Nicotto Town


小説日記。


悪魔裁判 【短編】

嗚呼、愚かなるリリスの子供たちよ。

 濯げぬ罪を背負い、永遠に暗闇と絶望の中を彷徨い続けるのです。


「被告人、デュー=ウェアウルフ」
「台に立ちなさい」

 銀の手錠を五重にかけ、荒縄で腰を縛る。
 フラつきながら歩くたび、背後から突き殺されるような勢いで押し出される。
 厳かに告げる悪魔の声が法廷を覆い、傍聴人たちは一斉に立ち上がり、お辞儀をする。
 震える脚を一歩、二歩と穴の空いた木の台に乗せて立てば、熱に犯されたような寒気がやせ細った身体を貫いた。
 一人、高みで佇む悪魔は哀れなリリンを見下ろしている。

「では、開廷します」

 悪魔が木槌を音高く打つ。
 拍手。
 たくさんの死霊と71匹の悪魔たちが、傍聴席から震える少女を見上げていた。
 耳を劈く大音量の歓声が地獄の底に響き渡る。
 もう一度悪魔が木槌を叩く。シンと水を打ったように静まり返る法廷の中で、リリンだけがおこりのように震えている。

「被告人、名前を言ってください」
「……デュー=ウェアウルフです」
「被告人、生年月日を言ってください」
「…………分かりません」
「被告人、本籍地はどこですか」
「………………分かりません」
「被告人、住所はどこですか」
「……………………分かりません」
「被告人、職業はトッカータ・バーレスク第3584回生第Ⅸ学年卒業候補生で間違いありませんか」
「…………間違いありません」

 悪魔はスラスラと言い上げた。
 悪魔は口元を覆う革のマスクの下で、再び口を開く。

「被告人は〝殺人〟の罪で起訴されました。ヒトで無き者がヒトを殺めてはなりません」

「よって被告人を〝有罪〟とし、〝死刑〟判決を言い渡します」



*****

オリジナル創作企画⇒即興の茶番劇-トッカータ・バーレスク-

続き⇒http://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=385716&aid=62596521




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