帰る
- カテゴリ:小説/詩
- 2015/12/02 10:14:10
アナウンスの声が
発車の合図をする
見送る人など誰もいない
一人だけの座席
空白になった時間
生まれた街に帰る
短い旅だけど
でもそこには何もないだろう
鬱陶しいだけの人の影
何故そこに行くの
走りだした車窓から
見えるのは過ぎ去っていく季節
何度もあなたと見た風景とは
全く違うものだけど
心に持った荷物が重い
旅が好きだった
あなたとならもっと
今はそんな気分にはならない
どこに行くというのだろう
心はまだ街の中なのに
乗り換えて
駅を過ごして
段々と近ずいてくる
逃げたかったのか
迷った朝も昼も夜も
もはやつかめない
二人の掌に
書いた愛は儚かった
こぼれてしまうなら
手と手を合わせて受け止めたのに
作り笑いをするだろう
そうしてまた街に帰るのだろう
一つ荷物を置きたかったけど
背負うしかない私の肩に
故郷は暖めてくれるだろうか