基本情報 ↑ 名前ラズィーズ　魔力･幻惑　専攻･薬学　弓使い　女性型悪魔にモテるらしい (￣～￣lll)


「探してみる」

いったん目を閉じ、深く息を吸いゆっくりと吐き出し、ワルドは目を解放する。
私とロワゾーは息を殺して、ワルドの様子を見守り続けた。
適度なところで止めないとワルドの負担が大きくなるだけだということを、私たちは知っている。

彼女の目は今、何を、どんな風に見ているのか…。

どこか一点を掘り下げるように遠くへと視線を飛ばすものなのか、視界まで広がって見えるものなのか、
想像してみようと思ったことはあるが、想像すら出来なかった。
そもそも千里なんていう、人間界で言えば日本列島を縦断して、さらにその果てしなく先まで見通すなんて、
本当に出来るものなんだろうか !?

次第に時間の感覚が解らなくなってきたが、ワルドの集中力は、いまだ途切れない。
だが、私の集中力はそろそろ悲鳴を上げ始めていた。
何もしていないのに自分の息が荒くなってきたのが解る。時計の音もやけに大きく神経に触る。

やがて、士官学校の上層に備え付けられた時計が、日付変更の時を告げた。
そろそろ止めたほうがいいはずだ。私とロワゾーは、同じタイミングで顔を見合わせ、互いにうなずく。
見つからなくて当たり前なのだ。これ以上は、もういい。

そう声を掛けようと手を伸ばした時。ワルドの身体がぐらりと揺れ、私のベッドに倒れた。

「王都の北西、…の町からゲートの方向に向かってる。ラズよりピンク薄い。白い服を…」

それを言うのでさえ、たいそう苦しそうだ。
大丈夫、私らが行く、このまま寝てろ。そう言ったのは、ロワゾーだったか私だったか。
それもよく解らないまま、ロワゾーは愛用の剣を手に、私は弓を背に翼を広げ、
窓を大きく開いて空に飛び出したのは、ほぼ同時だった気がする。

放ってきたワルドのことは気になるが、私たちは無言で北西へ向けて猛スピードで飛び続けた。

私たちは、夜間外出の許可を取っていない。その他もろもろ規則違反も重ねている。
だが私は、たぶんロワゾーも、いろんな意味で興奮し、少々のスリルを感じつつもワクワクしていたと思う。
第一、部屋で それなりの時間、緊張していたので、そのままでは眠ることも出来なかったろう。

夜の、少しひやりとした空気が心地よかった。
風を切る爽快感も、人工的な音が最小限しかない静かな世界も、妙に嬉しかった。

「もうすぐワルドの言っていた町に着く」

その声にハッとして思わずロワゾーの顔を見た。金の瞳が浮かれる私を咎めている。
無言でうなずき、前を見据えた。
ココロのなかで、しっかりしろ、ラズ！ 冷静になれ と自分に声をかける。

どこか遠くのほうから、鳥の鳴き声が聞こえている。
ギリギリ王都の町は、低い建物が点在し、いかにも外れといった、ゆるやかな趣きを見せていた。
空からなら視界を遮るものは 無いに等しい。
町はすでに深い闇が支配していた。

私たちは羽音を殺し、空から王都外へ通じるゲートの付近に目を凝らす。
一応ゲートがあるとは言え、国境という訳ではない。誰でも自由に出入りができた。
非常時には閉鎖されることもあるとは教えられたが、それも上空の移動を妨げる効果はないはずだ。

しかも、いまは非常時ではない。誰もが安穏と眠りにつく深夜。
そんななかで動くものは、イヤでも目につくはずだ… と思っていると、
ロワゾーの気配が動き、少し左前方を無言で指さしている。
その影を、私もすぐに見つけることができた。

申し訳程度の街灯の傍を通り過ぎた影は、淡いピンクの、キレイな髪をしていた。

◆ 第三話、終了 ◆◆◆

注：花蝕をはじめとする悪魔シリーズの著作者は ゆうな 様です。これは二次創作のようなお遊びとご理解ください。


学生とは言え、身体的には充実し、成人悪魔に近い頃合いをイメージしています。
でも精神的にはまだ、どこか幼い… というか甘っちょろい部分を残している… そんな感じかなぁ、と。

次、第四話、完結の見込みでしたが予定変更です。肝心の締めが入らない～。
で、完結は第五話。
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