出た。
奴の部屋を出て廊下に出ると、そこは阿鼻叫喚の地獄絵図。
生きながら死ぬまで身を焼かれる苦しみに悶えている組員と、炎に巻かれて音を立てながら燃える生家。
「嗚呼!これこそ私が長年すがり続けて来た計画の実現だ……漸く、漸く叶った!幾年とこの一時を待って耐え続けて来た事か!!」
思わず笑みが溢れた、残酷で心の底から愉快そうな笑みが。
ゆらりと止めていた足を、身体を動かして奴の寝室を目指す。
長年抱き続けた悲願の成就は、もう目の前だった。
違反申告
梅
2018/10/27 21:26
Erbaccia
真夜中の閑静な工場にて、死屍累々。
此処は先程までそうではなかったが…つい今し方、こうなった。
酷く目が冴える。とても心地が良い。
久々の外と血生臭さ、踏み付ける肉塊の感触、そして終わった後の静けさに気が狂ってしまいそうなほど酔いしれていた。
「もう…いいだろ、やめろ」
そのひと言が響き、惚けていた表情は次第に落ち着きを取り戻し、そして何時もの掴みようのない顔付きへと戻る。
先程まで息ひとつとして乱れてはいなかったというのに、酷く、肩を上下に揺らして荒い呼吸を繰り返す。
この状態で連絡を飛ばすのだから、嫌な予感ばかりが頭を過ってならない。
内側の声が直ぐ近くで聞こえる気がして、石に声をかけると同時に目の前が白く濁って景色が薄らいでいく。
『予定通り片付けたぜ、お嬢。2日後………
_おれ、持って行く石は"綺麗な瞳の君"と同じ色の物にした。早く能力が見たい、楽しみだ。』
閑静だった工場に狂気染みた笑い声が木霊して、其処で意識が途切れた。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/27 20:39
リシア(琥珀)
「……さようなら、エル。最後まで本当にありがとう」
彼がこの空間から完全に出て行ったことを感じると、もうこの場にいない彼に向かって言葉を投げ掛ける。
視界が滲み、涙が頬を伝う。
「エル……最低な人間でごめん。エルが私を想って交わした約束を踏みにじろうとしていて、エルが傷つくと分かっている上で更に嘘を重ねた。……でも、他に方法が無いの。私の計画は鳴神組の完全なる壊滅及び計画の阻止。だから……“鳴神家現当主である組長の血を引く唯一の実子である私も死ななければ、完全に鳴神組を消す事にはならない”。」
懺悔と言い訳のような言葉が入り交じって、掠れた声でそれを紡ぐ。
しかし、最後の発言だけはしっかりとした口調で話して。
自身の手を見つめて、キツく握り締めて呟いた。
「この計画は、私の死をもって初めて完遂するのだから」
違反申告
梅
2018/10/27 20:14
Erbaccia
「…あァ、俺が連絡入れるまでヘマすンじゃねェぞ」
地下を抜け出す為の階段に一歩足を掛けながら顔だけ振り返って彼女の方向を見遣る。
此処に居座って7年以上も経つが、其れももうすぐ終わるのだと思うと名残惜しさもあり、そして彼女の父親にも_否、きっと此れは抱くべき感情では無いのだろう。
別れの挨拶ではなく、また逢う日までの杞憂を口にして、地上への階段を早々と駆け上っていった。
彼女を、友人を、此処から連れ出す為に。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/27 20:01
リシア(琥珀)
「苦情は受け付けないと言っただろう……嗚呼、その手筈で問題ない。それではまた、計画決行の時に会おう」
いつも通りの悪人面な笑顔と揶揄。
昔から変わらない、互いのやり取り。
当たり前だったことが、この瞬間は何よりも得難く尊いものに感じられた。
違反申告
梅
2018/10/27 19:12
Erbaccia
「…ははッ、ヘッタクソォ」
苦情を受け付けないと言った彼女に揶揄を被せ、口角を上げるとお望みの悪人面を披露する。
お互い下手糞同士、つり合って丁度いいくらいだろう。
大人しくなった内側に安堵の息を零しながら鉄格子から離れると、頃合いを見て下記を述べて。
「さて、と…"俺が関係者を潰し終えてお嬢に連絡飛ばしたら2日後、石持ってこの屋敷に集合"だな。他に要件ないなら俺は早速取り掛からせて貰うぜ、お嬢。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/27 18:58
リシア(琥珀)
「五月蝿い、悪人面。……こうか?」
初めての通信でそれか、と脳内に響いた内容に思わず呟いてしまった後に上記を述べて。
頭を打ち付けたときは突然過ぎて肩が跳ねてしまったが、見たところ振り返った彼の顔に怒りの色は見られない。
悪人面と言った後で彼に問いながら久しぶりに笑う。
「うまく笑えていなくても苦情は受け付けないからな?」
違反申告
梅
2018/10/27 18:44
Erbaccia
「……精神力かァ、ま、何とかなるだろ」
頭の中に聞き覚えのある声音が響き、そして少し肩を落とす。どうせならお嬢の声を聞かせろよ…と。
そしてひと通り彼女の説明を聞き終えると妙な危機感に陥る。それは精神力が使用の度に削られていくという件で。
回数を弁えなければならないその面倒に他ならない制約付きの機能に気後れしながらも試してみないことには何も始まらず、此方も「おい、お嬢に通信飛ばせ」と一言掛けつつ下記を頭に浮かべて。
案の定、嬉しそうに再び騒ぎ出した己の内側に思考回路を持っていかれそうになれば、その場で背後にある鉄格子に向かってある程度の勢いを付けて後頭部を打つける。
彼女に通信を飛ばした手前、この行為と併せて怒っているよう受け取られたかもしれない、と恐る恐る背後を振り返って。
『能面女、ちゃんと顔で笑え』
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/27 18:26
リシア(琥珀)
「通信を飛ばすというより、宿った精霊を相手に飛ばすような感じだな。精霊を飛ばす時は石に声をかけて伝えたいことを頭の中で言う。そうすれば精霊が私の元へ飛んできて、内容を伝えて私の返事をエルへ持って行く仕組みだ。」
試しにと言わんばかりに、やってみせる。
紅に呼び掛けて、『聞こえる?』と頭の中で呟くと、それを隣にいる彼の元へ運ぶ。
きっと、頭の中に紅の声が響いているだろう。
「そして、注意事項が二つある。一つ目は互いの距離が離れすぎていると使えないこと。二つ目は、通信や返事をする際に自身の精神力を少し消費することだ。連続で使うと精神的疲労が溜まるから注意してほしい。」
違反申告
梅
2018/10/27 17:52
Erbaccia
「……それも、そうだな」
己が警戒しているのと同様に彼女も当然この計画を狂わす因子を危惧している。
己の早計さをまさか衝動的で行き当たりばったりだった彼女に諭されてしまうとは、能力を取り戻すだけでなく成長した成果なのか、それ程に遂げたい使命なのかは定かではないが、何処かむず痒さを感じた。
生返事のような相槌を打ち、続く彼女の言葉に耳を傾ける。
事情を知らぬ者が客観的に見れば彼女の積もり積もった怒りの爆発とも取れる。
母親は彼女が組を壊滅させる様子を見て、如何に思うだろうか_
考えようが無意味な事に己の内側が妙に騒ぎ出し、巡らせていた思考は途中で止める。
彼女に背を向けて鉄格子に凭れ掛かりながら呑気な例えを口にしつつ了承しては、肝心な通信手段の方法を尋ねて。
「お袋さんに対する初めての反抗期と親孝行か……悪くねェな、いいぜ序でに受けてやるよ。あァそうだ…連絡手段は此れから石を介してだったか?俺から通信飛ばす時はどうしたらいいか教えてくれ。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/27 17:15
リシア(琥珀)
「確かに、早く持ってきて欲しいのは山々だが……もしも計画実行までに入手できた場合、持ってくるのは私が組を壊滅させる日にして欲しい。私はエルが鳴神組関係者を潰し終えた連絡を貰った二日後の夜に動き出そうと考えている。その際に渡して欲しい……万が一、奴に気取られでもしたら全てが水の泡だ、急ぎでもない私情は後回しにした方が良いだろう。」
このせいで計画が狂ってしまえば、もう組を壊滅させる機会は無くなる可能性が高い。
それに、このお願いは最後の我が儘で嘘なのだ。
彼にこれからも自分は一緒にいると思わせ、もう一つの計画を知られないようにするためについた、優しくも残酷な嘘。
「それと、大事なことを伝えそびれていたんだが……決行時は私に同行してもらいたい。エルには鳴神組壊滅の見届け人と……母さんの保護を頼みたいんだ。今回の計画の対象に母さんは含まれてない、組壊滅後は母さんを実家に戻そうと考えている。それが、私から母さんに対するせめてもの恩返しだ」
違反申告
梅
2018/10/27 16:44
Erbaccia
「なら早めに1つでも持って来た方がいいか……何なら明日にでも石1つくらいなら持って来てやれるが、どうする?」
彼女の言い分は理解できる。だが旅に出たいというのは初耳だ。
確かに幼少より世界を己の口頭でのみしか知らなかった彼女がその意図に辿り着くのは必然的であったとも言えよう。
計画の僅かなズレすら神経質に気にしてしまう己は乾いた唇をなぞり、少しの間考えに耽る。
此方にも彼女に頼まれた最初の依頼、鳴神組と関わりのある組織を潰す件が未だ完了していないのだから直ぐには難しい。
だが友人の頼み事なのだから1分1秒でも早く届けてやるのが道理といったところだろう。
そして間も無く能力を詰め込んだ石を差し出されては取るべき行動は受け取る他なく、首元に其れを付け戻しながらぽつりと上記を提案して。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/27 13:33
リシア(琥珀)
「嗚呼、言い方に語弊があったな……勿論、約束通り。エルに連れていって貰うが……ずっとエルの元で世話になるのは流石にと思っていてな。一段落したら世間を見る為に旅をするのも悪くないと思っているんだ。それに、私の能力は長期間所持した宝石でないと使えないからな。早めに持っておく事に越したことはないし、かなり協力的な宝石なら最短数日で能力を使えるようになるんだが、非協力的だと最短半年から年単位でかかる恐れがあるんだ。」
あの言い回しでは、まるで自分が彼の元を離れてしまうように聞こえても無理はない。
……恐らく、心の中では彼と離れたくない思いが強くあるのだろう。
私のもう一つの計画を、考えを阻止して欲しいという願望が先程の発言に現れたのだろうか。
「あ、揃えるのは一つで良いからな。沢山用意されてもその代金を踏み倒す可能性がある。私にピッタリな石を選んできてくれることを期待しているよ」
少し冗談っぽく笑いながら上記を告げる。
ダイヤモンドへ力を込め終わった為、彼にネックレスを差し出して。
違反申告
梅
2018/10/27 11:31
Erbaccia
「あんたは俺が連れて行って良いンだろ?」
彼女の掌に込められた力から確かに彼女の能力が復活したことを悟る。
己の能力と言えば攻撃性のものというよりかは、テクニック性のある防護に長けたものだ。彼女が力を与えている能力が己に必要かと問われれば悩ましい。
だが、つい前にその力を発揮した石を思えば持っていて損はない物だとわかる。元より彼女からの貰い物。
蔑ろにする理由は別段ない訳で。
「まァどうしても必要ってならコッチで揃えとくが…」
今度は此方がポカン…というよりかは少し怪訝そうに、彼女が約束と迄は言い切れないが、この使命を遂げた後に1人何処かへ行ってしまうような、己の提案を忘れてしまったかのような発言に僅かながら…寂寥感漂う表情を浮かべては、彼女の依頼を呑んで。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/27 10:26
リシア(琥珀)
「少し無茶と言えば無茶だからな、聞くだけでも構わない」
手渡されたダイヤモンドを両手で包み込みながらそう答えつつ、力を注ぎこむ。
勿論、彼をちゃんと守った事への賞賛とお礼も添えて。
注ぎ込みながらお願いについて口にする。
「宝石を一つ、ルース(裸石)の状態で用意して欲しい。ルビー以外ならどんな宝石でも質でも構わない。此処が壊滅した後は私は居場所が無いからな、何処かへ安寧の地を探しに行こうというのに紅だけでは正直心許無い。勿論購入時に発生した代金は用意出来次第払うと約束する。」
これは最後の我が儘。
もしも本当に用意してくれるならば、その宝石を自分がこの目で見る事は無い。
しかし、万が一私のもう一つの計画に勘付かれてしまわない為の保険としてこの話は必要だ。
違反申告
梅
2018/10/27 08:04
Erbaccia
「あァ、ちょっと待てよ…」
此処に潜り込む事が訳ない潜入である事に間違いは無いが、此れでもリスクは避けたい方の人間である。
彼女の提案はお互いの使命を遂げる為に十分理にかなっている。
留め金に手を伸ばし、首から下げている物を外すと其れを彼女に手渡して。
其れから調子を取り戻したようにグッと口角を上げていつもの表情を浮かべると、彼女の言わんとしている事に耳を傾けて。
「また頼み事か?仕方ねェな、聞くだけ聴いてやるよ。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/21 22:23
リシア(琥珀)
「嗚呼、頼み事が終わり次第連絡を入れてくれ。連絡は今後、奴に怪しまれない様に宝石を介して行う。ダイヤモンドに力を注ぎ込むから近くに来てくれ」
鉄格子に頭をすり付けていたが、どうしたのだろうかと心配しつつ、上記を述べて。
ダイヤモンドに残っている力を見る限り、もう能力を発動する力すら残っていないようだった。
「後、最後の頼み事があるのだが、引き受けてくれるか?」
そう、これが本当に彼に対する最後の頼み事だ。
最後ぐらいちょっと我が儘を言うぐらい、許されるだろうか
違反申告
梅
2018/10/21 20:32
Erbaccia
「…そう、か、わかった。」
何を緊張しているのだろうか。
ドクドクと跳ね上がった脈拍が鼓膜までも震わせて煩く聞こえてしまう。
彼女の口が開くまでの時間がずっと長いように思えて、酷く苦痛だった。
ただその答えが返ってきたとき、全身の力が抜けたような気がして、思わず鉄格子に額を軽く擦り付けてしまう。
冷え切った鉄の棒が、今だけは妙に心地良い。
「それで…後は特に要件無しか?残った頼み事はコッチで勝手におっ始めていいンだろ?」
頭に浮かんだ安堵という文字を搔き消しながらも顔を上げると、此方を不思議そうな目で見てくる彼女に向け上記を続けて。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/21 18:35
リシア(琥珀)
「それだけで良いのか?何て無欲な……別に悪くても気にしない。悪いか良いかではなく、私はその人物がどんな人間かで好きか嫌いかを決めるからな。何より、私自身も悪い奴だ。」
何故こんなことを聞くのかは分からなかったが、真剣そうな彼の顔を見て、真面目に答えた。
私は多くの人を傷つけ殺した、今更悪人を忌み嫌う理由もない。
「もう一つの方については……別に野望のために他人が私を利用しようとも構わないよ。でも、私の自己と自由を縛られるなら話は別だ。それさえなければ別に自己中心的な者に利用されようと構わないさ」
私は将来夢見ているモノも、歩みたいと思うべき道も何も持たない存在だ。
寧ろ使ってくれるなら、存在意義があるということ。
何処か様子のおかしい彼を見て、少し不思議そうになりながらも上記を答えて。
違反申告
梅
2018/10/21 12:50
Erbaccia
「こっちはもう仕掛ける準備は万端だぜ」
念入りに、念密に仕組んだこの計画。そう簡単に暴かれては堪らない。あとは予定通り、潰して、お終い。
クッと上げた口角で悪戯っぽさを超えた悪人面を浮かべて笑っていたのだが、続いた彼女の言葉に表情がやや固まり、バツ悪そうに、何処か気恥ずかしげに下記を続ける。
まさかこの言葉が彼女の罪悪感を少しは払拭するものだとは思ってもみなかった。
「いらねェよ、俺が好きでやってンだから……でも、よ。一つだけ、聞かせてほしい。」
やや動転した気を落ち着かせる為に一度肺に詰まった蟠りを換気させ、新しい、ただ少し篭ったような此処の空気を入れ込む。
打って変わって真面目な話、真剣な表情を浮かべて彼女に尋ねて。
「お嬢は、悪い奴は嫌いか?親父さんみたいに自分を利用して、己の野望を叶えようとする自己中心的な奴は…お嬢にとって相容れない存在なのか?」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/20 19:08
リシア(琥珀)
「嗚呼、鳴神琥珀は完全に復活した。これもエルのお蔭だ……能力もメモ取り戻した今、私の状態はほぼ万全と言っていい。さて、其方の首尾はどうだ?」
指を鳴らして、カモフラージュする為に残す箇所以外、全身の包帯を着物(寝間着)に火をつけぬまま燃やして塵としながら、不敵に笑って彼へ問いかける。
彼の姿を見ると心から安心する、紅は自分が成長したと言っていたが、自分だけではその成長は成し得なかっただろう。
彼が居たからこそ、今ここに自分は立っているのだ。
「にしても、思い返すとエルには迷惑しかかけていないな。これでお返しに何もしないと言うのもだ、この一件が無事に片付いた暁には、何か私からも一つご褒美の名目で何かしよう。と言っても、組を潰すのだから、若頭ではなくただの小娘に成り下がってしまう上に個人的な貯金もないから、そんなに大きなことはしてやれないがな」
ただ彼の喜ぶ顔が見たくて、罪悪感を隠して二つ目の嘘を重ねた。
違反申告
梅
2018/10/20 18:44
Erbaccia
「…俺は、何もしてねェよ。」
流石に自身の能力といったところか、自分の目を誰が隠し持つか把握できた時点で彼女の回帰が近いことを悟った。
はじめ背後に佇む石ころに彼女の状態と復帰の条件を聞いた時はどうなる事やらと解決の手立てが浮かばず時間ばかりが過ぎていたが、どうやら杞憂だったようだ。
彼女自身の問題を自分で解決する、そんな力を彼女は持ち合わせている。
己からしてみれば羨ましい程のその力が、彼女を元の姿に戻したのである。
石は己のお陰だと言うが、此方といえば少しも同意できてはいない。
だが思った以上に嬉々として現状を受け入れている己がいた。そう、心の底からだ。
「おう、お嬢…戻ったかよ。」
束の間の眩い光と幻想的な焔が彼女を抱き、そして元の闇へと戻る一連の光景を目の当たりにし、胸が踊る。
鉄格子越しの眼前に立つ彼女の久し振りに見た眼は灯の少ないこの闇の中でも美しく見えた。
そう…もう少し、あと少しで彼女を_
その一色が己の頭を占めていた。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/20 13:48
リシア(琥珀)
「能力は恐らく使える。目の方は……多分紅が預かってくれているんだろう。私の小さな我が儘とトラウマのせいで、多くの苦労をかけてしまったようだ。紅が私を認めてくれればきっと返してくれるだろうさ」
その言葉を聞いた紅が背後で泣きそうな顔をしていることなど知る由もなく。
琥珀はペンダントを首にかけ、深呼吸をして心を落ち着かせる。
そして、目を閉じて能力発動のための口上を謳う。
「世界を包み照らす君に願う。我が身の穢れを浄化させ、我が身を守る柔らかな羽衣と成れ」
暗い牢の中に、温かな炎が現れて琥珀を包み込む。
炎に包まれた箇所の怪我は癒やされ、凍てついた手足は瞬く間に血色を取り戻していく。
胸元のルビーは熱を持ち、強く光輝いて部屋を照らして。
紅は琥珀へ歩み寄り、彼女の肩に手を置いて、彼女はそれに応えるように手を重ねる。
『……主殿は、本当に成長なされた。もう心配は要らないようですね……勝手に眼を奪ってしまい申し訳ありませんでした。此方はお返し致しましょう、これからは貴女様の思うがままに人生を謳歌されます様に』
「私こそすまないな、ずっと君は私を守ってくれていたというのに……これからはもう迷わないよ。」
『嗚呼、本当に嬉しい限りです。……エルバッチャ殿、全ては貴方のお蔭と言っても良い。これからも私に代わって主殿をお願い致します。』
初めて両者はマトモに会話を行ったが、それは数分にも満たぬ僅かな時間。
紅が最後の言葉を遺して消えるのと同時に、琥珀は眼を開いた。
金色の眼が、目の前にいる大切な友人を捉える。
「エル」
久しぶりに見た彼の名を呼んで、確かな足取りで彼の目の前に行く。
違反申告
梅
2018/10/20 12:42
Erbaccia
「殻、ねェ…その様子じゃ、能力使える段階まで元通りって感じか。」
彼女の発言には少し腑に落ちない、いや、単純に言葉足らずで理解出来ない事が多くあった。
状況的には前回ここに来た時と何も変わってはいない。
だが、彼女の中では確かな変化があった。
今はそう解釈しておくことにしよう。
「目は…まだ見えてねェみたいだな。」
手探りで何度か刀を掴み損ねる彼女の瞳の回復は未だ成ってはいない。
その様子では背後にいる物の存在の声も届いてはいないのだろう。
上記を彼女に、そして背後の奴に向け、ひと言ぽつり呟いて
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/20 09:44
リシア(琥珀)
「ありがとう。手間をかけてしまったな、エル。随分とタイミングが良いな……先程漸く、長年自身を覆い続けてきた殻を砕いたところだ。」
取り戻した石の加護のお蔭だろう、傷だらけの身体がすんなりと動き、痛みはあれど立ち上がり、まだ見えぬ目で愛刀を探しだし、手に取って重みを感じた。
「さて、この身体では何かと不便だ。……久しぶりに能力を使うとするか。」
今の自分なら問題なく使用できる、と思いながらも若干の不安を胸に抱えて。
この時、琥珀には見えていないが、彼女の背後で静かに紅が現れ、心配そうに琥珀を見つめていた。(エルにしか見えない)
違反申告
梅
2018/10/20 08:53
Erbaccia
踏み入った先、予想通り彼女の父親の部屋には主の姿が見受けられなかった。
嗅ぎ慣れた僅かに残る彼好みの刻みの香りが、鼻先を掠めて悪戯心を揺さぶる。
だがその悪戯心というのは純粋で健気な子供のようなものとは訳が違う。
これから彼を、彼の野望を、人生を、己が直接手を下すのでは無く、間接的に潰してやろうというのだ。
彼女にとって彼は凡ゆる負の感情を抱かされた存在に違いない。だが己にとってはどうだ?…
「…邪魔するぞ、お嬢。」
掛け軸の背面、以前此処に入った時は首から下げたこの石がなければ負傷していたところだったが、2度も同じ手を食うつもりはない。
前回ここを去る時、お得意の手癖の悪さでこの絡繰を弄っておいた。
故に、己の手順に従い地下への扉を開く事で絡繰が動き出す事なく先に進むことが可能となった。
「愛刀…だったか、持ってきてやったぜ。」
相変わらず地上で開けた扉から降り注ぐ僅かな光しか灯として役立つものが無いこの空間で、啜り鳴き声の消えた現在、此処は誰もいないのではないかと誤認してしまうほどに閑静な場所となっていた。
だがその先、鉄格子の奥には彼女がいる筈。
刀の鞘を握り、柄の方を彼女に向けて鉄格子の奥へと差し出し。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/19 16:04
リシア(琥珀)
「ふむ、これが私の心の中か」
精神統一をして意識が辿り着いた先は、自分の心の奥底。
そこは暗い暗い檻の中、幼い自分が泣きながら閉じ込められていて、その周囲は鋭利な色とりどりの宝石の結晶達が守るように存在しているだけの世界。
「相変わらずのようだな、“昔の私”」
『貴女だってそうでしょ、“今の私”。とうとう私が邪魔になって消しに来たの?』
同じ声が静寂の中に響いて溶けていく。
過去の私の言葉で周りの宝石達が殺気立って攻撃を仕掛けてきた。
それを無言で受けながら、一歩ずつ進んで
「違う。私は“過去の私”をありのまま受け入れに来ただけだ。……もう、目を背けるのも逃げるのも、終わりにする」
『嘘。どうせまた逃げて、閉じ込めたまま貴女だけ先に進む気なんだ!』
全身に攻撃を受けて、例え意識だけと言えど痛みがある。
それにすら構わず、檻の前に着くと格子へ手をかけて
「……今まで、本当に悪かった。許せないならそれで構わない、幾ら傷つけてくれても構わない。でも、どうか私と共に歩んで欲しい。“過去の私”無くして“今の私”は未来へ進めない。」
『……それは、彼の影響なの?“今の私”。誰かも分からない相手を信用するなんて、見境無しね』
「嗚呼、彼のお陰だ。……彼の素性なんてどうでもいい、彼は私達を見つけて真っ直ぐ向き合ってくれた。私達はやっと、安心して自分をさらけ出して過ごせる相手を見つけたんだ。だから……」
格子にかけた手に力を込めて叫ぶ。
「いじけてないで、さっさと出て一緒に来い!」
甲高い音を立てて、格子が砕け散り宝石の結晶も攻撃を止め、世界が一変する。
そこは、美しい宝石の結晶達に囲まれた明るくて美しい洞窟の中。
『……一度だけ、信じてあげる。』
「嗚呼、もう逃げたりしないさ」
意識が徐々に覚醒していく。
二人で手を取り合ったのを最後に、琥珀は現実に戻った。
違反申告
梅
2018/10/19 11:00
Erbaccia
「刀ねェ…こんな近距離モンより、ドンパチやった方が早ェと思うけど。ま、お嬢の場合能力が遠距離だし、ンなもんか。」
彼女からの頼まれごとに対する計画は己的に上々。あとは実行に移すまでときたが、その前にもう一つの頼まれごとを先に済ませる為に今一度此処に訪れていた。
とはいえ己は仮にも彼女の父親の用心棒なのだから、この屋敷自体にはほぼ毎日のように通い詰めていたのだが。
彼女の部屋に置いてあった刀を手に例の場所へと迎えば、下記を呟いて扉に手を掛ける。
前回の事もあり、能力を意識化させて警戒しながら中へと踏み入り。
「さァて、あのオッサンが出張な日を狙って来た訳だが…流石にいねェよな。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/17 19:16
リシア(琥珀)
「全部終わってからのご褒美、か。……すまないな、エル。」
今度は足音が止まることなく遠ざかっていった。
完全な静寂に包まれてから、上記の呟きと謝罪を口にした。
「その約束は、叶えられそうにない」
生まれて初めて出来た友人に、自分は初めて大きな嘘をついた。
……しかし、罪悪感に浸っている暇はない。
「さあ、始めようか」
紅を様子見に来る奴から見えないであろう死角に忍ばせ、静かに目を閉じて精神を統一して。
違反申告
梅
2018/10/17 18:43
Erbaccia
「わァッたよ…ご褒美のハグだ。お嬢も達成感のあまりご褒美蔑ろは無しだぜ…?」
端から地道に潰していくのは隠密的だが時間がかかり過ぎる。1度に潰すのが1番だが…大々的に行うのも嗅ぎ付かれるのがオチだ。何処に陽動を置いていくか…最中に今一度此処に届け物をするのかも至難ではあるが。
己に出来ない事ではない。
吊り上げた口角のまま軽口に上記を告げると次こそ振り返らずこの地下から出て行く。
名残惜しげに出て行けば折角の意気付いた彼女の心を折るだけだ。
ただ表は我らが頭の巣窟、のうのうと顔を出して鉢合わせるのはあまりにも危険過ぎると考察しては先ほどと打って変わって至って真剣そうな顔付きと慎重な足取りで部屋を出て行き。
「…さッさとズラかるのが1番だな。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/17 10:44
リシア(琥珀)
「嗚呼、最後にもう一つ。頃合いを見て途中報告に来てくれ。ついでに私の愛刀を取ってきて欲しい。隠すのはうまくやるさ」
去ろうとする彼の背中である方に向かって、上記を投げ掛ける。
撫でられた頭に触れ、嬉しさに頬を緩めた。
「後、抱き締めるのは全部終わってからと言ったのを忘れるなよ?忘れたら拗ねて口を聞かなくるぞ」
軽く手を振りながら、冗談を言って
違反申告
梅
2018/10/17 06:43
Erbaccia
「ハグは…全部終わってから、だな。」
こんな思春期か愛着形成かで甘える彼女の心が壊れきっているとはとても思えない。
伸ばした掌を彼女の頭髪に乗せる。
今回は乗せるだけでなく、指をさらさらな毛髪に絡めて梳くように撫でてやり。
思う存分撫でてから名残惜しげに手を引っ込めると、彼女に背を向けてから、一度だけ振り返り下記を伝えるとこの地下を後にしようとして。
「お嬢のやりたいようにやりな、俺は頼まれ事済ませてイイ子に待っててやるからよ。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/16 23:20
リシア(琥珀)
「ありがとう。そうか、ダイヤモンドならエルに譲渡した時点で私との繋がりはほとんどないからな。私が能力を使えない状態でも行動することが出来たんだろう」
礼を言いながら、ペンダントを握り締めた。
仄かな熱が伝わってきて、ルビーが微かに点滅する。
「さて、名残惜しいがそろそろ此処を去るべきだ。何もなかった様に普段通り振る舞ってくれ、奴に勘づかれては元も子も無いからな。」
そして、少し控えめに
「その、行く前に頭を撫でるか、抱き締めてはくれないだろうか……?勿論嫌ならしなくても良い、ただの我が儘に過ぎないからな」
上記を続けた
違反申告
梅
2018/10/16 22:48
Erbaccia
「お嬢に何かしら考えがあンのなら、任せるぜ。」
彼女の様子からして、心配は無さそうだ。
彼女はきっと能力と向き合い、互いを共有する事が可能だ。
ならば己が躊躇う必要も渋る必要もない。
「此処を見つける前、親父さんに渡された。此処までの道のりはお嬢がくれた石が案内してくれたぜ。」
此処までの経緯を説明しながらポケットから石を取り出し、彼女に手渡し。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/16 22:39
リシア(琥珀)
「これはまた、随分と痛いところを突いてくるな。しかし、私はエルが関係を壊し回っている間は、何があっても此処から出ない。眼と能力に関しては……使えるようになる為に必要なことは、何となく分かっている。」
凍えきった肢体を何とか動かし、起き上がった。
そして、エルの声がする方に向かって手を差し出して
「その為に、紅を私の元に戻してくれないだろうか。勿論先走った行動はしないと誓う。取り戻す上で紅が側に居ることが絶対条件だと、私は考えているんだ。私が起きたときには既に無くてな……恐らく奴が持っているはずなんだが」
能力を取り戻すために必要なこと。
それは、過去の自分と向き合い今まで被っていて今回の件で更に分厚くなってしまった心の殻を砕くことだ。
心の殻を砕いた上で、もう一度彼等の心に耳を傾け対話を試みる。
違反申告
梅
2018/10/16 21:09
Erbaccia
「仲違いだろうが、末代まで処断だろうが…俺に任せな。」
彼女の頼み事は今迄やってきた事と大差変わりはない。
懐柔もひとつの手だが、物理的に壊すか消すかした方が手っ取り早いし禍根も残らない。
彼女がそれを許すならば鼠一匹取り残さずに食い殺そう。
ただまだ不安の種は幾つかある。
もう一度鉄格子に手を掛けると、彼女に揶揄も入れて尋ねて。
「だがお嬢はどうするつもりだ?お姫様みたいに囚われた挙句…能力、まだ戻ってねェんだろ?」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/16 20:34
リシア(琥珀)
「……力業になってしまうが、勝算はあるにはある。しかき、大元を絶つ前にやらなければならないことがある。本来なら私がやるべき事なのだが……エルの言う通り、現状動ける状態ではない。一つだけ頼みたい事がある」
紫陽花について知っているなら話が早い。
それに、これから頼むことは彼の方が向いている。
「鳴神組と懇意にしている組織や人物との繋がりを完全に壊して欲しい。この組が無くなった後に、同じ事を繰り返す者が現れないようにな。……後の事は、私がきちんとけじめをつける。やっと、決心がついたんだ」
長年、奴を殺すことに踏み切れなかった。
この気持ちが鈍る前に、殺すしかない。
違反申告
梅
2018/10/16 17:48
Erbaccia
「…紫陽花を手駒かァ、そりゃ困るな。」
腕組みをしながら片手を顎下に当てて表情を硬くする。視線が伏し目がちに彷徨った。
まさかそんな大層な計画を立てていたとは驚きだ。
実際此処に初めて来た時からこの組みが『紫陽花』と協力関係であるという情報は既にあったが、長く泳がせてみればまさかこんな情報まで得られるとは、正直一石二鳥。
彼女にとってはその『紫陽花』の餓鬼どもの未来を汲んでの発言なのだろうが、己としても其奴らが戦闘兵器に生まれ変わり『紫丁香花』に抵抗する力を持たれては困る。
此処でその計画を手折るという行為は彼女が手を出さずとも遅かれ早かれ必然的にされる事であろう。
勿論、己の手によってだが。
火種は早いうちから消すのが得策。腕組みを解けば視線を戻し、彼女からその許しが得られるというのであれば、直ぐにでも行動に移すつもりでいて。
「お嬢は優しい奴だな………俺に何か出来る事は無いか?こんな状態だ、何か勝算やら作戦あっての発言じゃねェだろ。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/16 10:20
リシア(琥珀)
「それは、紫陽花と呼ばれる組織に属している能力を持った子供達を数人選抜し、私のような英才教育を施して傀儡にし、能力者による特殊な傀儡部隊を作ることだ。その目的は裏社会全てを支配し、組を未来永劫存続させるためだと奴は言っていた」
あの時の得意気な奴の顔を思いだし、手に力が入る。
怒気を含んだ声で、続けた
「私はこの計画が許せなかった。組に関係がある私だけを利用して済ませるならまだ良い。だが、何の罪もない無関係な明るい未来のある子供達のこれから歩んでいく人生を奪う事が許されてなるものではない。……これで、今まで留まっていた奴への殺意が限界まで募った。まあ、殺そうと強く決心した極めつけは、エルを用心棒として雇ったときだがな」
私は普通の人生を歩めなかったし、きっとこれからも歩めない。
こんな思いを、他の子供達にしてほしくないのだ。
違反申告
梅
2018/10/16 06:50
Erbaccia
「…計画?」
どのくらいの間此処に閉じ込められていたのだろうか。まるで氷のように芯から冷え切った彼女の手が、事の残忍さを物語っている気がした。
彼女の己に対する本心にひと段落がつき、顔つきが変わる。
見えはしないが1度頷きを入れ、長らく気になっていた彼女の使命を聞くと、同時にあらゆる疑問が沸き起こる。
だがそれを今口にするのは早計。
先ずは彼女の育ったこの地を、仮にも血の繋がっているであろう関係を断ち切ろうとする原因となったその計画について、詳細を聞き出すべく単語のみを口にする。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/15 23:48
リシア(琥珀)
頭に乗せられた手に、嬉しそうな顔をして頭をすりすりと擦り付けた。
包帯まみれの手で、彼の腕にソッと触れる。
いつも自分に元気と勇気をくれた温かさが、冷えて凍えた手にじんわりと染み渡る。
「本当に、エルがいてくれたから……私は今まで奴の仕打ちに堪える事が出来た。でも、やっぱり過去の事を言わないのが段々と後ろめたくなって、エルに対しても感情を表に出す事が鈍ってしまった。……何より、今までされてきた事が事なだけに、自分がこんなに幸せな思いをして許されるのかと考えてしまってな。もっと、単純に考えて沢山笑って、エルに甘えれば良かったよ」
叶うなら今すぐいつものように彼へ抱き着きたい。
彼が甘やかしてくれる時ほど、幸せを感じた時間はなかった。
……さて、彼に対する思いは告げた。
次に告げなければならないのは、私の成し遂げたい事だ。
「ここまでは私のエルに対する思いと過去の話だ。さっき聞かれた事への本題に入ろう。私がこんな仕打ちに堪えてまで成し遂げたいこと……それは、ある計画の阻止と奴を殺すことだ。実質、この鳴神組を壊滅させたいと言っても良い。」
真剣な口調で、彼に長年持ち続けてきた目的を語りだした。
違反申告
梅
2018/10/15 23:09
Erbaccia
「分かってる…いや、分かってるつもりだった。ただお嬢の言うように、頭ン中のどっかであの出逢いが作りモンだったンじゃねェかって考えてた時もあった。」
つい昨日の事だ、そんな馬鹿らしい考えが浮かんでしまったのは。胸の内で散り散りに渦巻いていた焦れったい気持ちが集まって、いつの間にか彼女を疑っていた。
だがあの場所で出逢い己と彼女と秘密を交わした時、彼女の能力が開花した時、己が用心棒を申し出た事を伝えた時、それら全てで見せた感情が偽物だなどと、とてもじゃないが言い切れない。
漸く鉄格子に絡んでいた指は緩み、格子の隙間から手を伸ばして彼女の頭の上に置く事が出来た。
正直悔しい。彼女を柄では無いが救い出すか安心させるつもりだったというのに、安堵を抱かされたのは寧ろこちらの方だ。
「でもな、今迄をよくよく思い返してみりゃァ…お嬢が俺に向けてた感情に偽りなんざ無ェって、改めて確信出来ンだ。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/15 22:41
リシア(琥珀)
「そうだ。エルはあの時の私にとっては想定していなかった出会いであり、同時に希望とも取れた。……あの頃、私は奴から“何があっても本性を見せず、笑顔を絶やすな”と命じられていてな。当時は会った全ての人間に対して、そのように振る舞ってきた。正直に言うと、エルを見たときにもそうやって対応しようとした」
此処まで来てまた、軽蔑されるかもしれないと考えてしまった。
自分が今まで向けた感情すべてを偽物と思われたらと考えると、堪えられない。
包帯まみれの手を、思わずキツく握り締めた。
「でも……いざ私が口にしたのは、自己を持ってから初めての偽りない自分自身の言葉と、心からの笑顔だった。エルだけは、他の人間と違って“自分をさらけ出していい存在”だと感じられたんだ。実際にエルは私に世界が広い事を教えてくれて、感情の色が無くなりかけていた私の壊れかけた心に再び火をつけてくれた。あの日出会ったお陰で、私は確かにエルの存在に救われたんだ……どうか、今まで私がエルに向けた感情を嘘であるとだけは思わないで欲しい」
あの時の事を思い出して、少し微笑みながら話した。
ずっと寒かった自分の心が初めて温められたあの時を。
最後の言葉だけは、弱々しい泣きそうな声になってしまったが。
違反申告
梅
2018/10/15 20:31
Erbaccia
「……そうか。」
この手の話にあれこれ口に出すのは不敬だ。
彼女の望んだ通り嫌煙せず憐れむでもなく、有りのままを受け入れる為に、話にひと段落が付くまで黙って耳を傾けた。
彼女は耐え難い苦痛の中で争う事すら不毛に思い、流れるように流れた、ただそれだけの事。
だがそれは諦念した訳ではない。
あの時、抽象的ではあるが石を通して伝えられた彼女の使命が偽りでないのなら、流れ乍らにして彼女は1本の藁、捨て切れぬ理想と希望という名の縋るものを虎視眈々と待っていたに違いないのだ。
相槌の代わりに指先で軽く鉄格子を2、3度突いた。
静かな地下世界に小さな音がやけに響いて聞こえる。
「そんな中、俺が此処に飛び入ったって事か。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/15 16:29
リシア(琥珀)
「私はエルも知っての通り、この家の次期組長だ。この家系には代々受け継いで来た幾つものしきたりがあり、そのうちの一つに“跡継ぎは男女問わず、必ず第一子とする”というのがある。だから、奴は女に生まれた私を完璧な組長へ育て上げるための“英才教育”を始めた。」
ここで、また深呼吸をした。
自分の過去を語ることが、此処までドキドキするものだとは思わなかった。
「生まれて数年の私を此処に幽閉し、逆らえば折檻や暴力が加えられ、罵倒されることも日常で、奴以外の人間を知らない私は、この世の人間全てがあの様な人物なのだと思い込み、やがて逆らわずに従った方が楽だと知り、生き残るために奴の望むままに動いた。……今思えば、心が壊れかけていたのだろうな」
話している間も無意識に指先が震え、呼吸が乱れそうになるが、何とか耐えて言い切り、最後の一言は自嘲気味に笑った。
違反申告
梅
2018/10/15 13:36
Erbaccia
「辛いなら無理に話さなくても良い…とは言ってやれねェけど、お嬢のペースで構わねェよ。俺はとっくの昔から聞く準備は出来てんだ。」
彼女の感情表出が鈍り始めた頃から何かしらあるのだとは気付いていた。
"友人"として出来て当たり前な基準など知りはしないが、彼女を此方側に連れて行く過程でその原因をいつかは把握しておかなければならないという義務感を抱いて今日まで過ごしていたのだから、恐らく彼女の抱いている心配事は己にとって凡そ杞憂でしかない。
自身もその場にしゃがみ込み、然し彼女の体調にも配慮するつもりでこの薄暗い空間で彼女から目は話さずにいて。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/15 13:03
リシア(琥珀)
「ありがとう、エル」
見捨てない、一緒に居る……その言葉だけで、大半の不安は払拭され、自身の過去を言う勇気を貰った。
深呼吸してから、伸ばしていた手を降ろして姿勢を楽にし、見えない目で虚空を見つめながら話し出した。
もう恐怖で怯えることなく、冷静に話すことが出来るだろう。
「私の目的を語る為には、まず私の過去を語る必要がある。聞き苦しいところもあるかもしれないが、どうか聞いて受け止めて欲しい。」
違反申告
梅
2018/10/15 12:53
Erbaccia
「"俺自身ろくな人間じゃねェ"ってさっき言ったろ。今更見捨てるも何もねェさ。」
本当に今更な事を言うのだなと呆れた表情を浮かべてみるが、当然目の見えない彼女には伝わっていないだろう。
腹を割って語っていないのはお互い様。
今までお互いに尋ねなかったし、気になるような機会も多くは無かった。
ある意味このタイミングがベストと言っても過言ではないのだろう。そういった点ではこの状況に感謝すべきなのかもしれない。
「だが俺はあんまり気が長い方じゃねェ。お嬢が何を語ろうが何をこれからしでかそうが構わねェし、一緒に居てやるから…あんま待たせんなよ。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/15 11:37
リシア(琥珀)
「私の、やりたい……事」
彼に告げるべきだろうかと迷う。
何度も逃げ出したいと思っても踏み留まることが出来たほど、自分にとって重要なその目的。
しかし、話すには今まで彼に言っていなかった己の暗い過去を彼に打ち明けなければならない。
あんな自分を、彼は受け入れてくれるだろうか。
だから思わず聞いてしまった。
「エルは、本当は私がどんな人間でも……どれだけ世間一般で言う非道なことをしようとしていても……見捨てずに、一緒に居てくれるのか?」
違反申告
梅
2018/10/15 00:34
Erbaccia
「……お嬢。お嬢は何がしたいンだ…こんな思いまでして、やり遂げたい事って何なンだ?」
彼女が手を伸ばしているというのに、其の手を取れない己が此処にいた。手どころか、微動だも出来ず、ただ、見ているだけ。
彼女の手を取り、此処から救い出す事なんて己からしてみれば容易いこと。然し其れが出来ないのは彼女自身に問題があるからだ。
彼女は未だ己の手を取ってはくれない。苦しんでいるのにも関わらず、能力開花したあの日以降、己に救いを求めようとはしてこない。
彼女を支えるよう頼まれて、間接的に支える行為がこの見守りだというのなら己はとっととこの座を降りてしまいたい。
それ程に、己が体験するよりも他人が苦しんでいるのを側で眺めていることしかできない無力さの方が余程辛いのだ。
「俺自身ろくな人間じゃねェ…けど友人にくらいは心配する。なァ、俺が其れを手伝っちゃ駄目なのか?」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/14 23:26
リシア(琥珀)
「エル……?エルなの??」
聞き慣れた彼の声がした方へ、問い掛けながら鈍い痛みに耐えながら手を伸ばす。
あと数センチで鉄格子に届きそうだったが、重い枷と鎖が重症の身体を動かすことを不可能にしていて。
「つっ、怖いの……昔を思い出して、また戻ってしまいそうで。あの頃の私がずっと耳元で囁きかけているようで……」
怯えて身を震わせ、また涙を流しながらそう答える。
違反申告
梅
2018/10/14 23:02
Erbaccia
「……何が悲しくてそんなに泣いてんだ、」
辿り着いたその場所に、やはり彼女はいた。
ひんやりという言葉では少し足りないくらいの寒さと薄明かりすら存在しないないこの閉鎖空間で、彼女は涙を流し、床を濡らしている。
この場所には見覚えがあった。
昨日"紅蓮"が見せた記憶の中、幼少期の彼女は今と同じように此処で閉じ込められていたのだ。
己と彼女を隔てる鉄格子に指を絡めながら努めて柔らかく低い声で彼女に呼び掛けて。
「なァ、お嬢。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/14 22:36
リシア(琥珀)
怯えて泣いていると、物音がした。
階段の方から微かな灯りが漏れだしていた。
「誰か、いるの……?」
弱々しい声で、暗がりに声をかけた。
少し身動きしたときに、足につけられた枷と鉄球がジャラリと重い音を立てた。
違反申告
梅
2018/10/14 21:42
Erbaccia
「こういうのだったら得意なんだけどなァ…っと、よし。」
剥き出しの扉にほくそ笑み(悪人面)を浮かべながらアウターのポケットから一本の細い針を取り出し、南京錠の鍵穴に差し込む。
此方の道で生きて10年以上、当然ながらこの手の芸当はものの数秒で解決できる。
小さく音を立てて開いた錠を人目につかない場所に隠し、扉を開けると迷う事なく奥へと進んでいき。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/14 21:10
リシア(エルの所持するダイヤモンド)
『当然です。私は元主である琥珀から貴方を守るよう命じられた存在なのですから』
称賛は素直に嬉しく感じられ、周囲を警戒しながら掛け軸の前を漂う。
捲られたそこには壁ではなく、鋼鉄製の南京錠がかかった扉が一つ
違反申告
梅
2018/10/14 20:32
Erbaccia
「…なッ、」
捲った瞬間に小さな風が此処まで届いた気がして振り返る。
乾いた軽い音を立てて落ちる矢に思わず血の気が引く。
己に怪我がなかったのは恐らくこの石のおかげであろう。
此処では十分に警戒しているつもりではあったが、やはり己は不意打ちには甘い。
矢を拾って先を見ると何かが塗られているようだが…まぁ毒は己には無効な為、この鋭利で危険な鏃を飛んできたであろう方向の矢の射出口に無理矢理差し込んで機能を一時的に停止させる。
ちらりと光を見ながら賞賛の言葉を掛けては、再びその掛け軸を捲って本来壁があるであろう場所を見て。
「助かったぜ石ころ、あんたやるなァ」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/14 20:03
リシア(エルの所持するダイヤモンド)
『主、危険です!』
彼が掛け軸を捲った際、その死角から何かが無音で放たれた為、障壁を張った。
何回か弾いた物が畳に転がった。
それは毒が仕込まれた矢だった
『不要かとは思いましたが、これが私の役割ですので』
何処か誇らしげにフヨフヨと彼の頬をつつく。
違反申告
梅
2018/10/14 19:19
Erbaccia
「あのオッサンは…いないのか。ん?痛てッ、おいッ、急かすなよッ」
中からの返答は無く、だが此処でお行儀良く引き返すほど上品な育ちはしていない為、躊躇うことなく足を踏み入れては光の指す方へと付いて行き。
怪しげな場所を探して行くと不意にその光から頬を抓られ、引っ張られた目先にある掛け軸を頬をさすりながら見つめる。
あんな自信満々に見つけられる訳がないと言われたのだからまさかこんな場所に…いやいや。
ぺらりと掛け軸を捲りつつその先にあるものへ目をやり。
「ははッ…いやコレは幾ら何でもベタ過ぎるだろ。オッサンお茶目か…」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/14 18:54
リシア(エルの所持するダイヤモンド)
『此処です。此処から微かに気配がします。』
和室にある床の間の所を示すように激しく点滅する。
かなり弱まっているのを感じ取れる。
『急いで、急いで!』
僅に実体を持って主の頬を引っ張ると、何とか掛け軸の前へ顔を向けさせる。
違反申告
梅
2018/10/14 17:32
Erbaccia
「おッ、マジでか…ッ」
己の言葉に反応するかのように発光したその石に思わず声が興奮気味に上擦る。
飛んでいく光を追い掛けるように向かうと、辿り着いたその先の場所に何となく合点が行く。
確かに此処であれば調べ難いし、彼の目も届きやすい。
「失礼致します…」
こういう時でさえも礼節を持ってしまう己を内心で苦笑しながら、然し遠慮は持たずに入室して。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/14 14:34
リシア(エルの所持するダイヤモンド)
『それを現在の主である貴方が望むなら』
弱い力を振り絞り、淡く光る小さな光の球となる。
フヨフヨと頼りなさげに僅に残ったリシアとの繋がりを探して飛び始めた。
最終的についた場所は、よく主が来る組長とやらの部屋だった
違反申告
梅
2018/10/14 14:16
Erbaccia
「ん、何か温い…?コレ、そうか…お嬢に貰ったやつ。」
一向に反応する気配を見せない石に諦め掛けていた時、胸元から熱源を感じ其方へと視線を移すと、其処には己が律儀に着けているもう一つの石があり。
反応を見せない石はポケットに入れ、熱を発する石を不思議そうに見て。
「こっちはお嬢の手元に無くても反応できンのな…おい、あんたお嬢探せるか?」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/14 14:05
リシア(エルの所持するダイヤモンド)
現在の自分の持ち主は、紅に話しかけている。
しかし、彼は元主に依存した存在であるため、声を発する事も出来ない。
ならば、自分がやるしかないだろう。
『主の元に行くなら、案内する』
まだ年若い自分は彼に言葉を発せられず見せられる姿も持っていない。
だから、熱を発する事で気づかせることにした。
『気づいて、気づいて』
彼の胸元で点滅と僅かな発熱を繰り返す。
違反申告
梅
2018/10/14 13:36
Erbaccia
「あのオッサンも頭が切れてンのか、どっか抜けてンのやら……まァ、探して良いってンなら探させてもらうか。」
余程己の評価が下がっているのか、彼に確たる自信があるのかは定かでは無いが、己に塩を送るような余裕を見せる行為を有難く受け取る事として、再び辺りを見回した。
この敷地は大体見て回ったが怪しい場所は見受けられなかった。
となれば考えられるのは別の場所に移ったか、もしくはこの屋敷にカラクリがあるかだ。
次は単純に見て回るだけでなく、もっと念密に探してみるべきか…と脳内に描いた屋敷の地図を浮かべて、ふと手元の石に目が向いた。
突いたり弄ったり、再び"紅蓮"とかいう奴が出てこれないか試してみて。
「おォい、石ころ…って、お嬢の手元にねェから出てこれねェか?」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/14 12:48
リシア(父親の琥虎)
「まあ、探したければ満足が行くまで探すが良い。許可は出してやるが……見つけられるわけがないからな」
鼻で笑って、その場を去った。
~その頃、琥珀は~
琥珀はひたすら怯えていた。
過去の恐怖が、思い出が鮮明に頭の中を際限なく繰り返されて、頭の中がぐちゃぐちゃになりそうで。
身体中も痛みと寒気しか感じず、動かない身体を丸めて震えながら涙を流して
「エル……」
と小さく弱々しい呟きを溢した
違反申告
梅
2018/10/14 12:18
Erbaccia
「………、分かりました。」
断固として拒否されてしまった彼女との面会に此方の苛立ちは最高潮を迎えようとしていた。
だがひと時の障害に対しその異分子を消せとばかりに内側から送られてくる憎たらしい殺意を含んだ信号を素直に受け取るつもりは無く、投げ渡されたその灰色の石…否、これには見覚えがある。
そう、この石ころに半ば無理矢理約束させられた事を思い出しては、其れを突き通す為にも此処は一度身を引く選択をする。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/14 11:21
リシア(父親の琥虎)
「ダメだ。特にエルバッチャ、お前さんはな」
予想通りの答えが返ってきた。
アレの心を完全に壊すためには、精神的な支えがあってはならない。
その為に危険を犯してまで、所持していた宝石も取り上げたのだ。
「お前さんはアレの拠り所となってる節があると俺は考えている。心を壊す上で拠り所は必要ない、寧ろ邪魔だ。代わりにこれでも持っていろ」
懐から取り出して彼に向かって軽く放る。
照明の灯りで煌めくソレは、リシアの所持している唯一の宝石であるルビーのネックレスだ。
違反申告
梅
2018/10/14 11:06
Erbaccia
「…俺は彼女の能力面を兼ねての世話係として此処に居るつもりです。彼女に会わせて下さい。」
予想していた展開は凡そ当たりなのだろう。
だが此処にきて濁りかけたこの瞳で彼を睨んだところで効果は恐らく無い。
餓鬼のような真似を見せるくらいなら素直に問い出す方が幾らか賢いと判断して上記を口にする。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/14 10:02
リシア(父親の琥虎)
「嗚呼、アレならば現在監禁状態にある。」
煙管で煙を吹かしながら、淡々と述べる。
距離を詰められたが、殴られるのだろうか?
それはそれで一興だ、瑠璃の拳ほど痛くはないだろう。
「今後はアレの心が完全に壊れるまで、外部との関わりを極力断つことにした」
違反申告
梅
2018/10/14 09:39
Erbaccia
「…ご子息は、何処へいらっしゃいますか?」
己の中で着実に苛立ちが積もりに積もっているのが分かる。
グツグツと腑が煮え繰り返るような、不快感を物理的に頭から被せられたような、そんな感触だ。
普段は部屋でしか会わない癖して、態とらしい程に己へ態々顔を見せにやって来た彼へ、己はそれらの感情の一切を押し殺し歩み寄ると彼に直接尋ねて。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/14 09:27
リシア(父親の琥虎)
「どうした、エルバッチャ。何か探し物かね?」
彼が屋敷を歩き回っているとの報告があった為、自ら足を伸ばして尋ねに行った。
大方、アレの件についてだろうが……居場所は自分と極一部の幹部しか知らない。
あの場所をこの男が見つけられるはずがない。
違反申告
梅
2018/10/14 08:06
Erbaccia
「お嬢……」
翌日、いつものように此処を訪ねたのだが様子がおかしい。
まだあの怪我でまともに動けようも無い彼女の姿が部屋に無いのだ。
それに対してこの屋敷のものは妙に静か、何も無いとはとてもじゃないが言えたものではない。
時折通り過ぎる他の従者を無視して屋敷内を歩き回り、怪しげな場所を探そうとして。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/14 01:57
リシア(琥珀)
「むぅ……えっ」
朝、いつものように目を開ける(といっても見えないのだが)と、ひやりとした空気が肌を撫でた。
その感覚に心臓が早鐘を打って、呼吸が浅くなりそうになる。
身体を動かそうとすると、先日よりも鈍い痛みが全身を襲う。
首にかけていたルビーも無くなっている。
「嘘、ここ…」
何よりも彼女が恐怖したのは、自身が今置かれているであろう場所。
そこは地獄の幼少期を過ごした地下牢だった。
違反申告
梅
2018/10/13 18:42
Erbaccia
「…元より、そのつもりです。」
下を向いたまま、迷っているような頼りげの無い声色で同意の形を示す。
此処で胸を叩きながらきっぱりと其れを約束出来るのなら、俺はこんなところは愚か、このロクでも無い道からとっとと外れる事が出来たのだろう。
強張った拳を解き、触れてくる彼女の母親の手が妙に『あたたかい』。
だが己はこれら欲しいものを全て情緒に任せて強請ったり、況してや奪い去ってしまう程子供ではなかった。
もう何度も頼まれたであろう願いに下記を応えると、逃げるようにして彼女の母親の部屋を後にしたのだった。
「俺は彼女の……友人、ですので。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/13 18:08
リシア(母親の瑠璃)
「それが、あの子の為になるのなら……何もない限り、黙って見守ることにしましょう」
自分は母親として今まで何もしてこなかった。
だからこそ、今自分がする娘に対する行動が全く分からない。
もう会えないのなんて嫌だ、しかし彼の忠告を無視して強行突破をしてしまえば、娘の大切な人である彼が被害を被るのは明らかだ。
「エル君、私の代わりにあの子をお願いね。どうか……貴男だけは、琥珀の傍にいてあげて欲しいの」
今の娘にとって幸せなのは、恐らく彼がそばにいる事。
母と名乗る権利すら無いに等しい自分ができるのは、娘の幸せの為に相手へ懇願する事だけだ。
彼のきつく握り締めた拳を優しく解いて、その手に縋りながら、涙声で呟くように上記を述べた。
違反申告
梅
2018/10/13 12:54
Erbaccia
「……子は、成長します。」
人間の"親"という存在は普通、目の前で涙を流す母親のように子が幾つになっても心配するものだ。
己はその普通を知らない。
だからこそ彼女が羨ましく、その微笑ましい関係を崩したくは無いと心の底から思う…が然し己は彼女らに情を与えては良いと命令されていない。
ただ漠然としたままでは母親も納得しないだろうと言い訳程度の説明をするだけの事。
だが親子の関係など、その身に経験した覚えの無い己が口で語って良い訳がない。
下を向いたまま、語る口の中が酷く乾燥して気持ちが悪い。己を嘲笑う陰険な声が内側から聞こえて、爪が食い込むほどに己が拳を握りしめた。
「子供の発育に伴い、必ずしも親の加護が必要という訳ではありません。貴女のその"愛情"が、自己満足で形成されたものでないのなら、どうか…彼女の成長を遠くから見守るに留めて下さい。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/13 10:58
リシア(母親の瑠璃)
「……そう。もう、あの子とは会えないのね」
先程まで感じていた温もりを思い出すように、自身の手を見つめる。
何故か徐々に視界がぼやけ始め、思わず呟いた
「私、母親なのに……琥珀に何もしてあげられなかった。それなのに、あの子はちゃんと、私を母と思っていてくれた。そんな愛しい我が子に、何も返せずに終わるなんて……」
散々泣いたはずだが、再び涙が溢れて止まらなくなる。
今になって明確に自覚した我が子への愛、しかしそれを与えることはもう許されないのだという悲しみと葛藤、己の無力さをひしひしと感じてしまう。
違反申告
梅
2018/10/13 02:46
Erbaccia
「えェ、子息様には早めの療養を、と俺が瑠璃様を此処へお運びさせて頂きました。」
目を覚ました彼女の母親の側に片膝をついて屈み込んだまま話を進めると、僅かながら緩んでいた頬の筋肉に力を入れて張り詰めた真剣な表情を出来うる限り見せると下記を告げて。
深くは説明できない、だがきっと相手ならばこの理由を何となしにでも察する事が出来るであろう、半分は己の願望でもあるのだが、そう思いながらに目線は下に向けて。
「瑠璃様、お察しだとはお思いですが、もう彼女との接触はなりませんので…ご理解下さい。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/12 20:06
リシア(母親の瑠璃)
僅かに揺さぶられて、瑠璃はゆっくりと目を開いた
泣きすぎたせいか、目と頭が痛い。
ゆっくりと視線を巡らせて、彼の姿を捉えた
「エル君……?私、確か琥珀の所で寝ちゃって……」
半身を起こしながら、そう呟く
違反申告
梅
2018/10/12 19:58
Erbaccia
「あァ…分かった。」
なんと察しの良い事だろうか。己を呼び止める彼女は恐らく今までの経験故にその運命を読み当て、内心驚きながら足を止めてしまう。
情を与えてはならない、だが此処で無理に引き下がれば不自然さしか残らないであろう。
彼が望む"傀儡"を作るのであれば、未練よりも諦めの方が手っ取り早く片がつく。
彼女のしたいようにさせておけば、その惜しむような別れをじっと待ち、終えた後に部屋を後にする。
そっと彼女の母親を部屋へ運び床へ横たわらせると、相手を軽く揺さぶって。
「…瑠璃様、起きて下さい。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/12 16:46
リシア(琥珀)
「エル、少し待ってくれ」
一声掛けると、見えないながらも母親の腕を探す。
何とか腕を見つけると手に取り、自分の顔の前まで持ってきて、祈るように握り締めてからゆっくりと離した。
「すまないな……何故かもう、会えない気がしたから」
違反申告
梅
2018/10/12 14:20
Erbaccia
「久々の再会なんだ、嬉しかったンだろうよ。」
この状況で引き剥がせというのだから、流石の己でも良心がひしひしと音を立てた。
本来であればあの去り際で反旗を翻すべきだったのかもしれない。この"用心棒ごっこ"を終いにして、彼女の邪魔にならない位置でケジメをつける様子を観察していればそれでいい。怖気付いたのか?それとも…
伸ばした手を彼女の頭の上に乗せて、口角を少し上げると彼女の母親へと目を向ける。
「お袋さんは、俺が部屋に連れ帰っとくよ。今日はかなり燥いでたから尚更疲れてるだろうしよ。そしたら、俺もその後帰るから…お嬢はちゃんと養生しとけよ。」
乗せていた手を母親の方へと差し向けると細身でありながら怪力を持つであろう彼女の母親を横抱きに抱える為、腕を回していき。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/12 13:34
リシア(琥珀)
「エルか、無事で何よりだ」
控えめに開かれた戸の音で、そちらに視線を向ける。
聞き慣れた声に安堵を覚えた。
「時間がかかっていたから心配だったぞ」
傍らには泣き腫らした顔で眠る瑠璃の姿。
琥珀は瑠璃の手を握り、瑠璃はピッタリと琥珀へ寄り添っている。
「母さんは泣き疲れて眠ってしまってな……全く、いつまでも子供のような人だ。」
溜め息をつきながら、満更でもなさそうに笑う。
違反申告
梅
2018/10/12 11:49
Erbaccia
「えェ…存じ上げております。」
言われるがままに彼へ背を向けた矢先、続けられた言葉に当然の命令だと理解していながらも内心げんなりとしてしまいながら「分かりました」と短く伝える。
退室する寸前に投げられた太い釘のような言葉と音に一度身動きが止まると、くつくつと周りからか、己からか、将又自身の幻聴か、己の失態を嘲笑うような音も紛れて聴こえた気がした。
背を向けたまま、静かに上記を返すと彼の部屋を後にする。
そう、この男も馬鹿では無い。お互いの事情に踏み入るなという条件は表向きだけで、とうに此方の身分も把握されていて可笑しい話しでは無いのだから。
これで更に動きにくくなったのは此方の方。いっそ力技で此処を潰して彼女だけ連れて行きたいという前々からの幼稚な案は、彼女の成すべき事を無下にしてしまう為叶わないままだ。募るばかりの内の靄に、癖で唇を弄り倒し血を滲ませてしまう。
「お嬢…俺だ、入るぞ。」
ため息ひとつ盛大に撒き散らせば切り替えたように扉の側に立ち、ひと言声を掛けるとなるべく静かに戸を開けて中の様子に目を向け。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/12 10:53
リシア(父親の琥虎)
「下がって良い。嗚呼、帰り際にアレと瑠璃を引き剥がしていけ。親子で会うのはこれが最後かもしれんが、先も言った通り下らぬ情けをかけるな」
現状でアレと瑠璃に敵うのはこの男だけ。
若い頃なら自分でも止められたかもしれんが、流石にもう年老いた。
出ていこうとする彼に、一言投げかけた
「そうそう、一応言っておこう。……俺に小手先の考えは何も通じないと思えよ、若造」
言い終えるのと同時に、甲高い音を立てて煙管から灰皿へ灰を落として、彼から目線をそらした。
違反申告
梅
2018/10/12 10:00
Erbaccia
「…尽力致します。」
軽く頭を下げながら了解の意を伝える。
彼の見据える先、野望はそこらの小者とは大違いな物を見ているようにも思えた。それは己のものにも似ている…彼の口調からその意気が伝わってきて。
『そうやって俺も飼い殺すつもりか?』なんて聴けるものなら聴いてみたいのだが、そんな事を口にしようものなら未だ辺りに散らつく殺気がこの室内にも侵入して只事では無くなるであろう。
呑まれるつもりは毛頭ないが彼の行く末には興味があり、彼女を連れて行く前に是非見届けておきたいものだ。
「他にご用件無ければ今日のところはこれで失礼致しますが…宜しいでしょうか。」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/12 09:01
リシア(父親の琥虎)
「いや、今までの距離では温い。完全に双方の接触を遮断させろ、部屋の近くに行くことすら厳禁とする。それでも行こうとするなら実力行使をしても構わん」
親子としての距離を離すだけではもうだめだ。
現在アレは重症だ、完全に隔離し躾直す最大のチャンスが漸く巡ってきた
違反申告
梅
2018/10/12 01:29
Erbaccia
「畏まりました。」
握った拳に溜めておいた灰を差し出された灰皿に払い落とす。掌の皺の間に引っ付いてしまい僅かに残った灰は諦めて後に洗う事としよう。
それよりも今気に留めておくべきは彼が話に出した件である。
特に抑揚も無くいつも通りに返答はしたものの、さてどうしたものか。いや、特に考える必要もあるまい。
「今迄と、同じような距離を保たせれば宜しいのでしょう…?」
育児に関わる事を許されなかった母親が一度子に近付いた事で此れからどのような変化を言動に出してくるのか、対して母親の温もりを知った彼女が如何に親への欲求を露わにするか。
己からしてみれば体験した事のない、否、記憶はあるが実感のない間柄の話ではあるが"客観的"には予想がつく。
態とらしく簡単に上記を口にしたは良いが今迄とは訳が違う上、相手はそこらの母親と娘とは比べ物にならない程厄介な存在の組み合わせというのは明白。
其れこそ単純そうな任に見せかけて面倒な役回りを押し付けてきた彼は、いい加減己の扱い方に慣れてきてしまったのだろうと、サングラス越しに彼女と同じ色の双眸を見据えて。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2018/10/12 01:02
リシア(父親の琥虎)
灰はここに捨てろ、との意味を込めて自分の近くにあった灰皿を彼の方へ寄せながら
「嗚呼、これからも俺はお前さんに期待している。」
そして、一度煙を吹かすと別の話題へ移した
「お前には当面、アレ(琥珀)の監視と瑠璃がアレに接触するのを妨害してもらいたいと思っている。下らぬ情を挟まないように頼むぞ」
今、琥珀が瑠璃によって精神を持ち直してしまったら、折角また傀儡に戻そう考えているのが台無しになってしまう。
ただでさえ当初の傀儡計画から大幅に遅れているのだ、これ以上長引かせるのは極力避けたい。
違反申告
梅
2018/10/10 22:37
Erbaccia
「ケホッ、はァ…大事に、使わせて頂きます。」
喉奥で未だ引き攣る咳嗽反射を無理に押し殺せば、目線を下げてまるで喫煙初心者のように情けの無い姿を見せてしまった事を僅かに恥じながら、これ以上無様を晒す前に火皿を逆さに向けて己の掌に落とす。
【拒絶】を意識化させた掌は火傷をする事なく燻りを揉み消し、屑をその場に放る訳にはいかない為、握り拳を作ったままにしておけば使用していた刻み煙草と煙管を丁重に仕舞い込み。
「今後も貴方様のご期待に添えるよう、精進致します。」
伏し目がちに上記を口にすると、先程の醜態の件もあって多くは語らず、他に用件が有ればそれを窺うかのように相手の言葉を待ち。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2017/12/01 00:47
リシア(父親の琥虎)
「すまん、俺はいつも口内喫煙だったからな・・・・当たり前のように感じてしまっていたよ」
まさか肺まで吸うとは予想外だった為、口調は落ち着いているが少し慌てた。
「煙管はお前さんが普段吸っている煙草のようにフィルターとやらがない。だからダイレクトにが味わえる分、煙は重いんだ」
恨みがましそうに此方を見る彼へ、頬を掻きながら上記を説明する
違反申告
梅
2017/11/30 19:43
Erbaccia
「 臭いは別ので消してたつもりなのですが…いやはや、バレてしまったのでしたら仕方ありませんね。
有り難く受け取らせて頂きますよ。 」
あのしつこい柑橘の香りで騙していた気でいたが、とばかりに驚いて見せたが…すぐに何処か嬉々として横暴な様子で言葉を返して管に受け取った刻みを詰め始める。
年季の入った彼の話を聞きながら妙な感覚を…此処に来てからもう何度目か、また抱くのだ。
彼とは違って不慣れな手つきで、だが器用に積み重ねると咥えて詰めた草の上に火を灯した。
「 えェ、勿論秘密に致しましょう。
俺もその…うァッ、ゲホッ、ゲホッッ 」
喫った煙は自分が予想していたものよりずっと重たいものだったらしい。
肺で喫える様なものではないと確信すると共に激しく噎せ込んだ。
目尻に生理的な涙を浮かべつつ決まり悪そうな目と共に「口腔喫煙なら最初に言って下さい」と訴えかけるとサングラスをズラして目元を擦り。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2017/11/29 23:07
リシア(父親の琥虎)
「構わん。近頃は煙管での喫煙者は減る一方・・・・未成年に勧めるのもどうかとは思ったが、お前さんからは煙草の匂いがするからな」
こういう所は子供らしいのか、と思わず頬が緩んでしまいそうになった。
戸棚から一緒に取り出した煙草を、彼への手本も兼ねて煙管へと手慣れた様子で詰めていく
煙草の葉を差し出しながら
「その煙管はお前さんにやろう、遠慮は要らん。
代わりと言ってはなんだが、瑠璃には内緒だ・・・・また怪我が増えても困るからなぁ。
まあ、愛しい妻の拳はいくら受けても身が持てば構わんがね」
何を企んでいるわけでもない、ただただ歳を取ると人間とは寂しくなるものなのだろう。
部下であって部下ではない彼と煙草を吸いたかっただけだ。
自身のはだけたスーツから覗く包帯を見せて、苦笑に近い笑顔を示した
違反申告
梅
2017/11/29 22:25
Erbaccia
「 『喰う』だなんて滅相も無い。
俺は貴方様に手を出す気は御座いません。 」
態とらしさを残した様子で畏まりながら上記を述べていると、
不意に差し出された『煙管』に子供の旺盛な好奇心らしく興味を抱いて視線を寄せた。
「 宜しいのですか?
…琥虎様の嗜まれている煙管、前から気になってまして。 」
遠慮がちに受け取り、長たらしい管に指を這わせて改めて眺めた。
娯楽探しに文献で読んだ程度だが…やはり、自分にはどうも似合わない代物だ。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2017/11/28 23:37
リシア(父親の琥虎)
俺は目の前に迫った奴の言葉と顔を見て思った。
何と厄介な男を此処に招き入れてしまったのか、と
それと同時に自分は存外この厄介者を嫌ってはいないと感じる。
度胸や器量のある男であると言うのもあるが、腹へ何かを一物抱えていそうな危うさがあるように思える矛盾のある男。
捨てるにはまだ惜しい。
「嗚呼、お前さんを雇ったのは俺だとも。
この業界じゃ裏切りや寝首かかれるのなんざ日常茶飯事、精々自分の選んだ輩へ喰われぬように気を付けるとしよう。
・・・・お前さんをまだ捨てる気はない、何を言おうとも俺の手駒でいてもらう。」
幸い、アレは未だ動ける状態ではない。
瑠璃さえ引き離せば再び地下牢に封じ込める事も可能だろう。
この男はアレから身を守る為の盾となりうる、万が一の場合は引き合いに出させてもらおう。
そう考えながら、手近な戸棚から真新しい煙管と煙草を取り出して吸うか?と言わんばかりに目の前の男へ差し出した
違反申告
梅
2017/11/28 22:39
Erbaccia
そんなこったろうと思った。
内心呆れる様に上記を思い浮かべたが当然表情には出せない。
噴きかけられた噎せ返る様な煙の香りに脳がくらりと揺れた気がしたが、色覚補正のグラス越しに確と彼の圧力のある『金』を見つめ返す。
「 お言葉ですが琥虎様。
俺は今回、貴方からの命令は受けておりません。 」
知らぬ存ぜぬでは通せぬと言うのであればそれで構わない。
ギラギラと辺りに鋭い殺意が飛び交う中、
怯むことなく彼との距離を歩んで埋めると炊かれた煙の匂いの漂う顔へと面を近付けながらトン、と胸の部分を小突いてみせた。
「 俺を良いように利用したいのならばご自由に。
ご満足頂けないなら…最初も申し上げましたが、棄てて頂いて構いませんよ。
一同の武力行使でも何でも、
………俺を雇ったのは貴方様なのだから。 」
地を這うような低い声でそっと囁く。
あんたの自己責任で、とばかりに。
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2017/11/28 21:21
リシア(父親の琥虎)
「俺は飾った言葉が苦手でな、単刀直入に聞く。」
再び煙管を口にし、煙を無遠慮に彼へ吐き出す
そして、渋い表情から一変して金の瞳を鋭くして彼を威圧する様に一瞬睨んで
「何故、瑠璃をアレの所へ連れていった?お前さんが瑠璃とアレを引き合わせた事によって俺の傀儡計画に支障が出てしまったよ・・・・理由によってはただではすまさんぞ」
脅しの意味を含め、自室の周囲には既に武装した組員を潜ませてある。
最も、彼程の実力ならとっくにきづいているかもしれない。
違反申告
梅
2017/11/28 20:35
Erbaccia
「 いえ、瑠璃様の御力には…かなり驚かされました。 」
流石に今回の事は母親が絡んでいる事もあって堪えているのか、
あの独特の苦虫を噛んだ様な表情に自然と気の毒さを感じた。
目を伏せがちに、室内へと招かれるがままに入室しては彼の話に耳を傾ける事に専念する。
「 はい、何でしょう。 」
違反申告
しぉり♥⇔りぃこ
2017/11/28 18:21
リシア(父親の琥虎)
「エルバッチャか・・・・入れ」
既に先刻の騒ぎは耳に届いている。
どうせ来るだろうと見越していた為、扉の近くに腰かけていた。
上記を言いながら自ら扉を開けて彼を出迎えて
「俺の妻が随分と迷惑をかけた、よくあれの無茶ぶりを聞いてくれた・・・・修繕費は嵩む一方なんだがな」
渋い顔をしながら部屋に入ってきた彼へそう述べて、吹かしていた煙管を灰皿へ金属音と共に打ち付けて
「それで、今回の件についてお前さんから一つ聞きたいことがある」
違反申告
梅
2017/11/28 16:56
Erbaccia
「 …心配すんな。すぐ戻る。 」
2つの返事を返して部屋から出て行った。
間違いなくご立腹だろうが己が狼狽える必要性は全くない。
堂々たる足取りで彼の居る部屋まで向かえば静かに扉へ向けて声を掛けた。
「 琥虎様、俺です。入ります。 」
寧ろ、どの様な顔色になっているかを見てやりたいとばかりに心が踊っていた。
違反申告
リシア
さん
>> 遊んだ記録
ニコット諸島 住所
346994島
最新記事
出)コラボガチャ目玉・普通品 求)P代理
出)シナモぬいぐるみ抱っこⅬ 求)クロミ抱っこⅬ
出)新作黒ガチャ92弾 被り品 目玉色変え
学生時代にあこがれたPアイテム
出)黒ガチャ91弾 被り品
カテゴリ
自作小説 (76)
日記 (73)
伝言板 (55)
10代 (49)
アイテム交換 (15)
イベント (15)
きせかえアイテム (6)
グルメ (5)
ニコットガーデン (5)
占い (4)
>>カテゴリ一覧を開く
恋愛 (3)
アート/デザイン (2)
小説/詩 (2)
レジャー/旅行 (2)
マンガ (2)
人生 (2)
家庭 (2)
スロット (2)
コーデ広場 (2)
サークル (2)
プレカトゥスの天秤コラボ (1)
ゲゲゲの鬼太郎コラボ (1)
レシピ (1)
ファッション (1)
ショッピング (1)
映画 (1)
音楽 (1)
勉強 (1)
アルバイト (1)
友人 (1)
ルーレット (1)
ニコット釣り (1)
ババ抜き (1)
7ならべ (1)
今週のお題 (1)
ニコみせ (1)
月別アーカイブ
2024
2024年09月 (2)
2024年08月 (2)
2024年07月 (1)
2024年06月 (2)
2024年05月 (1)
2024年04月 (4)
2024年03月 (1)
2023
2023年04月 (1)
2023年03月 (6)
2022
2022年06月 (2)
2022年05月 (2)
2022年03月 (3)
2022年01月 (1)
2021
2021年12月 (1)
2020
2020年01月 (1)
2019
2019年03月 (1)
2018
2018年10月 (5)
2018年09月 (2)
2017
2017年12月 (2)
2017年11月 (2)
2017年10月 (5)
2017年09月 (5)
2017年08月 (3)
2017年07月 (5)
2016
2016年09月 (2)
2016年08月 (4)
2016年07月 (5)
2016年06月 (7)
2016年01月 (1)
2015
2015年07月 (6)
2015年04月 (1)
2015年03月 (4)
2015年01月 (2)
2014
2014年12月 (1)
2014年08月 (1)
2014年07月 (1)
2014年06月 (7)
2014年04月 (5)
2014年03月 (2)
2014年02月 (2)
2014年01月 (1)
2013
2013年12月 (6)
2013年11月 (4)
2013年10月 (1)
2013年09月 (2)
2013年08月 (2)
2013年07月 (3)
2013年06月 (1)
2013年05月 (4)
2013年04月 (3)
2013年03月 (8)
2013年02月 (2)
2013年01月 (3)
2012
2012年12月 (4)
2012年11月 (2)
2012年10月 (2)
2012年09月 (3)
2012年08月 (8)
2012年07月 (13)
2012年06月 (12)
2012年05月 (25)
2012年04月 (1)
2012年03月 (1)
2012年01月 (1)
2011
2011年11月 (1)
2011年10月 (4)
2011年09月 (2)
2011年08月 (1)
2011年07月 (21)
2011年06月 (23)
2011年05月 (23)
2011年04月 (23)
2011年03月 (6)
2009
2009年12月 (5)
2009年11月 (8)
「……む、エルからの通信か」
彼からの通信は計画の最終段階に入った事を示す。
精霊曰く、そのまま寝てしまっているようなので敢えて返事はしないでおこう。
内容を聞いて、自分と同じ瞳の色の宝石は何だろうと思案したが、金色もしくは黄色は種類が多すぎて絞り込めなかった。
「残念だな、エルからの初めての贈り物を受け取らずに死ぬなんて」
これで後は、明日の日が暮れた後、夜の静けさに生じて計画を終わらせるだけ。
心の底から残念に思いながら、計画の段取りを確認して。
~そして、日が暮れて夜の帳が訪れた~
「さあ……派手に逝こうか、紅」
薄い白の寝間着をきちんと整えて、片手には刀を携える。
空いている方の手を前へ突き出して謳う。
胸元を飾るルビーが、これまでにないほど強い輝きを放っていて
「世界を焼き尽くす君に願う。その灼熱の力を以て、我が生まれしこの地を余す事無く蹂躙し、我が肉親のみを残して全てを灰塵とせよ。逃げれぬように檻を編め、その力を以て枷へと繋ぎ、ゆるりと炙りて地獄を見せよ。」
自分を中心として、陽炎が揺めくほど高温の炎が吹き上がって屋敷全体へと広がっていく。
屋敷の塀からも火柱が上がり、まるで鳥籠のような形をした檻を形成して外部との干渉を灼熱で妨げる。
同時に自分を縛っていた枷も鉄格子は跡形も無く溶け落ち、自身も周りに炎を揺らめかせながら地下を出た。
奴の部屋を出て廊下に出ると、そこは阿鼻叫喚の地獄絵図。
生きながら死ぬまで身を焼かれる苦しみに悶えている組員と、炎に巻かれて音を立てながら燃える生家。
「嗚呼!これこそ私が長年すがり続けて来た計画の実現だ……漸く、漸く叶った!幾年とこの一時を待って耐え続けて来た事か!!」
思わず笑みが溢れた、残酷で心の底から愉快そうな笑みが。
ゆらりと止めていた足を、身体を動かして奴の寝室を目指す。
長年抱き続けた悲願の成就は、もう目の前だった。
Erbaccia
真夜中の閑静な工場にて、死屍累々。
此処は先程までそうではなかったが…つい今し方、こうなった。
酷く目が冴える。とても心地が良い。
久々の外と血生臭さ、踏み付ける肉塊の感触、そして終わった後の静けさに気が狂ってしまいそうなほど酔いしれていた。
「もう…いいだろ、やめろ」
そのひと言が響き、惚けていた表情は次第に落ち着きを取り戻し、そして何時もの掴みようのない顔付きへと戻る。
先程まで息ひとつとして乱れてはいなかったというのに、酷く、肩を上下に揺らして荒い呼吸を繰り返す。
この状態で連絡を飛ばすのだから、嫌な予感ばかりが頭を過ってならない。
内側の声が直ぐ近くで聞こえる気がして、石に声をかけると同時に目の前が白く濁って景色が薄らいでいく。
『予定通り片付けたぜ、お嬢。2日後………
_おれ、持って行く石は"綺麗な瞳の君"と同じ色の物にした。早く能力が見たい、楽しみだ。』
閑静だった工場に狂気染みた笑い声が木霊して、其処で意識が途切れた。
「……さようなら、エル。最後まで本当にありがとう」
彼がこの空間から完全に出て行ったことを感じると、もうこの場にいない彼に向かって言葉を投げ掛ける。
視界が滲み、涙が頬を伝う。
「エル……最低な人間でごめん。エルが私を想って交わした約束を踏みにじろうとしていて、エルが傷つくと分かっている上で更に嘘を重ねた。……でも、他に方法が無いの。私の計画は鳴神組の完全なる壊滅及び計画の阻止。だから……“鳴神家現当主である組長の血を引く唯一の実子である私も死ななければ、完全に鳴神組を消す事にはならない”。」
懺悔と言い訳のような言葉が入り交じって、掠れた声でそれを紡ぐ。
しかし、最後の発言だけはしっかりとした口調で話して。
自身の手を見つめて、キツく握り締めて呟いた。
「この計画は、私の死をもって初めて完遂するのだから」
Erbaccia
「…あァ、俺が連絡入れるまでヘマすンじゃねェぞ」
地下を抜け出す為の階段に一歩足を掛けながら顔だけ振り返って彼女の方向を見遣る。
此処に居座って7年以上も経つが、其れももうすぐ終わるのだと思うと名残惜しさもあり、そして彼女の父親にも_否、きっと此れは抱くべき感情では無いのだろう。
別れの挨拶ではなく、また逢う日までの杞憂を口にして、地上への階段を早々と駆け上っていった。
彼女を、友人を、此処から連れ出す為に。
「苦情は受け付けないと言っただろう……嗚呼、その手筈で問題ない。それではまた、計画決行の時に会おう」
いつも通りの悪人面な笑顔と揶揄。
昔から変わらない、互いのやり取り。
当たり前だったことが、この瞬間は何よりも得難く尊いものに感じられた。
Erbaccia
「…ははッ、ヘッタクソォ」
苦情を受け付けないと言った彼女に揶揄を被せ、口角を上げるとお望みの悪人面を披露する。
お互い下手糞同士、つり合って丁度いいくらいだろう。
大人しくなった内側に安堵の息を零しながら鉄格子から離れると、頃合いを見て下記を述べて。
「さて、と…"俺が関係者を潰し終えてお嬢に連絡飛ばしたら2日後、石持ってこの屋敷に集合"だな。他に要件ないなら俺は早速取り掛からせて貰うぜ、お嬢。」
「五月蝿い、悪人面。……こうか?」
初めての通信でそれか、と脳内に響いた内容に思わず呟いてしまった後に上記を述べて。
頭を打ち付けたときは突然過ぎて肩が跳ねてしまったが、見たところ振り返った彼の顔に怒りの色は見られない。
悪人面と言った後で彼に問いながら久しぶりに笑う。
「うまく笑えていなくても苦情は受け付けないからな?」
Erbaccia
「……精神力かァ、ま、何とかなるだろ」
頭の中に聞き覚えのある声音が響き、そして少し肩を落とす。どうせならお嬢の声を聞かせろよ…と。
そしてひと通り彼女の説明を聞き終えると妙な危機感に陥る。それは精神力が使用の度に削られていくという件で。
回数を弁えなければならないその面倒に他ならない制約付きの機能に気後れしながらも試してみないことには何も始まらず、此方も「おい、お嬢に通信飛ばせ」と一言掛けつつ下記を頭に浮かべて。
案の定、嬉しそうに再び騒ぎ出した己の内側に思考回路を持っていかれそうになれば、その場で背後にある鉄格子に向かってある程度の勢いを付けて後頭部を打つける。
彼女に通信を飛ばした手前、この行為と併せて怒っているよう受け取られたかもしれない、と恐る恐る背後を振り返って。
『能面女、ちゃんと顔で笑え』
「通信を飛ばすというより、宿った精霊を相手に飛ばすような感じだな。精霊を飛ばす時は石に声をかけて伝えたいことを頭の中で言う。そうすれば精霊が私の元へ飛んできて、内容を伝えて私の返事をエルへ持って行く仕組みだ。」
試しにと言わんばかりに、やってみせる。
紅に呼び掛けて、『聞こえる?』と頭の中で呟くと、それを隣にいる彼の元へ運ぶ。
きっと、頭の中に紅の声が響いているだろう。
「そして、注意事項が二つある。一つ目は互いの距離が離れすぎていると使えないこと。二つ目は、通信や返事をする際に自身の精神力を少し消費することだ。連続で使うと精神的疲労が溜まるから注意してほしい。」
Erbaccia
「……それも、そうだな」
己が警戒しているのと同様に彼女も当然この計画を狂わす因子を危惧している。
己の早計さをまさか衝動的で行き当たりばったりだった彼女に諭されてしまうとは、能力を取り戻すだけでなく成長した成果なのか、それ程に遂げたい使命なのかは定かではないが、何処かむず痒さを感じた。
生返事のような相槌を打ち、続く彼女の言葉に耳を傾ける。
事情を知らぬ者が客観的に見れば彼女の積もり積もった怒りの爆発とも取れる。
母親は彼女が組を壊滅させる様子を見て、如何に思うだろうか_
考えようが無意味な事に己の内側が妙に騒ぎ出し、巡らせていた思考は途中で止める。
彼女に背を向けて鉄格子に凭れ掛かりながら呑気な例えを口にしつつ了承しては、肝心な通信手段の方法を尋ねて。
「お袋さんに対する初めての反抗期と親孝行か……悪くねェな、いいぜ序でに受けてやるよ。あァそうだ…連絡手段は此れから石を介してだったか?俺から通信飛ばす時はどうしたらいいか教えてくれ。」
「確かに、早く持ってきて欲しいのは山々だが……もしも計画実行までに入手できた場合、持ってくるのは私が組を壊滅させる日にして欲しい。私はエルが鳴神組関係者を潰し終えた連絡を貰った二日後の夜に動き出そうと考えている。その際に渡して欲しい……万が一、奴に気取られでもしたら全てが水の泡だ、急ぎでもない私情は後回しにした方が良いだろう。」
このせいで計画が狂ってしまえば、もう組を壊滅させる機会は無くなる可能性が高い。
それに、このお願いは最後の我が儘で嘘なのだ。
彼にこれからも自分は一緒にいると思わせ、もう一つの計画を知られないようにするためについた、優しくも残酷な嘘。
「それと、大事なことを伝えそびれていたんだが……決行時は私に同行してもらいたい。エルには鳴神組壊滅の見届け人と……母さんの保護を頼みたいんだ。今回の計画の対象に母さんは含まれてない、組壊滅後は母さんを実家に戻そうと考えている。それが、私から母さんに対するせめてもの恩返しだ」
Erbaccia
「なら早めに1つでも持って来た方がいいか……何なら明日にでも石1つくらいなら持って来てやれるが、どうする?」
彼女の言い分は理解できる。だが旅に出たいというのは初耳だ。
確かに幼少より世界を己の口頭でのみしか知らなかった彼女がその意図に辿り着くのは必然的であったとも言えよう。
計画の僅かなズレすら神経質に気にしてしまう己は乾いた唇をなぞり、少しの間考えに耽る。
此方にも彼女に頼まれた最初の依頼、鳴神組と関わりのある組織を潰す件が未だ完了していないのだから直ぐには難しい。
だが友人の頼み事なのだから1分1秒でも早く届けてやるのが道理といったところだろう。
そして間も無く能力を詰め込んだ石を差し出されては取るべき行動は受け取る他なく、首元に其れを付け戻しながらぽつりと上記を提案して。
「嗚呼、言い方に語弊があったな……勿論、約束通り。エルに連れていって貰うが……ずっとエルの元で世話になるのは流石にと思っていてな。一段落したら世間を見る為に旅をするのも悪くないと思っているんだ。それに、私の能力は長期間所持した宝石でないと使えないからな。早めに持っておく事に越したことはないし、かなり協力的な宝石なら最短数日で能力を使えるようになるんだが、非協力的だと最短半年から年単位でかかる恐れがあるんだ。」
あの言い回しでは、まるで自分が彼の元を離れてしまうように聞こえても無理はない。
……恐らく、心の中では彼と離れたくない思いが強くあるのだろう。
私のもう一つの計画を、考えを阻止して欲しいという願望が先程の発言に現れたのだろうか。
「あ、揃えるのは一つで良いからな。沢山用意されてもその代金を踏み倒す可能性がある。私にピッタリな石を選んできてくれることを期待しているよ」
少し冗談っぽく笑いながら上記を告げる。
ダイヤモンドへ力を込め終わった為、彼にネックレスを差し出して。
Erbaccia
「あんたは俺が連れて行って良いンだろ?」
彼女の掌に込められた力から確かに彼女の能力が復活したことを悟る。
己の能力と言えば攻撃性のものというよりかは、テクニック性のある防護に長けたものだ。彼女が力を与えている能力が己に必要かと問われれば悩ましい。
だが、つい前にその力を発揮した石を思えば持っていて損はない物だとわかる。元より彼女からの貰い物。
蔑ろにする理由は別段ない訳で。
「まァどうしても必要ってならコッチで揃えとくが…」
今度は此方がポカン…というよりかは少し怪訝そうに、彼女が約束と迄は言い切れないが、この使命を遂げた後に1人何処かへ行ってしまうような、己の提案を忘れてしまったかのような発言に僅かながら…寂寥感漂う表情を浮かべては、彼女の依頼を呑んで。
「少し無茶と言えば無茶だからな、聞くだけでも構わない」
手渡されたダイヤモンドを両手で包み込みながらそう答えつつ、力を注ぎこむ。
勿論、彼をちゃんと守った事への賞賛とお礼も添えて。
注ぎ込みながらお願いについて口にする。
「宝石を一つ、ルース(裸石)の状態で用意して欲しい。ルビー以外ならどんな宝石でも質でも構わない。此処が壊滅した後は私は居場所が無いからな、何処かへ安寧の地を探しに行こうというのに紅だけでは正直心許無い。勿論購入時に発生した代金は用意出来次第払うと約束する。」
これは最後の我が儘。
もしも本当に用意してくれるならば、その宝石を自分がこの目で見る事は無い。
しかし、万が一私のもう一つの計画に勘付かれてしまわない為の保険としてこの話は必要だ。
Erbaccia
「あァ、ちょっと待てよ…」
此処に潜り込む事が訳ない潜入である事に間違いは無いが、此れでもリスクは避けたい方の人間である。
彼女の提案はお互いの使命を遂げる為に十分理にかなっている。
留め金に手を伸ばし、首から下げている物を外すと其れを彼女に手渡して。
其れから調子を取り戻したようにグッと口角を上げていつもの表情を浮かべると、彼女の言わんとしている事に耳を傾けて。
「また頼み事か?仕方ねェな、聞くだけ聴いてやるよ。」
「嗚呼、頼み事が終わり次第連絡を入れてくれ。連絡は今後、奴に怪しまれない様に宝石を介して行う。ダイヤモンドに力を注ぎ込むから近くに来てくれ」
鉄格子に頭をすり付けていたが、どうしたのだろうかと心配しつつ、上記を述べて。
ダイヤモンドに残っている力を見る限り、もう能力を発動する力すら残っていないようだった。
「後、最後の頼み事があるのだが、引き受けてくれるか?」
そう、これが本当に彼に対する最後の頼み事だ。
最後ぐらいちょっと我が儘を言うぐらい、許されるだろうか
Erbaccia
「…そう、か、わかった。」
何を緊張しているのだろうか。
ドクドクと跳ね上がった脈拍が鼓膜までも震わせて煩く聞こえてしまう。
彼女の口が開くまでの時間がずっと長いように思えて、酷く苦痛だった。
ただその答えが返ってきたとき、全身の力が抜けたような気がして、思わず鉄格子に額を軽く擦り付けてしまう。
冷え切った鉄の棒が、今だけは妙に心地良い。
「それで…後は特に要件無しか?残った頼み事はコッチで勝手におっ始めていいンだろ?」
頭に浮かんだ安堵という文字を搔き消しながらも顔を上げると、此方を不思議そうな目で見てくる彼女に向け上記を続けて。
「それだけで良いのか?何て無欲な……別に悪くても気にしない。悪いか良いかではなく、私はその人物がどんな人間かで好きか嫌いかを決めるからな。何より、私自身も悪い奴だ。」
何故こんなことを聞くのかは分からなかったが、真剣そうな彼の顔を見て、真面目に答えた。
私は多くの人を傷つけ殺した、今更悪人を忌み嫌う理由もない。
「もう一つの方については……別に野望のために他人が私を利用しようとも構わないよ。でも、私の自己と自由を縛られるなら話は別だ。それさえなければ別に自己中心的な者に利用されようと構わないさ」
私は将来夢見ているモノも、歩みたいと思うべき道も何も持たない存在だ。
寧ろ使ってくれるなら、存在意義があるということ。
何処か様子のおかしい彼を見て、少し不思議そうになりながらも上記を答えて。
Erbaccia
「こっちはもう仕掛ける準備は万端だぜ」
念入りに、念密に仕組んだこの計画。そう簡単に暴かれては堪らない。あとは予定通り、潰して、お終い。
クッと上げた口角で悪戯っぽさを超えた悪人面を浮かべて笑っていたのだが、続いた彼女の言葉に表情がやや固まり、バツ悪そうに、何処か気恥ずかしげに下記を続ける。
まさかこの言葉が彼女の罪悪感を少しは払拭するものだとは思ってもみなかった。
「いらねェよ、俺が好きでやってンだから……でも、よ。一つだけ、聞かせてほしい。」
やや動転した気を落ち着かせる為に一度肺に詰まった蟠りを換気させ、新しい、ただ少し篭ったような此処の空気を入れ込む。
打って変わって真面目な話、真剣な表情を浮かべて彼女に尋ねて。
「お嬢は、悪い奴は嫌いか?親父さんみたいに自分を利用して、己の野望を叶えようとする自己中心的な奴は…お嬢にとって相容れない存在なのか?」
「嗚呼、鳴神琥珀は完全に復活した。これもエルのお蔭だ……能力もメモ取り戻した今、私の状態はほぼ万全と言っていい。さて、其方の首尾はどうだ?」
指を鳴らして、カモフラージュする為に残す箇所以外、全身の包帯を着物(寝間着)に火をつけぬまま燃やして塵としながら、不敵に笑って彼へ問いかける。
彼の姿を見ると心から安心する、紅は自分が成長したと言っていたが、自分だけではその成長は成し得なかっただろう。
彼が居たからこそ、今ここに自分は立っているのだ。
「にしても、思い返すとエルには迷惑しかかけていないな。これでお返しに何もしないと言うのもだ、この一件が無事に片付いた暁には、何か私からも一つご褒美の名目で何かしよう。と言っても、組を潰すのだから、若頭ではなくただの小娘に成り下がってしまう上に個人的な貯金もないから、そんなに大きなことはしてやれないがな」
ただ彼の喜ぶ顔が見たくて、罪悪感を隠して二つ目の嘘を重ねた。
Erbaccia
「…俺は、何もしてねェよ。」
流石に自身の能力といったところか、自分の目を誰が隠し持つか把握できた時点で彼女の回帰が近いことを悟った。
はじめ背後に佇む石ころに彼女の状態と復帰の条件を聞いた時はどうなる事やらと解決の手立てが浮かばず時間ばかりが過ぎていたが、どうやら杞憂だったようだ。
彼女自身の問題を自分で解決する、そんな力を彼女は持ち合わせている。
己からしてみれば羨ましい程のその力が、彼女を元の姿に戻したのである。
石は己のお陰だと言うが、此方といえば少しも同意できてはいない。
だが思った以上に嬉々として現状を受け入れている己がいた。そう、心の底からだ。
「おう、お嬢…戻ったかよ。」
束の間の眩い光と幻想的な焔が彼女を抱き、そして元の闇へと戻る一連の光景を目の当たりにし、胸が踊る。
鉄格子越しの眼前に立つ彼女の久し振りに見た眼は灯の少ないこの闇の中でも美しく見えた。
そう…もう少し、あと少しで彼女を_
その一色が己の頭を占めていた。
「能力は恐らく使える。目の方は……多分紅が預かってくれているんだろう。私の小さな我が儘とトラウマのせいで、多くの苦労をかけてしまったようだ。紅が私を認めてくれればきっと返してくれるだろうさ」
その言葉を聞いた紅が背後で泣きそうな顔をしていることなど知る由もなく。
琥珀はペンダントを首にかけ、深呼吸をして心を落ち着かせる。
そして、目を閉じて能力発動のための口上を謳う。
「世界を包み照らす君に願う。我が身の穢れを浄化させ、我が身を守る柔らかな羽衣と成れ」
暗い牢の中に、温かな炎が現れて琥珀を包み込む。
炎に包まれた箇所の怪我は癒やされ、凍てついた手足は瞬く間に血色を取り戻していく。
胸元のルビーは熱を持ち、強く光輝いて部屋を照らして。
紅は琥珀へ歩み寄り、彼女の肩に手を置いて、彼女はそれに応えるように手を重ねる。
『……主殿は、本当に成長なされた。もう心配は要らないようですね……勝手に眼を奪ってしまい申し訳ありませんでした。此方はお返し致しましょう、これからは貴女様の思うがままに人生を謳歌されます様に』
「私こそすまないな、ずっと君は私を守ってくれていたというのに……これからはもう迷わないよ。」
『嗚呼、本当に嬉しい限りです。……エルバッチャ殿、全ては貴方のお蔭と言っても良い。これからも私に代わって主殿をお願い致します。』
初めて両者はマトモに会話を行ったが、それは数分にも満たぬ僅かな時間。
紅が最後の言葉を遺して消えるのと同時に、琥珀は眼を開いた。
金色の眼が、目の前にいる大切な友人を捉える。
「エル」
久しぶりに見た彼の名を呼んで、確かな足取りで彼の目の前に行く。
Erbaccia
「殻、ねェ…その様子じゃ、能力使える段階まで元通りって感じか。」
彼女の発言には少し腑に落ちない、いや、単純に言葉足らずで理解出来ない事が多くあった。
状況的には前回ここに来た時と何も変わってはいない。
だが、彼女の中では確かな変化があった。
今はそう解釈しておくことにしよう。
「目は…まだ見えてねェみたいだな。」
手探りで何度か刀を掴み損ねる彼女の瞳の回復は未だ成ってはいない。
その様子では背後にいる物の存在の声も届いてはいないのだろう。
上記を彼女に、そして背後の奴に向け、ひと言ぽつり呟いて
「ありがとう。手間をかけてしまったな、エル。随分とタイミングが良いな……先程漸く、長年自身を覆い続けてきた殻を砕いたところだ。」
取り戻した石の加護のお蔭だろう、傷だらけの身体がすんなりと動き、痛みはあれど立ち上がり、まだ見えぬ目で愛刀を探しだし、手に取って重みを感じた。
「さて、この身体では何かと不便だ。……久しぶりに能力を使うとするか。」
今の自分なら問題なく使用できる、と思いながらも若干の不安を胸に抱えて。
この時、琥珀には見えていないが、彼女の背後で静かに紅が現れ、心配そうに琥珀を見つめていた。(エルにしか見えない)
Erbaccia
踏み入った先、予想通り彼女の父親の部屋には主の姿が見受けられなかった。
嗅ぎ慣れた僅かに残る彼好みの刻みの香りが、鼻先を掠めて悪戯心を揺さぶる。
だがその悪戯心というのは純粋で健気な子供のようなものとは訳が違う。
これから彼を、彼の野望を、人生を、己が直接手を下すのでは無く、間接的に潰してやろうというのだ。
彼女にとって彼は凡ゆる負の感情を抱かされた存在に違いない。だが己にとってはどうだ?…
「…邪魔するぞ、お嬢。」
掛け軸の背面、以前此処に入った時は首から下げたこの石がなければ負傷していたところだったが、2度も同じ手を食うつもりはない。
前回ここを去る時、お得意の手癖の悪さでこの絡繰を弄っておいた。
故に、己の手順に従い地下への扉を開く事で絡繰が動き出す事なく先に進むことが可能となった。
「愛刀…だったか、持ってきてやったぜ。」
相変わらず地上で開けた扉から降り注ぐ僅かな光しか灯として役立つものが無いこの空間で、啜り鳴き声の消えた現在、此処は誰もいないのではないかと誤認してしまうほどに閑静な場所となっていた。
だがその先、鉄格子の奥には彼女がいる筈。
刀の鞘を握り、柄の方を彼女に向けて鉄格子の奥へと差し出し。
「ふむ、これが私の心の中か」
精神統一をして意識が辿り着いた先は、自分の心の奥底。
そこは暗い暗い檻の中、幼い自分が泣きながら閉じ込められていて、その周囲は鋭利な色とりどりの宝石の結晶達が守るように存在しているだけの世界。
「相変わらずのようだな、“昔の私”」
『貴女だってそうでしょ、“今の私”。とうとう私が邪魔になって消しに来たの?』
同じ声が静寂の中に響いて溶けていく。
過去の私の言葉で周りの宝石達が殺気立って攻撃を仕掛けてきた。
それを無言で受けながら、一歩ずつ進んで
「違う。私は“過去の私”をありのまま受け入れに来ただけだ。……もう、目を背けるのも逃げるのも、終わりにする」
『嘘。どうせまた逃げて、閉じ込めたまま貴女だけ先に進む気なんだ!』
全身に攻撃を受けて、例え意識だけと言えど痛みがある。
それにすら構わず、檻の前に着くと格子へ手をかけて
「……今まで、本当に悪かった。許せないならそれで構わない、幾ら傷つけてくれても構わない。でも、どうか私と共に歩んで欲しい。“過去の私”無くして“今の私”は未来へ進めない。」
『……それは、彼の影響なの?“今の私”。誰かも分からない相手を信用するなんて、見境無しね』
「嗚呼、彼のお陰だ。……彼の素性なんてどうでもいい、彼は私達を見つけて真っ直ぐ向き合ってくれた。私達はやっと、安心して自分をさらけ出して過ごせる相手を見つけたんだ。だから……」
格子にかけた手に力を込めて叫ぶ。
「いじけてないで、さっさと出て一緒に来い!」
甲高い音を立てて、格子が砕け散り宝石の結晶も攻撃を止め、世界が一変する。
そこは、美しい宝石の結晶達に囲まれた明るくて美しい洞窟の中。
『……一度だけ、信じてあげる。』
「嗚呼、もう逃げたりしないさ」
意識が徐々に覚醒していく。
二人で手を取り合ったのを最後に、琥珀は現実に戻った。
Erbaccia
「刀ねェ…こんな近距離モンより、ドンパチやった方が早ェと思うけど。ま、お嬢の場合能力が遠距離だし、ンなもんか。」
彼女からの頼まれごとに対する計画は己的に上々。あとは実行に移すまでときたが、その前にもう一つの頼まれごとを先に済ませる為に今一度此処に訪れていた。
とはいえ己は仮にも彼女の父親の用心棒なのだから、この屋敷自体にはほぼ毎日のように通い詰めていたのだが。
彼女の部屋に置いてあった刀を手に例の場所へと迎えば、下記を呟いて扉に手を掛ける。
前回の事もあり、能力を意識化させて警戒しながら中へと踏み入り。
「さァて、あのオッサンが出張な日を狙って来た訳だが…流石にいねェよな。」
「全部終わってからのご褒美、か。……すまないな、エル。」
今度は足音が止まることなく遠ざかっていった。
完全な静寂に包まれてから、上記の呟きと謝罪を口にした。
「その約束は、叶えられそうにない」
生まれて初めて出来た友人に、自分は初めて大きな嘘をついた。
……しかし、罪悪感に浸っている暇はない。
「さあ、始めようか」
紅を様子見に来る奴から見えないであろう死角に忍ばせ、静かに目を閉じて精神を統一して。
Erbaccia
「わァッたよ…ご褒美のハグだ。お嬢も達成感のあまりご褒美蔑ろは無しだぜ…?」
端から地道に潰していくのは隠密的だが時間がかかり過ぎる。1度に潰すのが1番だが…大々的に行うのも嗅ぎ付かれるのがオチだ。何処に陽動を置いていくか…最中に今一度此処に届け物をするのかも至難ではあるが。
己に出来ない事ではない。
吊り上げた口角のまま軽口に上記を告げると次こそ振り返らずこの地下から出て行く。
名残惜しげに出て行けば折角の意気付いた彼女の心を折るだけだ。
ただ表は我らが頭の巣窟、のうのうと顔を出して鉢合わせるのはあまりにも危険過ぎると考察しては先ほどと打って変わって至って真剣そうな顔付きと慎重な足取りで部屋を出て行き。
「…さッさとズラかるのが1番だな。」
「嗚呼、最後にもう一つ。頃合いを見て途中報告に来てくれ。ついでに私の愛刀を取ってきて欲しい。隠すのはうまくやるさ」
去ろうとする彼の背中である方に向かって、上記を投げ掛ける。
撫でられた頭に触れ、嬉しさに頬を緩めた。
「後、抱き締めるのは全部終わってからと言ったのを忘れるなよ?忘れたら拗ねて口を聞かなくるぞ」
軽く手を振りながら、冗談を言って
Erbaccia
「ハグは…全部終わってから、だな。」
こんな思春期か愛着形成かで甘える彼女の心が壊れきっているとはとても思えない。
伸ばした掌を彼女の頭髪に乗せる。
今回は乗せるだけでなく、指をさらさらな毛髪に絡めて梳くように撫でてやり。
思う存分撫でてから名残惜しげに手を引っ込めると、彼女に背を向けてから、一度だけ振り返り下記を伝えるとこの地下を後にしようとして。
「お嬢のやりたいようにやりな、俺は頼まれ事済ませてイイ子に待っててやるからよ。」
「ありがとう。そうか、ダイヤモンドならエルに譲渡した時点で私との繋がりはほとんどないからな。私が能力を使えない状態でも行動することが出来たんだろう」
礼を言いながら、ペンダントを握り締めた。
仄かな熱が伝わってきて、ルビーが微かに点滅する。
「さて、名残惜しいがそろそろ此処を去るべきだ。何もなかった様に普段通り振る舞ってくれ、奴に勘づかれては元も子も無いからな。」
そして、少し控えめに
「その、行く前に頭を撫でるか、抱き締めてはくれないだろうか……?勿論嫌ならしなくても良い、ただの我が儘に過ぎないからな」
上記を続けた
Erbaccia
「お嬢に何かしら考えがあンのなら、任せるぜ。」
彼女の様子からして、心配は無さそうだ。
彼女はきっと能力と向き合い、互いを共有する事が可能だ。
ならば己が躊躇う必要も渋る必要もない。
「此処を見つける前、親父さんに渡された。此処までの道のりはお嬢がくれた石が案内してくれたぜ。」
此処までの経緯を説明しながらポケットから石を取り出し、彼女に手渡し。
「これはまた、随分と痛いところを突いてくるな。しかし、私はエルが関係を壊し回っている間は、何があっても此処から出ない。眼と能力に関しては……使えるようになる為に必要なことは、何となく分かっている。」
凍えきった肢体を何とか動かし、起き上がった。
そして、エルの声がする方に向かって手を差し出して
「その為に、紅を私の元に戻してくれないだろうか。勿論先走った行動はしないと誓う。取り戻す上で紅が側に居ることが絶対条件だと、私は考えているんだ。私が起きたときには既に無くてな……恐らく奴が持っているはずなんだが」
能力を取り戻すために必要なこと。
それは、過去の自分と向き合い今まで被っていて今回の件で更に分厚くなってしまった心の殻を砕くことだ。
心の殻を砕いた上で、もう一度彼等の心に耳を傾け対話を試みる。
Erbaccia
「仲違いだろうが、末代まで処断だろうが…俺に任せな。」
彼女の頼み事は今迄やってきた事と大差変わりはない。
懐柔もひとつの手だが、物理的に壊すか消すかした方が手っ取り早いし禍根も残らない。
彼女がそれを許すならば鼠一匹取り残さずに食い殺そう。
ただまだ不安の種は幾つかある。
もう一度鉄格子に手を掛けると、彼女に揶揄も入れて尋ねて。
「だがお嬢はどうするつもりだ?お姫様みたいに囚われた挙句…能力、まだ戻ってねェんだろ?」
「……力業になってしまうが、勝算はあるにはある。しかき、大元を絶つ前にやらなければならないことがある。本来なら私がやるべき事なのだが……エルの言う通り、現状動ける状態ではない。一つだけ頼みたい事がある」
紫陽花について知っているなら話が早い。
それに、これから頼むことは彼の方が向いている。
「鳴神組と懇意にしている組織や人物との繋がりを完全に壊して欲しい。この組が無くなった後に、同じ事を繰り返す者が現れないようにな。……後の事は、私がきちんとけじめをつける。やっと、決心がついたんだ」
長年、奴を殺すことに踏み切れなかった。
この気持ちが鈍る前に、殺すしかない。
Erbaccia
「…紫陽花を手駒かァ、そりゃ困るな。」
腕組みをしながら片手を顎下に当てて表情を硬くする。視線が伏し目がちに彷徨った。
まさかそんな大層な計画を立てていたとは驚きだ。
実際此処に初めて来た時からこの組みが『紫陽花』と協力関係であるという情報は既にあったが、長く泳がせてみればまさかこんな情報まで得られるとは、正直一石二鳥。
彼女にとってはその『紫陽花』の餓鬼どもの未来を汲んでの発言なのだろうが、己としても其奴らが戦闘兵器に生まれ変わり『紫丁香花』に抵抗する力を持たれては困る。
此処でその計画を手折るという行為は彼女が手を出さずとも遅かれ早かれ必然的にされる事であろう。
勿論、己の手によってだが。
火種は早いうちから消すのが得策。腕組みを解けば視線を戻し、彼女からその許しが得られるというのであれば、直ぐにでも行動に移すつもりでいて。
「お嬢は優しい奴だな………俺に何か出来る事は無いか?こんな状態だ、何か勝算やら作戦あっての発言じゃねェだろ。」
「それは、紫陽花と呼ばれる組織に属している能力を持った子供達を数人選抜し、私のような英才教育を施して傀儡にし、能力者による特殊な傀儡部隊を作ることだ。その目的は裏社会全てを支配し、組を未来永劫存続させるためだと奴は言っていた」
あの時の得意気な奴の顔を思いだし、手に力が入る。
怒気を含んだ声で、続けた
「私はこの計画が許せなかった。組に関係がある私だけを利用して済ませるならまだ良い。だが、何の罪もない無関係な明るい未来のある子供達のこれから歩んでいく人生を奪う事が許されてなるものではない。……これで、今まで留まっていた奴への殺意が限界まで募った。まあ、殺そうと強く決心した極めつけは、エルを用心棒として雇ったときだがな」
私は普通の人生を歩めなかったし、きっとこれからも歩めない。
こんな思いを、他の子供達にしてほしくないのだ。
Erbaccia
「…計画?」
どのくらいの間此処に閉じ込められていたのだろうか。まるで氷のように芯から冷え切った彼女の手が、事の残忍さを物語っている気がした。
彼女の己に対する本心にひと段落がつき、顔つきが変わる。
見えはしないが1度頷きを入れ、長らく気になっていた彼女の使命を聞くと、同時にあらゆる疑問が沸き起こる。
だがそれを今口にするのは早計。
先ずは彼女の育ったこの地を、仮にも血の繋がっているであろう関係を断ち切ろうとする原因となったその計画について、詳細を聞き出すべく単語のみを口にする。
頭に乗せられた手に、嬉しそうな顔をして頭をすりすりと擦り付けた。
包帯まみれの手で、彼の腕にソッと触れる。
いつも自分に元気と勇気をくれた温かさが、冷えて凍えた手にじんわりと染み渡る。
「本当に、エルがいてくれたから……私は今まで奴の仕打ちに堪える事が出来た。でも、やっぱり過去の事を言わないのが段々と後ろめたくなって、エルに対しても感情を表に出す事が鈍ってしまった。……何より、今までされてきた事が事なだけに、自分がこんなに幸せな思いをして許されるのかと考えてしまってな。もっと、単純に考えて沢山笑って、エルに甘えれば良かったよ」
叶うなら今すぐいつものように彼へ抱き着きたい。
彼が甘やかしてくれる時ほど、幸せを感じた時間はなかった。
……さて、彼に対する思いは告げた。
次に告げなければならないのは、私の成し遂げたい事だ。
「ここまでは私のエルに対する思いと過去の話だ。さっき聞かれた事への本題に入ろう。私がこんな仕打ちに堪えてまで成し遂げたいこと……それは、ある計画の阻止と奴を殺すことだ。実質、この鳴神組を壊滅させたいと言っても良い。」
真剣な口調で、彼に長年持ち続けてきた目的を語りだした。
Erbaccia
「分かってる…いや、分かってるつもりだった。ただお嬢の言うように、頭ン中のどっかであの出逢いが作りモンだったンじゃねェかって考えてた時もあった。」
つい昨日の事だ、そんな馬鹿らしい考えが浮かんでしまったのは。胸の内で散り散りに渦巻いていた焦れったい気持ちが集まって、いつの間にか彼女を疑っていた。
だがあの場所で出逢い己と彼女と秘密を交わした時、彼女の能力が開花した時、己が用心棒を申し出た事を伝えた時、それら全てで見せた感情が偽物だなどと、とてもじゃないが言い切れない。
漸く鉄格子に絡んでいた指は緩み、格子の隙間から手を伸ばして彼女の頭の上に置く事が出来た。
正直悔しい。彼女を柄では無いが救い出すか安心させるつもりだったというのに、安堵を抱かされたのは寧ろこちらの方だ。
「でもな、今迄をよくよく思い返してみりゃァ…お嬢が俺に向けてた感情に偽りなんざ無ェって、改めて確信出来ンだ。」
「そうだ。エルはあの時の私にとっては想定していなかった出会いであり、同時に希望とも取れた。……あの頃、私は奴から“何があっても本性を見せず、笑顔を絶やすな”と命じられていてな。当時は会った全ての人間に対して、そのように振る舞ってきた。正直に言うと、エルを見たときにもそうやって対応しようとした」
此処まで来てまた、軽蔑されるかもしれないと考えてしまった。
自分が今まで向けた感情すべてを偽物と思われたらと考えると、堪えられない。
包帯まみれの手を、思わずキツく握り締めた。
「でも……いざ私が口にしたのは、自己を持ってから初めての偽りない自分自身の言葉と、心からの笑顔だった。エルだけは、他の人間と違って“自分をさらけ出していい存在”だと感じられたんだ。実際にエルは私に世界が広い事を教えてくれて、感情の色が無くなりかけていた私の壊れかけた心に再び火をつけてくれた。あの日出会ったお陰で、私は確かにエルの存在に救われたんだ……どうか、今まで私がエルに向けた感情を嘘であるとだけは思わないで欲しい」
あの時の事を思い出して、少し微笑みながら話した。
ずっと寒かった自分の心が初めて温められたあの時を。
最後の言葉だけは、弱々しい泣きそうな声になってしまったが。
Erbaccia
「……そうか。」
この手の話にあれこれ口に出すのは不敬だ。
彼女の望んだ通り嫌煙せず憐れむでもなく、有りのままを受け入れる為に、話にひと段落が付くまで黙って耳を傾けた。
彼女は耐え難い苦痛の中で争う事すら不毛に思い、流れるように流れた、ただそれだけの事。
だがそれは諦念した訳ではない。
あの時、抽象的ではあるが石を通して伝えられた彼女の使命が偽りでないのなら、流れ乍らにして彼女は1本の藁、捨て切れぬ理想と希望という名の縋るものを虎視眈々と待っていたに違いないのだ。
相槌の代わりに指先で軽く鉄格子を2、3度突いた。
静かな地下世界に小さな音がやけに響いて聞こえる。
「そんな中、俺が此処に飛び入ったって事か。」
「私はエルも知っての通り、この家の次期組長だ。この家系には代々受け継いで来た幾つものしきたりがあり、そのうちの一つに“跡継ぎは男女問わず、必ず第一子とする”というのがある。だから、奴は女に生まれた私を完璧な組長へ育て上げるための“英才教育”を始めた。」
ここで、また深呼吸をした。
自分の過去を語ることが、此処までドキドキするものだとは思わなかった。
「生まれて数年の私を此処に幽閉し、逆らえば折檻や暴力が加えられ、罵倒されることも日常で、奴以外の人間を知らない私は、この世の人間全てがあの様な人物なのだと思い込み、やがて逆らわずに従った方が楽だと知り、生き残るために奴の望むままに動いた。……今思えば、心が壊れかけていたのだろうな」
話している間も無意識に指先が震え、呼吸が乱れそうになるが、何とか耐えて言い切り、最後の一言は自嘲気味に笑った。
Erbaccia
「辛いなら無理に話さなくても良い…とは言ってやれねェけど、お嬢のペースで構わねェよ。俺はとっくの昔から聞く準備は出来てんだ。」
彼女の感情表出が鈍り始めた頃から何かしらあるのだとは気付いていた。
"友人"として出来て当たり前な基準など知りはしないが、彼女を此方側に連れて行く過程でその原因をいつかは把握しておかなければならないという義務感を抱いて今日まで過ごしていたのだから、恐らく彼女の抱いている心配事は己にとって凡そ杞憂でしかない。
自身もその場にしゃがみ込み、然し彼女の体調にも配慮するつもりでこの薄暗い空間で彼女から目は話さずにいて。
「ありがとう、エル」
見捨てない、一緒に居る……その言葉だけで、大半の不安は払拭され、自身の過去を言う勇気を貰った。
深呼吸してから、伸ばしていた手を降ろして姿勢を楽にし、見えない目で虚空を見つめながら話し出した。
もう恐怖で怯えることなく、冷静に話すことが出来るだろう。
「私の目的を語る為には、まず私の過去を語る必要がある。聞き苦しいところもあるかもしれないが、どうか聞いて受け止めて欲しい。」
Erbaccia
「"俺自身ろくな人間じゃねェ"ってさっき言ったろ。今更見捨てるも何もねェさ。」
本当に今更な事を言うのだなと呆れた表情を浮かべてみるが、当然目の見えない彼女には伝わっていないだろう。
腹を割って語っていないのはお互い様。
今までお互いに尋ねなかったし、気になるような機会も多くは無かった。
ある意味このタイミングがベストと言っても過言ではないのだろう。そういった点ではこの状況に感謝すべきなのかもしれない。
「だが俺はあんまり気が長い方じゃねェ。お嬢が何を語ろうが何をこれからしでかそうが構わねェし、一緒に居てやるから…あんま待たせんなよ。」
「私の、やりたい……事」
彼に告げるべきだろうかと迷う。
何度も逃げ出したいと思っても踏み留まることが出来たほど、自分にとって重要なその目的。
しかし、話すには今まで彼に言っていなかった己の暗い過去を彼に打ち明けなければならない。
あんな自分を、彼は受け入れてくれるだろうか。
だから思わず聞いてしまった。
「エルは、本当は私がどんな人間でも……どれだけ世間一般で言う非道なことをしようとしていても……見捨てずに、一緒に居てくれるのか?」
Erbaccia
「……お嬢。お嬢は何がしたいンだ…こんな思いまでして、やり遂げたい事って何なンだ?」
彼女が手を伸ばしているというのに、其の手を取れない己が此処にいた。手どころか、微動だも出来ず、ただ、見ているだけ。
彼女の手を取り、此処から救い出す事なんて己からしてみれば容易いこと。然し其れが出来ないのは彼女自身に問題があるからだ。
彼女は未だ己の手を取ってはくれない。苦しんでいるのにも関わらず、能力開花したあの日以降、己に救いを求めようとはしてこない。
彼女を支えるよう頼まれて、間接的に支える行為がこの見守りだというのなら己はとっととこの座を降りてしまいたい。
それ程に、己が体験するよりも他人が苦しんでいるのを側で眺めていることしかできない無力さの方が余程辛いのだ。
「俺自身ろくな人間じゃねェ…けど友人にくらいは心配する。なァ、俺が其れを手伝っちゃ駄目なのか?」
「エル……?エルなの??」
聞き慣れた彼の声がした方へ、問い掛けながら鈍い痛みに耐えながら手を伸ばす。
あと数センチで鉄格子に届きそうだったが、重い枷と鎖が重症の身体を動かすことを不可能にしていて。
「つっ、怖いの……昔を思い出して、また戻ってしまいそうで。あの頃の私がずっと耳元で囁きかけているようで……」
怯えて身を震わせ、また涙を流しながらそう答える。
Erbaccia
「……何が悲しくてそんなに泣いてんだ、」
辿り着いたその場所に、やはり彼女はいた。
ひんやりという言葉では少し足りないくらいの寒さと薄明かりすら存在しないないこの閉鎖空間で、彼女は涙を流し、床を濡らしている。
この場所には見覚えがあった。
昨日"紅蓮"が見せた記憶の中、幼少期の彼女は今と同じように此処で閉じ込められていたのだ。
己と彼女を隔てる鉄格子に指を絡めながら努めて柔らかく低い声で彼女に呼び掛けて。
「なァ、お嬢。」
怯えて泣いていると、物音がした。
階段の方から微かな灯りが漏れだしていた。
「誰か、いるの……?」
弱々しい声で、暗がりに声をかけた。
少し身動きしたときに、足につけられた枷と鉄球がジャラリと重い音を立てた。
Erbaccia
「こういうのだったら得意なんだけどなァ…っと、よし。」
剥き出しの扉にほくそ笑み(悪人面)を浮かべながらアウターのポケットから一本の細い針を取り出し、南京錠の鍵穴に差し込む。
此方の道で生きて10年以上、当然ながらこの手の芸当はものの数秒で解決できる。
小さく音を立てて開いた錠を人目につかない場所に隠し、扉を開けると迷う事なく奥へと進んでいき。
『当然です。私は元主である琥珀から貴方を守るよう命じられた存在なのですから』
称賛は素直に嬉しく感じられ、周囲を警戒しながら掛け軸の前を漂う。
捲られたそこには壁ではなく、鋼鉄製の南京錠がかかった扉が一つ
Erbaccia
「…なッ、」
捲った瞬間に小さな風が此処まで届いた気がして振り返る。
乾いた軽い音を立てて落ちる矢に思わず血の気が引く。
己に怪我がなかったのは恐らくこの石のおかげであろう。
此処では十分に警戒しているつもりではあったが、やはり己は不意打ちには甘い。
矢を拾って先を見ると何かが塗られているようだが…まぁ毒は己には無効な為、この鋭利で危険な鏃を飛んできたであろう方向の矢の射出口に無理矢理差し込んで機能を一時的に停止させる。
ちらりと光を見ながら賞賛の言葉を掛けては、再びその掛け軸を捲って本来壁があるであろう場所を見て。
「助かったぜ石ころ、あんたやるなァ」
『主、危険です!』
彼が掛け軸を捲った際、その死角から何かが無音で放たれた為、障壁を張った。
何回か弾いた物が畳に転がった。
それは毒が仕込まれた矢だった
『不要かとは思いましたが、これが私の役割ですので』
何処か誇らしげにフヨフヨと彼の頬をつつく。
Erbaccia
「あのオッサンは…いないのか。ん?痛てッ、おいッ、急かすなよッ」
中からの返答は無く、だが此処でお行儀良く引き返すほど上品な育ちはしていない為、躊躇うことなく足を踏み入れては光の指す方へと付いて行き。
怪しげな場所を探して行くと不意にその光から頬を抓られ、引っ張られた目先にある掛け軸を頬をさすりながら見つめる。
あんな自信満々に見つけられる訳がないと言われたのだからまさかこんな場所に…いやいや。
ぺらりと掛け軸を捲りつつその先にあるものへ目をやり。
「ははッ…いやコレは幾ら何でもベタ過ぎるだろ。オッサンお茶目か…」
『此処です。此処から微かに気配がします。』
和室にある床の間の所を示すように激しく点滅する。
かなり弱まっているのを感じ取れる。
『急いで、急いで!』
僅に実体を持って主の頬を引っ張ると、何とか掛け軸の前へ顔を向けさせる。
Erbaccia
「おッ、マジでか…ッ」
己の言葉に反応するかのように発光したその石に思わず声が興奮気味に上擦る。
飛んでいく光を追い掛けるように向かうと、辿り着いたその先の場所に何となく合点が行く。
確かに此処であれば調べ難いし、彼の目も届きやすい。
「失礼致します…」
こういう時でさえも礼節を持ってしまう己を内心で苦笑しながら、然し遠慮は持たずに入室して。
『それを現在の主である貴方が望むなら』
弱い力を振り絞り、淡く光る小さな光の球となる。
フヨフヨと頼りなさげに僅に残ったリシアとの繋がりを探して飛び始めた。
最終的についた場所は、よく主が来る組長とやらの部屋だった
Erbaccia
「ん、何か温い…?コレ、そうか…お嬢に貰ったやつ。」
一向に反応する気配を見せない石に諦め掛けていた時、胸元から熱源を感じ其方へと視線を移すと、其処には己が律儀に着けているもう一つの石があり。
反応を見せない石はポケットに入れ、熱を発する石を不思議そうに見て。
「こっちはお嬢の手元に無くても反応できンのな…おい、あんたお嬢探せるか?」
現在の自分の持ち主は、紅に話しかけている。
しかし、彼は元主に依存した存在であるため、声を発する事も出来ない。
ならば、自分がやるしかないだろう。
『主の元に行くなら、案内する』
まだ年若い自分は彼に言葉を発せられず見せられる姿も持っていない。
だから、熱を発する事で気づかせることにした。
『気づいて、気づいて』
彼の胸元で点滅と僅かな発熱を繰り返す。
Erbaccia
「あのオッサンも頭が切れてンのか、どっか抜けてンのやら……まァ、探して良いってンなら探させてもらうか。」
余程己の評価が下がっているのか、彼に確たる自信があるのかは定かでは無いが、己に塩を送るような余裕を見せる行為を有難く受け取る事として、再び辺りを見回した。
この敷地は大体見て回ったが怪しい場所は見受けられなかった。
となれば考えられるのは別の場所に移ったか、もしくはこの屋敷にカラクリがあるかだ。
次は単純に見て回るだけでなく、もっと念密に探してみるべきか…と脳内に描いた屋敷の地図を浮かべて、ふと手元の石に目が向いた。
突いたり弄ったり、再び"紅蓮"とかいう奴が出てこれないか試してみて。
「おォい、石ころ…って、お嬢の手元にねェから出てこれねェか?」
「まあ、探したければ満足が行くまで探すが良い。許可は出してやるが……見つけられるわけがないからな」
鼻で笑って、その場を去った。
~その頃、琥珀は~
琥珀はひたすら怯えていた。
過去の恐怖が、思い出が鮮明に頭の中を際限なく繰り返されて、頭の中がぐちゃぐちゃになりそうで。
身体中も痛みと寒気しか感じず、動かない身体を丸めて震えながら涙を流して
「エル……」
と小さく弱々しい呟きを溢した
Erbaccia
「………、分かりました。」
断固として拒否されてしまった彼女との面会に此方の苛立ちは最高潮を迎えようとしていた。
だがひと時の障害に対しその異分子を消せとばかりに内側から送られてくる憎たらしい殺意を含んだ信号を素直に受け取るつもりは無く、投げ渡されたその灰色の石…否、これには見覚えがある。
そう、この石ころに半ば無理矢理約束させられた事を思い出しては、其れを突き通す為にも此処は一度身を引く選択をする。
「ダメだ。特にエルバッチャ、お前さんはな」
予想通りの答えが返ってきた。
アレの心を完全に壊すためには、精神的な支えがあってはならない。
その為に危険を犯してまで、所持していた宝石も取り上げたのだ。
「お前さんはアレの拠り所となってる節があると俺は考えている。心を壊す上で拠り所は必要ない、寧ろ邪魔だ。代わりにこれでも持っていろ」
懐から取り出して彼に向かって軽く放る。
照明の灯りで煌めくソレは、リシアの所持している唯一の宝石であるルビーのネックレスだ。
Erbaccia
「…俺は彼女の能力面を兼ねての世話係として此処に居るつもりです。彼女に会わせて下さい。」
予想していた展開は凡そ当たりなのだろう。
だが此処にきて濁りかけたこの瞳で彼を睨んだところで効果は恐らく無い。
餓鬼のような真似を見せるくらいなら素直に問い出す方が幾らか賢いと判断して上記を口にする。
「嗚呼、アレならば現在監禁状態にある。」
煙管で煙を吹かしながら、淡々と述べる。
距離を詰められたが、殴られるのだろうか?
それはそれで一興だ、瑠璃の拳ほど痛くはないだろう。
「今後はアレの心が完全に壊れるまで、外部との関わりを極力断つことにした」
Erbaccia
「…ご子息は、何処へいらっしゃいますか?」
己の中で着実に苛立ちが積もりに積もっているのが分かる。
グツグツと腑が煮え繰り返るような、不快感を物理的に頭から被せられたような、そんな感触だ。
普段は部屋でしか会わない癖して、態とらしい程に己へ態々顔を見せにやって来た彼へ、己はそれらの感情の一切を押し殺し歩み寄ると彼に直接尋ねて。
「どうした、エルバッチャ。何か探し物かね?」
彼が屋敷を歩き回っているとの報告があった為、自ら足を伸ばして尋ねに行った。
大方、アレの件についてだろうが……居場所は自分と極一部の幹部しか知らない。
あの場所をこの男が見つけられるはずがない。
Erbaccia
「お嬢……」
翌日、いつものように此処を訪ねたのだが様子がおかしい。
まだあの怪我でまともに動けようも無い彼女の姿が部屋に無いのだ。
それに対してこの屋敷のものは妙に静か、何も無いとはとてもじゃないが言えたものではない。
時折通り過ぎる他の従者を無視して屋敷内を歩き回り、怪しげな場所を探そうとして。
「むぅ……えっ」
朝、いつものように目を開ける(といっても見えないのだが)と、ひやりとした空気が肌を撫でた。
その感覚に心臓が早鐘を打って、呼吸が浅くなりそうになる。
身体を動かそうとすると、先日よりも鈍い痛みが全身を襲う。
首にかけていたルビーも無くなっている。
「嘘、ここ…」
何よりも彼女が恐怖したのは、自身が今置かれているであろう場所。
そこは地獄の幼少期を過ごした地下牢だった。
Erbaccia
「…元より、そのつもりです。」
下を向いたまま、迷っているような頼りげの無い声色で同意の形を示す。
此処で胸を叩きながらきっぱりと其れを約束出来るのなら、俺はこんなところは愚か、このロクでも無い道からとっとと外れる事が出来たのだろう。
強張った拳を解き、触れてくる彼女の母親の手が妙に『あたたかい』。
だが己はこれら欲しいものを全て情緒に任せて強請ったり、況してや奪い去ってしまう程子供ではなかった。
もう何度も頼まれたであろう願いに下記を応えると、逃げるようにして彼女の母親の部屋を後にしたのだった。
「俺は彼女の……友人、ですので。」
「それが、あの子の為になるのなら……何もない限り、黙って見守ることにしましょう」
自分は母親として今まで何もしてこなかった。
だからこそ、今自分がする娘に対する行動が全く分からない。
もう会えないのなんて嫌だ、しかし彼の忠告を無視して強行突破をしてしまえば、娘の大切な人である彼が被害を被るのは明らかだ。
「エル君、私の代わりにあの子をお願いね。どうか……貴男だけは、琥珀の傍にいてあげて欲しいの」
今の娘にとって幸せなのは、恐らく彼がそばにいる事。
母と名乗る権利すら無いに等しい自分ができるのは、娘の幸せの為に相手へ懇願する事だけだ。
彼のきつく握り締めた拳を優しく解いて、その手に縋りながら、涙声で呟くように上記を述べた。
Erbaccia
「……子は、成長します。」
人間の"親"という存在は普通、目の前で涙を流す母親のように子が幾つになっても心配するものだ。
己はその普通を知らない。
だからこそ彼女が羨ましく、その微笑ましい関係を崩したくは無いと心の底から思う…が然し己は彼女らに情を与えては良いと命令されていない。
ただ漠然としたままでは母親も納得しないだろうと言い訳程度の説明をするだけの事。
だが親子の関係など、その身に経験した覚えの無い己が口で語って良い訳がない。
下を向いたまま、語る口の中が酷く乾燥して気持ちが悪い。己を嘲笑う陰険な声が内側から聞こえて、爪が食い込むほどに己が拳を握りしめた。
「子供の発育に伴い、必ずしも親の加護が必要という訳ではありません。貴女のその"愛情"が、自己満足で形成されたものでないのなら、どうか…彼女の成長を遠くから見守るに留めて下さい。」
「……そう。もう、あの子とは会えないのね」
先程まで感じていた温もりを思い出すように、自身の手を見つめる。
何故か徐々に視界がぼやけ始め、思わず呟いた
「私、母親なのに……琥珀に何もしてあげられなかった。それなのに、あの子はちゃんと、私を母と思っていてくれた。そんな愛しい我が子に、何も返せずに終わるなんて……」
散々泣いたはずだが、再び涙が溢れて止まらなくなる。
今になって明確に自覚した我が子への愛、しかしそれを与えることはもう許されないのだという悲しみと葛藤、己の無力さをひしひしと感じてしまう。
Erbaccia
「えェ、子息様には早めの療養を、と俺が瑠璃様を此処へお運びさせて頂きました。」
目を覚ました彼女の母親の側に片膝をついて屈み込んだまま話を進めると、僅かながら緩んでいた頬の筋肉に力を入れて張り詰めた真剣な表情を出来うる限り見せると下記を告げて。
深くは説明できない、だがきっと相手ならばこの理由を何となしにでも察する事が出来るであろう、半分は己の願望でもあるのだが、そう思いながらに目線は下に向けて。
「瑠璃様、お察しだとはお思いですが、もう彼女との接触はなりませんので…ご理解下さい。」
僅かに揺さぶられて、瑠璃はゆっくりと目を開いた
泣きすぎたせいか、目と頭が痛い。
ゆっくりと視線を巡らせて、彼の姿を捉えた
「エル君……?私、確か琥珀の所で寝ちゃって……」
半身を起こしながら、そう呟く
Erbaccia
「あァ…分かった。」
なんと察しの良い事だろうか。己を呼び止める彼女は恐らく今までの経験故にその運命を読み当て、内心驚きながら足を止めてしまう。
情を与えてはならない、だが此処で無理に引き下がれば不自然さしか残らないであろう。
彼が望む"傀儡"を作るのであれば、未練よりも諦めの方が手っ取り早く片がつく。
彼女のしたいようにさせておけば、その惜しむような別れをじっと待ち、終えた後に部屋を後にする。
そっと彼女の母親を部屋へ運び床へ横たわらせると、相手を軽く揺さぶって。
「…瑠璃様、起きて下さい。」
「エル、少し待ってくれ」
一声掛けると、見えないながらも母親の腕を探す。
何とか腕を見つけると手に取り、自分の顔の前まで持ってきて、祈るように握り締めてからゆっくりと離した。
「すまないな……何故かもう、会えない気がしたから」
Erbaccia
「久々の再会なんだ、嬉しかったンだろうよ。」
この状況で引き剥がせというのだから、流石の己でも良心がひしひしと音を立てた。
本来であればあの去り際で反旗を翻すべきだったのかもしれない。この"用心棒ごっこ"を終いにして、彼女の邪魔にならない位置でケジメをつける様子を観察していればそれでいい。怖気付いたのか?それとも…
伸ばした手を彼女の頭の上に乗せて、口角を少し上げると彼女の母親へと目を向ける。
「お袋さんは、俺が部屋に連れ帰っとくよ。今日はかなり燥いでたから尚更疲れてるだろうしよ。そしたら、俺もその後帰るから…お嬢はちゃんと養生しとけよ。」
乗せていた手を母親の方へと差し向けると細身でありながら怪力を持つであろう彼女の母親を横抱きに抱える為、腕を回していき。
「エルか、無事で何よりだ」
控えめに開かれた戸の音で、そちらに視線を向ける。
聞き慣れた声に安堵を覚えた。
「時間がかかっていたから心配だったぞ」
傍らには泣き腫らした顔で眠る瑠璃の姿。
琥珀は瑠璃の手を握り、瑠璃はピッタリと琥珀へ寄り添っている。
「母さんは泣き疲れて眠ってしまってな……全く、いつまでも子供のような人だ。」
溜め息をつきながら、満更でもなさそうに笑う。
Erbaccia
「えェ…存じ上げております。」
言われるがままに彼へ背を向けた矢先、続けられた言葉に当然の命令だと理解していながらも内心げんなりとしてしまいながら「分かりました」と短く伝える。
退室する寸前に投げられた太い釘のような言葉と音に一度身動きが止まると、くつくつと周りからか、己からか、将又自身の幻聴か、己の失態を嘲笑うような音も紛れて聴こえた気がした。
背を向けたまま、静かに上記を返すと彼の部屋を後にする。
そう、この男も馬鹿では無い。お互いの事情に踏み入るなという条件は表向きだけで、とうに此方の身分も把握されていて可笑しい話しでは無いのだから。
これで更に動きにくくなったのは此方の方。いっそ力技で此処を潰して彼女だけ連れて行きたいという前々からの幼稚な案は、彼女の成すべき事を無下にしてしまう為叶わないままだ。募るばかりの内の靄に、癖で唇を弄り倒し血を滲ませてしまう。
「お嬢…俺だ、入るぞ。」
ため息ひとつ盛大に撒き散らせば切り替えたように扉の側に立ち、ひと言声を掛けるとなるべく静かに戸を開けて中の様子に目を向け。
「下がって良い。嗚呼、帰り際にアレと瑠璃を引き剥がしていけ。親子で会うのはこれが最後かもしれんが、先も言った通り下らぬ情けをかけるな」
現状でアレと瑠璃に敵うのはこの男だけ。
若い頃なら自分でも止められたかもしれんが、流石にもう年老いた。
出ていこうとする彼に、一言投げかけた
「そうそう、一応言っておこう。……俺に小手先の考えは何も通じないと思えよ、若造」
言い終えるのと同時に、甲高い音を立てて煙管から灰皿へ灰を落として、彼から目線をそらした。
Erbaccia
「…尽力致します。」
軽く頭を下げながら了解の意を伝える。
彼の見据える先、野望はそこらの小者とは大違いな物を見ているようにも思えた。それは己のものにも似ている…彼の口調からその意気が伝わってきて。
『そうやって俺も飼い殺すつもりか?』なんて聴けるものなら聴いてみたいのだが、そんな事を口にしようものなら未だ辺りに散らつく殺気がこの室内にも侵入して只事では無くなるであろう。
呑まれるつもりは毛頭ないが彼の行く末には興味があり、彼女を連れて行く前に是非見届けておきたいものだ。
「他にご用件無ければ今日のところはこれで失礼致しますが…宜しいでしょうか。」
「いや、今までの距離では温い。完全に双方の接触を遮断させろ、部屋の近くに行くことすら厳禁とする。それでも行こうとするなら実力行使をしても構わん」
親子としての距離を離すだけではもうだめだ。
現在アレは重症だ、完全に隔離し躾直す最大のチャンスが漸く巡ってきた
Erbaccia
「畏まりました。」
握った拳に溜めておいた灰を差し出された灰皿に払い落とす。掌の皺の間に引っ付いてしまい僅かに残った灰は諦めて後に洗う事としよう。
それよりも今気に留めておくべきは彼が話に出した件である。
特に抑揚も無くいつも通りに返答はしたものの、さてどうしたものか。いや、特に考える必要もあるまい。
「今迄と、同じような距離を保たせれば宜しいのでしょう…?」
育児に関わる事を許されなかった母親が一度子に近付いた事で此れからどのような変化を言動に出してくるのか、対して母親の温もりを知った彼女が如何に親への欲求を露わにするか。
己からしてみれば体験した事のない、否、記憶はあるが実感のない間柄の話ではあるが"客観的"には予想がつく。
態とらしく簡単に上記を口にしたは良いが今迄とは訳が違う上、相手はそこらの母親と娘とは比べ物にならない程厄介な存在の組み合わせというのは明白。
其れこそ単純そうな任に見せかけて面倒な役回りを押し付けてきた彼は、いい加減己の扱い方に慣れてきてしまったのだろうと、サングラス越しに彼女と同じ色の双眸を見据えて。
灰はここに捨てろ、との意味を込めて自分の近くにあった灰皿を彼の方へ寄せながら
「嗚呼、これからも俺はお前さんに期待している。」
そして、一度煙を吹かすと別の話題へ移した
「お前には当面、アレ(琥珀)の監視と瑠璃がアレに接触するのを妨害してもらいたいと思っている。下らぬ情を挟まないように頼むぞ」
今、琥珀が瑠璃によって精神を持ち直してしまったら、折角また傀儡に戻そう考えているのが台無しになってしまう。
ただでさえ当初の傀儡計画から大幅に遅れているのだ、これ以上長引かせるのは極力避けたい。
Erbaccia
「ケホッ、はァ…大事に、使わせて頂きます。」
喉奥で未だ引き攣る咳嗽反射を無理に押し殺せば、目線を下げてまるで喫煙初心者のように情けの無い姿を見せてしまった事を僅かに恥じながら、これ以上無様を晒す前に火皿を逆さに向けて己の掌に落とす。
【拒絶】を意識化させた掌は火傷をする事なく燻りを揉み消し、屑をその場に放る訳にはいかない為、握り拳を作ったままにしておけば使用していた刻み煙草と煙管を丁重に仕舞い込み。
「今後も貴方様のご期待に添えるよう、精進致します。」
伏し目がちに上記を口にすると、先程の醜態の件もあって多くは語らず、他に用件が有ればそれを窺うかのように相手の言葉を待ち。
「すまん、俺はいつも口内喫煙だったからな・・・・当たり前のように感じてしまっていたよ」
まさか肺まで吸うとは予想外だった為、口調は落ち着いているが少し慌てた。
「煙管はお前さんが普段吸っている煙草のようにフィルターとやらがない。だからダイレクトにが味わえる分、煙は重いんだ」
恨みがましそうに此方を見る彼へ、頬を掻きながら上記を説明する
「 臭いは別ので消してたつもりなのですが…いやはや、バレてしまったのでしたら仕方ありませんね。
有り難く受け取らせて頂きますよ。 」
あのしつこい柑橘の香りで騙していた気でいたが、とばかりに驚いて見せたが…すぐに何処か嬉々として横暴な様子で言葉を返して管に受け取った刻みを詰め始める。
年季の入った彼の話を聞きながら妙な感覚を…此処に来てからもう何度目か、また抱くのだ。
彼とは違って不慣れな手つきで、だが器用に積み重ねると咥えて詰めた草の上に火を灯した。
「 えェ、勿論秘密に致しましょう。
俺もその…うァッ、ゲホッ、ゲホッッ 」
喫った煙は自分が予想していたものよりずっと重たいものだったらしい。
肺で喫える様なものではないと確信すると共に激しく噎せ込んだ。
目尻に生理的な涙を浮かべつつ決まり悪そうな目と共に「口腔喫煙なら最初に言って下さい」と訴えかけるとサングラスをズラして目元を擦り。
「構わん。近頃は煙管での喫煙者は減る一方・・・・未成年に勧めるのもどうかとは思ったが、お前さんからは煙草の匂いがするからな」
こういう所は子供らしいのか、と思わず頬が緩んでしまいそうになった。
戸棚から一緒に取り出した煙草を、彼への手本も兼ねて煙管へと手慣れた様子で詰めていく
煙草の葉を差し出しながら
「その煙管はお前さんにやろう、遠慮は要らん。
代わりと言ってはなんだが、瑠璃には内緒だ・・・・また怪我が増えても困るからなぁ。
まあ、愛しい妻の拳はいくら受けても身が持てば構わんがね」
何を企んでいるわけでもない、ただただ歳を取ると人間とは寂しくなるものなのだろう。
部下であって部下ではない彼と煙草を吸いたかっただけだ。
自身のはだけたスーツから覗く包帯を見せて、苦笑に近い笑顔を示した
「 『喰う』だなんて滅相も無い。
俺は貴方様に手を出す気は御座いません。 」
態とらしさを残した様子で畏まりながら上記を述べていると、
不意に差し出された『煙管』に子供の旺盛な好奇心らしく興味を抱いて視線を寄せた。
「 宜しいのですか?
…琥虎様の嗜まれている煙管、前から気になってまして。 」
遠慮がちに受け取り、長たらしい管に指を這わせて改めて眺めた。
娯楽探しに文献で読んだ程度だが…やはり、自分にはどうも似合わない代物だ。
俺は目の前に迫った奴の言葉と顔を見て思った。
何と厄介な男を此処に招き入れてしまったのか、と
それと同時に自分は存外この厄介者を嫌ってはいないと感じる。
度胸や器量のある男であると言うのもあるが、腹へ何かを一物抱えていそうな危うさがあるように思える矛盾のある男。
捨てるにはまだ惜しい。
「嗚呼、お前さんを雇ったのは俺だとも。
この業界じゃ裏切りや寝首かかれるのなんざ日常茶飯事、精々自分の選んだ輩へ喰われぬように気を付けるとしよう。
・・・・お前さんをまだ捨てる気はない、何を言おうとも俺の手駒でいてもらう。」
幸い、アレは未だ動ける状態ではない。
瑠璃さえ引き離せば再び地下牢に封じ込める事も可能だろう。
この男はアレから身を守る為の盾となりうる、万が一の場合は引き合いに出させてもらおう。
そう考えながら、手近な戸棚から真新しい煙管と煙草を取り出して吸うか?と言わんばかりに目の前の男へ差し出した
そんなこったろうと思った。
内心呆れる様に上記を思い浮かべたが当然表情には出せない。
噴きかけられた噎せ返る様な煙の香りに脳がくらりと揺れた気がしたが、色覚補正のグラス越しに確と彼の圧力のある『金』を見つめ返す。
「 お言葉ですが琥虎様。
俺は今回、貴方からの命令は受けておりません。 」
知らぬ存ぜぬでは通せぬと言うのであればそれで構わない。
ギラギラと辺りに鋭い殺意が飛び交う中、
怯むことなく彼との距離を歩んで埋めると炊かれた煙の匂いの漂う顔へと面を近付けながらトン、と胸の部分を小突いてみせた。
「 俺を良いように利用したいのならばご自由に。
ご満足頂けないなら…最初も申し上げましたが、棄てて頂いて構いませんよ。
一同の武力行使でも何でも、
………俺を雇ったのは貴方様なのだから。 」
地を這うような低い声でそっと囁く。
あんたの自己責任で、とばかりに。
「俺は飾った言葉が苦手でな、単刀直入に聞く。」
再び煙管を口にし、煙を無遠慮に彼へ吐き出す
そして、渋い表情から一変して金の瞳を鋭くして彼を威圧する様に一瞬睨んで
「何故、瑠璃をアレの所へ連れていった?お前さんが瑠璃とアレを引き合わせた事によって俺の傀儡計画に支障が出てしまったよ・・・・理由によってはただではすまさんぞ」
脅しの意味を含め、自室の周囲には既に武装した組員を潜ませてある。
最も、彼程の実力ならとっくにきづいているかもしれない。
「 いえ、瑠璃様の御力には…かなり驚かされました。 」
流石に今回の事は母親が絡んでいる事もあって堪えているのか、
あの独特の苦虫を噛んだ様な表情に自然と気の毒さを感じた。
目を伏せがちに、室内へと招かれるがままに入室しては彼の話に耳を傾ける事に専念する。
「 はい、何でしょう。 」
「エルバッチャか・・・・入れ」
既に先刻の騒ぎは耳に届いている。
どうせ来るだろうと見越していた為、扉の近くに腰かけていた。
上記を言いながら自ら扉を開けて彼を出迎えて
「俺の妻が随分と迷惑をかけた、よくあれの無茶ぶりを聞いてくれた・・・・修繕費は嵩む一方なんだがな」
渋い顔をしながら部屋に入ってきた彼へそう述べて、吹かしていた煙管を灰皿へ金属音と共に打ち付けて
「それで、今回の件についてお前さんから一つ聞きたいことがある」
「 …心配すんな。すぐ戻る。 」
2つの返事を返して部屋から出て行った。
間違いなくご立腹だろうが己が狼狽える必要性は全くない。
堂々たる足取りで彼の居る部屋まで向かえば静かに扉へ向けて声を掛けた。
「 琥虎様、俺です。入ります。 」
寧ろ、どの様な顔色になっているかを見てやりたいとばかりに心が踊っていた。