想いを言の葉に乗せて(その3)
- カテゴリ:小説/詩
- 2017/09/30 00:48:46
●みそひと文字からの誘惑(行間に秘められた想い)
『和歌のルール』渡辺泰明氏著より
自分の心を伝え、他人の心を理解する。和歌はそのために詠んだのです。
みそひと文字には、万葉の昔から選び抜かれた語句で詠まれている。
和歌は、心を込めておくるもの。
とあったが、私はこれを「心の会話」と解釈した。
実に魅力的な響きが、込められている。
今年になってから和歌を学び始め、強く心に残ったのが次の歌。
「心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮れ」(西行)
(三夕(さんせき)の歌)の一つ
これの解説に
未熟な俺だけど、いいってのは分かるぜ… 鴫立つ沢の 秋の夕暮れよ。
と添えられていた。
他の二首とは違い、読み手の未熟さを引き合いに出して、夕暮れの美しさを表現している。
別の解説では、
煩悩を立ち仏の道を行く私であるが、不覚にもこの夕暮れには、強く心を惹かれてしまった。
ああ!なんという美しさなのだろう。
とあった。私はこちらの方を支持することにした。
西行法師の苦悩する姿が見て取れて、時を超え魂が震えるのを感じたからである。
たった三一文字の中に、これだけの思いが込められている。
ある人は、これを例えて行間を読み、ページの外にある心をも読みとれと教えた。
和歌のルールには、きっとこのような項目も載せられているに違いない。
吉猫は、抽象的に表現する技術の秘密が、和歌の中に隠されていると考えている。