寄り道
- カテゴリ:ペット/動物
- 2015/11/14 22:54:27
久しぶりに海に行った。
病院の帰り、乗り換えのホームに立つと
いつもは気にもならない目の前の海が
何だかとっても気になった。
一瞬切符が無駄になる事が頭を過ぎったけど、
こんな事滅多にないので、自分の好奇心に従う事にする。
この時期の海は人気(ひとけ)もすくなく、
独り占めしている様でちょっと贅沢な気分。
雨雲が立ち込めた、低くく見える空。
少し冷たさを感じさせる風。
夏には無い季節感が、楽しい。
歩きやすい遊歩道を外れ、砂浜を歩いてみる。
昨日の雨で濡れた砂に
ギシッギシッとパンプスがめり込む感触が楽しい。
ふと目をやると、少し先にある堤防の手すりに
カラスが数羽並んで停まっている。
一般的にはあまり良いイメージが無い彼らだけど、
どこかのどかに見える様子に興味をそそられ
近づいてみる。
でも、近づく度に
一羽、また一羽と飛び立って行く。
野生だなと感じると同時に、
翔び立つ姿が綺麗だなとも思う。
電柱に向かい、高く翔び立つもの。
海面に沿い、別の柵へと移るもの。
それぞれが人間の距離を取る。
でも3m位の距離くらいの所に来ても
飛び立たずにいる子がいた。
こんなに近くでじっくりとカラスを見るのは多分初めて。
そして、そのくちばしの大きさに気付く。
よく『他の動物を食べてた』だの
『人の頭を突いて大怪我をさせた』だのと言われるくちばし。
そう思うと、確かに他の鳥と違って
体に対する比率が大きい気がする。
もう少し近くで見たい気持ちと、
野生なので攻撃されるかもしれないという気持ち。
そんな事を考えているあいだに、
最後のその子も翔び立った。
海面に沿い、その大きな黒い翼を広げ
滑る様に遠ざかる。
今にも雨が降りそうな灰色の空と、
その空の色を映した海面。
そして単色の黒ではなく、
角度によって紫紺の様な不思議な色を見せる羽。
綺麗だなと思う。
昔の人は女性の美しい黒髪を
『カラスの濡れ羽色』 と表現したけど
その気持ちもわかる気がする。
カラス達は少し先の電線に停まっている。
堤防に座り、その様を見ていると
そのうち彼らが一羽、また一羽と地面に降り立ち
気がつけば、少し先にある船の先に集まりだした。
何でそんな所に集まりだしたのか不思議に思って見ていると、
船の影で何かが動いた気がした。
ネコだ。
カラスはネコのそばに集まっていた。
野生の世界は弱肉強食。
誰だって食べなければ生きていけない。
わかってはいるけれど…
思わず身を乗り出してしまったのかもしれない。
カラス達は一斉に飛び立った。
申し訳ないけど、ホッとした。
するとネコと目が合った。
ネコは真っ直ぐにこっちに寄って来た。
子猫というほど小さくはないが、大人とも言えない大きさ。
避妊済みの印として耳に切れ込みが入っていた。
餌が欲しいのか、スリスリと体を摺り寄せて来る。
その仕草に、先週まで世話していた子達を思い出す。
今はもう、通う必要も無い子達。
ホッとしたはずなのに、
会えないことに寂しさを感じる。
しばらくすると、ネコは離れて行った。
少し先にある船着場に寄ってみる。
満潮の時刻なのか、足場のすぐそこにまで海水がきている。
先へと歩いていると
風に煽られて波打つ不規則な水面の音が聞こえる。
ふと顔に冷たいものが触れた。
それはすぐに数を増し、
遠くで雷の音が聞こえた。
微かな雨音。
傘を差し、船着場から岸へと戻る途中、
波間に大きめの黒い影。
魚かと思って見ると、
鵜の様な黒い鳥が海の中を潜っていた。
海なのに。ちょっと不思議な気がした。
元来た砂浜を駅へと歩く。
少しずつ雨足が増していく。
次いつ来るかは分からないけど、
たまにはこういうのもいいのかもしれないと思った。
私はカラス好きです!怖いと思う時もありますが、黒くてカッコイイw
出会いと別れは寂しいですよね、寒い時期になると特に……。
たすくすくすさんに出会えた事に感謝を