大切な何か(01)
- カテゴリ:自作小説
- 2017/10/03 00:40:46
老夫婦
今日、私は嘘をついてしまった。
そう、つかずにはいられなかった。
訪問サポートのあいだ、あれこれ世間話をするのだが。
タバコが止められない夫とか、濃い味が好みの知人だとか、他愛もない話の内は良かった。
私の話になって子供は居るの?との奥様の質問に、ハイとそっけなく答えた私。
何にも変えられないほど、どうしようもなく可愛い娘がいるとは言えなかった。
まもなく旦那さんが帰ってくるやいなや、奥様はそそくさと部屋を出て行った。
しばらくすると、そうそう外食などしている身分ではないと言う夫に、
昼の支度をし終えて戻ってきたようだ。
私もかみさんと年金がもらえる年になったら、こう言う生活を送るはずだった。
何もかも失って一人ですとは言えなかった、話の腰を折って気まずくなってしまうからだ。
奥様の家庭の幸せに水を差し、
さらに自分のみじめさを、知られたくはなかったのだ。
前向きに生きよう、不幸を数えるより、幸せを数えていこう。
それがほんの数えるほどでしかなくても、何回も何回も数えなおそう。
これは、ある馬鹿な男の日記をもとに、制作された物語である。
この先は、少しページをめくり直し、男の記録を覗いてみよう。
忘れてしまったが、この家へ来て何年たつのだろうか。
とにかく今は、いろんな事で頭がいっぱいで、書きたいこともまとまらない。
とにかく、この部屋で寝起きすることは、もうないだろう!
いや、その日が再び来るかもしれないという、希望がないと今は辛すぎる。
無いに等しい望みを枕に、いましばらくしたら寝ることにする。
つづく
安心してくれ、創作だ。
いや、ある意味残念かもしれないがw
(意地悪な言い方だと、人の〇〇は蜜の味)
少々、悲しい気持ちになりながら読んでいました。
このお話も続くのですね^^