夢の欠片
- カテゴリ:小説/詩
- 2017/09/27 21:52:24
この発想に胸が躍り、目が天空をさまよった。
傍から見ると時季外れの、それ系お兄ちゃんに映るだろうな。
目から鱗である、最近の目から落ちると、
しゃがみ込んで探す羽目になる、それとは違う。
人はなぜ夢から覚めると、途端に忘れてしまうのだろうか?
やっと分かった、欠片が珠となり、転げて行ってしまうからなのだ。
夢の持ち主は、後に残った場面をかき集めて、
つなぎ合わせようとするが、上映するには至らない。
だがまてよ、欠片なのになぜ、まあるくなるのかな?
ここからが肝心なのだ。
実は子猫が、あやかしの呪文を唱え、欠片を丸めていたのだ。
あなたも枕や、ベットの下を覗いてみよう。
夢を操る吉猫の、忘れて行った欠片が、転げているかもしれないよ。
たくさん集めれば、きっと素敵な物語が出来るはず。
さあ今夜も、吉猫と夢の欠片を求めて、夢の世界へ行く時間だよ!
また燃料の投下ですね、
あの怪しく光る片目は、霧我珠により映し撮られた、夢の欠片だったんですね。
さて吉猫の片目が、あやかしに光る夢の欠片に代わるストーリーも考えなくちゃね。
吉春のばあちゃんは、黒髪山のふもとに代々続く家に住んでいた。
もともと、この辺りを支配する地主の家系であったが、
今は菩提寺に残る、墓石の古さだけがそれを語っていた。
この春に、優しくひょうきんな性格の爺ちゃんに先立たれ、
老猫に親しく語り掛ける、ばあちゃんが心配でならない。
「よし、ほおらイワシ雲が出たよ、そろそろ季節だね~」
時々ギクッとさせられるが、もう慣れっこだ。
祖父ちゃんの名は、吉秋と言う、紛らわしい名だが仕方ない、我が家の伝統だから。
そんなある日、あかね空が、東に昇るお月様にさよならをする頃だった。
老猫のよしは、しきりに喉元を震わせて、みゃ~みゃぁあと訴えた。
「よし、お外が気になるんかい?もうすぐ暗くなるよ」
「おむつしたままで、どっか行きたいんかい?」
よし猫も春先に、不注意な車にはねられて以来、腰が上がらなくなってしまっていた。
しきりに強請る愛猫に、ばあちゃんはオムツごと抱えて、連れ出した。
そっと、よし猫の見つめる方角へ降ろすと、雁がねが哀しく響いていた。
「よし……」
家猫といえど、帰ると時と、その場所は心得ていた。
自分を愛してくれた、家族にその姿を見せてはならないと言う、定めと共に。
しばらく見守ると、辺りを見回しかすかに聞こえる、よしの悲しみ。
背中を震わせた三本足は、力なく崩れ落ちた。
「もいい、もういいよ、よし」
もう行くべき道を探し、歩いてゆく力は、よしには残されていなかったのだ。
歩き始めの、頼りない歩みは親の心をくぎ付けにし、転げると即座に抱き起す。
それと同じだった。しかし片方は喜びに満ち、もう片方には夜の戸張が降ろされた。
三日後に、祖父ちゃんの傍ら深く寝かされた。
つづく
いえいえ、それではありませんでした^^
・妖猫の 光る眼に 覚えあり 我が落とした 夢の欠片か