Nicotto Town


リュウさん(旧姓は、楽人です。)


大阪のおばちゃんの記事

 30代の人間にとって、大阪のおばちゃんのイメージは、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ)で放送されていたコント「おかんとマー君」によって決定づけられている。せっかく彼女を家に連れ込んできたのに、「出て行け」と言っても部屋に居座ろうとするおかん、ダサいTシャツを買ってくるおかん、エロ本を見つけて「あー怖っ!」と叫ぶおかん、関東人にとってはコントのキャラの一つだが、関西の友人いわく「あんなおばちゃんばっかりやで」ということ……。関西の人々は、(さすがに過剰ではあるけど)「あるあるネタ」として受け取っていたようだ。

 大阪のおばちゃんは、関東人にとっては未知の存在だ。そんなおばちゃんたちの生態を記したのが『大阪のオバちゃんの逆襲』(言視舎)だ。筆者の源祥子は、地元大阪でコピーライターとして活躍後、シナリオライターに転身するために40歳を過ぎて大阪から東京へと転居してきた。そして、地元大阪を離れてまじまじと感じたのが、大阪のおばちゃんの特殊さ。本書では、親友への手紙という形式を使いながら、大阪のおばちゃん像を解き明かしていく。 

 ヒョウ柄のスパッツを履き、トラの顔がでかでかとプリントされたTシャツを着ながら、さすべえのついた自転車で買い物に出かける大阪のおばちゃん。スーパーでは、初対面の人間に「今日何作りはんの?」と声をかけ、バッグの中には常に「飴ちゃん」を携帯している。上沼恵美子を「神」と崇め、月亭八方がロケをしていれば「元気にしてたん?」とさも親戚のように話しかけ、バシバシと身体を叩く。もちろん、「関西のロイヤルファミリー」である西川きよし師匠をはじめ、忠志、かの子、そしてヘレンのファミリーたちの動向はかかさずチェック。夏には、河内家菊水丸の河内音頭で踊るし、島倉千代子の「小鳥が来る街」を聞けば、ゴミを出さずにはいられない。音楽のない東京のゴミ収集車を見て、筆者は「ほんま東京のゴミ収集車、愛想ないわぁ」と嘆いている。 

 そんなディープな大阪のおばちゃんたちだが、筆者の源は、全国に誤解される大阪のおばちゃんのイメージを訂正することも忘れない。 

 大阪のおばちゃんが商品を値切るのは遊びの一種であり、スーパーやコンビニのレジでの支払いでは「まけて」と言うことはない。しっかりとTPOをわきまえて、場を盛り上げるために「値切る」という方法を活用しているのだ。大阪のおばちゃんの髪型はみんなが紫色だったりパンチパーマというわけではなく、ヒョウの顔が書かれたTシャツと、ヒョウ柄のファッションではおしゃれ度が違うと主張する。関東人である私には、あまりその違いは分からないが……。 

 他の地域の人々には全く理解できない大阪のおばちゃん。しかし、筆者の分析をもとに見ていくと、彼女たちも、決して理解の及ばないモンスターではないことがわかってくる。いや、むしろ、彼女たちは人情味が熱く、人を喜ばせるのが大好き、日本の中でも最も人生を楽しんでいる人々であるようだ。 

 源はこう語る。 

「人生で大切にしてるんは、美味しいもんと、笑顔と笑い声。あと、衣食住関係なく、安うてお得なもんを発見すること。なにかと辛気臭い話題の多いこの世の中で、できるだけ楽しいこと、おもろいことに目を向けて笑って生きていこうとするそのパワフルさ。(中略)一億二千万人が真似したら、きっと日本は何かが変わるんちゃうかと思うんよ」 

 そのポジティブさ、そのおおらかさを真似できれば、確かに日本はもっと楽しく、パワフルな国になり、社会はもっと暮らしやすくなることだろう。でも、日本のおばちゃんが全員バシバシ人を叩いたり、「あんたそれなんぼ?」とズケズケと踏み込んでくるのは、他地域の人間としてはやや困りもの。 




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