日本妖刀列伝:十
- カテゴリ:レシピ
- 2016/05/25 02:04:24
2014年2月から始まったこのシリーズも遂に10回目。
相変わらずの、のんびりペースですがお付き合い頂きたい。
今回は妖刀とは少し趣が異なる刀の話にしよう。
これまで語った話は、壮絶な切れ味や魔物を切ったなど
言ってしまえば血なまぐさい話が多かったように思う。
刀が武器という性質を持ち合わせている以上
そこは避けられない部分である。
しかし今回は、そういったものではなく
名前が特徴的な刀を紹介しよう。
刀の名前は 『まづくれ丸』 いかにしてそう呼ばれるようになったのか
伝承を紐解いていくとしよう
時は、太閤秀吉の日ノ本統一が果たされた頃のお話
秀吉のお気に入りの中に曽呂利新左衛門(そろりしんざえもん)という男がいた。
曽呂利という名は珍しいがこれには少々訳がある。
彼は元々は、堺で鞘を作りそれを売ることで生計を立てていた。
その腕前は素晴らしく作る鞘はどの刀にもぴったりとはまり
抜くときもソロリと抜けた。
そのため秀吉から「それをそちの名にせよ」と言われ
以後 曽呂利 と名乗るようになったのである。
彼は鞘作りの腕前だけではなく話術にも優れていた。
ある時秀吉に彼が怒鳴りつけられた時のこと
曽呂利の取り成しで植えられた松があった。
その松は枝振りが素晴らしく秀吉も大層気に入っていた。
だが間もなくその松は枯れてしまった。
秀吉はカンカンに怒り曽呂利を呼びつけた。
「お前の手配したあの松、程なくして枯れてしまったぞ! どうしてくれるんだ!」
すると曽呂利は、謝るでもなく手を叩いてこう言った。
「このたびは、おめでとうございます」
これには秀吉も一時怒るのを忘れ、驚いて尋ねた。
「枯れたのにめでたい? 何故じゃ?」
そう訳をたずねると
「御秘蔵の 常世の松は 枯れにけり 千代の齢を 君に譲りて」
と曽呂利は詠んだ。
こう返されては秀吉も怒る事が出来ず、曽呂利は咎めをうけずに済んだという。
そんな曽呂利が茶室に招かれた時のこと
秀吉は彼にこんなことを言った。
「曽呂利 そちのトンチでわしを茶室の前の庭に降ろしてみよ
見事降ろすことができればそちの望みのものをやろう」
これを受けた曽呂利は少し考えこう言った。
「殿下を庭に降ろす事は難しゅうございます
ですが上げることならば容易く出来まする」
庭から上にあげる? 空へ持上げると言うのか?
そんなことが出来るはずがない 出来るものならやってみろ。
秀吉はそう思い
「ならば上げてみよ!」
と一歩庭に踏み出した。
と、秀吉そこで気がついた。 曽呂利にしてやられたと…。
振り返るとニヤニヤした曽呂利が口を開いた。
「されば殿は庭に降りられましたので、お約束通り褒美を頂戴しとうございます」
苦々しいが負けは負け 秀吉は茶室に備えてあった左文字を投げて渡した。
「確かに頂戴いたしました」
感謝の言葉を述べると、子供のようにヘソを曲げた秀吉に曽呂利は続けた。
「御刀の由緒を伺いとうございます」
すると秀吉の機嫌はぱっと戻り、無愛想に「まづくれ丸だ」とだけ言った。
まづくれ丸そんな刀匠の名前は聞いたことがない
なにか特別な謂れがあるものなのか
曽呂利それは一体どのような謂れかと尋ねても 秀吉はなかなか口を開こうとしない。
彼が三度尋ねると、秀吉はニンマリした顔でこう答えた。
「その刀はトンチで勝ってとりあえず褒美をくれというからくれてやったものだ
だから『まづくれ丸』なんだよ」
秀吉の小さな仕返しに茶室にいた一同は大笑いしたという。
今回のお話いかがだったでしょうか?
『まづくれ丸』の文字を最初に見て
『まずくれ』から来ていると思った人はいないのではないでしょうか?
刀の中には、稀にこういった洒落のきいたものが存在します。
大般若長光や歌仙兼定はその最たるものではないでしょうかね。
殺伐とした話が多い中 一服の清涼剤になれば幸いです。
日本妖刀列伝:十『まづくれ丸』
「貴方の大事にしていた松は枯れました。 残り千年の寿命を君に譲ったが為に」
って感じですかね。
これは勿論実際にあった話です。
刀剣にまつわる面白い話が結構すきなのです。
是非1から読んでみて下さいカテゴリ:レシピです。
これがどういう意味なのかわからない><
日本史得意なんですね恭介さん。
これは本当にあった話なのですか?