日本妖刀列伝:九
- カテゴリ:レシピ
- 2015/11/28 03:09:41
人は良く、あの時ああしていれば
と、己の選択を悔いることが良くある
勿論時は戻せないし
選択を選びなおす事はできないのだが
何故だかそうしてしまう
だかその選択は、果たして本当に間違いだったのだろうか?
一度は捨てられてしまったのだが
後日になって評価を改められた刀がある。
その刀の名前は『笹貫』
その数奇な伝承を今宵は紐解いていこうと思う。
何本もの刀を打ち続けた波平行安は、己が技量の完成を覚えた。
また体力的にも今がピークであると悟り、
稀代の名刀を打つには今をおいて他にはないと考えた。
頃良い日の朝、彼は妻に
「今日から鍛冶場に篭る。私の生涯を掛けた一振りを作る作業だ
いかなる用事があったとしても決して入ったり、覗いたりしてはいけないよ」
そう言い付け鍛冶場に篭った。
その日から彼の戦いは始まった。
夜を徹し、何かに取り付かれたように鎚を振るった。
カンカンカン
数日の間、鎚の音は鳴り止むことなく続いた。
そして、ついに鎚の音が止んだ。
妻は完成したのだと思い、腕によりを掛けて手料理を作った。
けれども夫は鍛冶場から戻らなかった。
少し何か手間どっているのだろうと妻は思ったが
次の日も、また次の日も彼は鍛冶場から戻らなかった。
そのことに彼女は、悪い予感を感じ取った。
まさか鍛冶場で良くない事でも起こったのではないか
心配した妻は、言いつけを破り鍛冶場を覗いた。
するとそこには、まさに今最後の仕上げに取り掛かっている夫の姿があった。
「誰だ!」
気配を感じた波平は、声を荒げて向き直った。
するとそこには、怯えた表情の妻がいた。
「すみません!」
平謝りする妻を彼は全く怒ろうとはしなかった。
「よいよい、今はまだその時ではなかったということだろう」
彼は出来損ないになってしまった刀を、裏の竹やぶへと放り投げると
妻を伴い母屋へと向かった。
奇妙な噂が立ち始めたのは、それからしばらくしてからのことだった。
裏の竹やぶで幽霊が出ただの、妖しい光が見えただの
村人の間で噂が流れ始めたのだ。
この気味悪い噂の真相を確かめようと村人の一人が竹やぶへと踏み込んだ。
するとそこには、一振りの刀が埋まっていた。
その刀は茎が地中に埋まり、切先が直立した状態で置かれ
刀身には舞い落ちた笹の葉が無数に貫かれていた。
この異様な状況を見た村人は、すぐに波平を呼びに行き刀を見せた。
波平は無数の笹を見て、打ちたかった稀代の名刀が
妻のお陰で完成していたこときに気がつき彼女の手を取って喜んだ。
この名刀は『笹貫』と名づけられ献上されたと言う。
さて、今回のお話、いかがだったでしょうか?
アクシンデントだと思われた妻の介入は、実は正解だったのです。
実に面白いお話ですね。
皆さんも間違いだった!と思うことも
長期的に見たら実は正しかった。何てことありませんか?
少しの失敗も成功に変える位の気構えが欲しいですね。
日本妖刀列伝:九 『笹貫』
夫婦の愛が起こした奇跡!とかかくと随分陳腐に聞こえてしまいますが
行き着くところはそういうことなんでしょうか?
タイミングの妙というか、奇跡のような出会いと言うのはありえることだと思っています。
自分の力ではどうにもならないことって多くあると思いますが、
自然の力に助けてもらうしかないような気がします^^;