金狼の重圧 『エデン編』第2部…3
- カテゴリ:自作小説
- 2016/05/09 02:07:56
「エデン、君はこの金色のEMを使ってウルフをおびき寄せようとしていたってことなのか?」
「そうです」
この機種はヤツビシのRP-300改、ウルフと同じ機種。それをわざわざ特殊コーティングの金色にしていた。
「良くできているな、このEM」
「もちろん、ウルフが使っていた物と同じものにしましたから…これでウルフが来てくれると思っていたのですが…」
だんだんと太陽の光が疎らになっていくパーキングエリア。駐車している車は来ては出ていき流れが流れる。
先ほどまで輝いていた金色が徐々に燻り、生気を失っていく。ユウジはそんな感じを受けていた。ウルフが声も出さずに逃げていく。手をかけたと思っていたその姿がすり抜けて行った。
まさに幻。
「本当に何も知らないんですか?ウルフのことを?」
ユウジの落胆はさらに増す。
「俺は…俺たちは、君をウルフだと思ってここへ来たんだ。金色のEMが走っていると聞いて、また暴走したと聞いて…しかし、蓋を開ければ君だった。ウルフは…いなかった、また幻だったってことだ」
背中を見せ自分のEMのところへ戻ろうとするユウジ。もう終わったんだとエデン分からせるため、そんなEMに乗っていても無駄だと教えるためにもう声を出さなかった。
「待ってください」
それでも逃げは変わらない。
「待ってください、ウルフは幻なんかじゃない、います。ウルフはいます!」
なんでそんなことが言える!そう言いたげな顔でユウジはエデンの方へ振り向いた。エデンの目はすべてを跳ね返すほどの激しさと何かを信じているように見えた。
「これを」
エデンはユウジに端末を見せる。画面にはEMに乗っている男の姿が見えた。そして即座に釘付けとなる。
「これは……ウルフじゃないか!………これをどこで?」
「場所はここです……2週間前に」
ウルフは居たのか?