FF7 ザックラ 「おかえり」
- カテゴリ:自作小説
- 2017/07/06 19:06:17
AC後DV前です。
日暮れ時。今日も一日の仕事を終え、フェンリルをいつもの定位置に停める。
「今日も一日お疲れ様」
そうフェンリルに声を掛けた時、『バイクと会話なんて、髄分淋しい事してんだねー』というユフィの声が耳に甦った。
『大体さあ、バイクに名前つけるところからしてヘンだよ。普通バイクや車に名前つけないって』
「…悪かったな、淋しい上にヘンな奴で」
思わずムスッと独りそうごちると、セブンスヘヴンの扉を開いた。
「ただいま・・」
その言葉に、ティファが叫ぶよう俺の名前を呼ぶ。
一体何事かと顔を上げると、カウンター席でティファの真向かいに座っていた誰かが「ガタン!」と椅子を蹴倒して立ち上がり、「久し振りだな、クラウド!」。そう言って、こちらへ向かって歩いて来るところだった。
ヒクリ…と、自分の喉が鳴る音が聞こた。
笑顔で歩み寄ってくるあいつは、以前誰よりも俺の近くにいた男。
いつも自分に素直になれずに捻くれていた俺とは正反対に、太陽のような明るい性格。
くるくるとよく変わる表情。誰からも好かれる奴だった。
でもあいつは…あいつは俺のせいで! だからこんなところにいる筈はないのに。
そいつの手が俺に触れる寸前、急に目の前が暗くなり俺は意識を失った。
崩れるように倒れる俺の名前を呼んだのは、ティファだったのかそれとも…
気がつくと、常夜灯が点いた薄暗い部屋の中、見慣れた天井が目に入った。
あれは夢だったのか。
「は…はは・・」
俺は交差させた腕で顔を覆うと、乾いた笑い声を上げた。
当り前だ。あいつが生きている筈がない。だってあいつは俺のせいで…
「お、気がついたか?」
そこまで考えた時、ふいに掛けられた声に驚いて飛び起きると、ベッドの脇の椅子にあいつが腰掛けていた。
背もたれに両腕を乗せ、またがるように座っていた椅子から立ち上がりこちらへ歩いてくるその姿に目が吸い寄せられる。
「あ…あっ」
言葉が喉に絡まりうまく話せない。こちらへ向かって手を伸ばすその姿に、俺は…
「あっ…悪霊退散んっ!!」
生憎とここには十字架なんてものはなかったので、手近にあった合体剣を叩きつける。…が、
ザックスの姿をしたそいつは、「おひふぅっ!」と奇声を発するとすんでのところでそれを避けた。
「チッ」
「いや、『チッ』じゃないから。下手したらオレ死んでるし!」
「ザックスはもうこの世にはいない。お前は誰だ!」
「いや、実は死んでなかったの。ちゃんと話すから聞けって」
尻もちをついたまま、上げた片手を手のひらをこちらに向けて必死の様子でザックスもどきが言いつのる。だが、
「悪いが信じられないな」
合体剣をつきつけたままそう答える俺に、ザックスもどきはため息をつく。
「ま、しょうがねーよな。正直オレだって信じられねーし。
でもさ、嘘はついてない。オレは正真正銘のお前の知るザックスだ。なんで生きてんのかそれも説明する。
オレの事が信用できないなら、このロープでそこの椅子に縛りつけてくれてもいい」
そう言うと、ザックスはロープを取り出しこちらに放り投げてよこした。
・・・どこに持ってたんだ、おい。
まあとりあえず、大人しく(普通に)椅子に腰を下ろしたそいつを縛りあげる事にした。