モグラ・・・その9
- カテゴリ:自作小説
- 2015/08/16 15:57:20
「大変で~す」と
サンちゃんは一気に水を飲干した
「なな夏子さんが
笑ったんです、声も出ました」
「そうか・・・
私も絵をみてそろそろかなって思っていたんだ」
そう言ってモグラは
笑顔のヴィーナスとハイタッチを交わす
ついでに僕もとビーナスに向かって
タッチのつもりでパーの手を伸ばした
が、ひらりとかわされる
「もう少しよ」ビーナスは頷いてそう言った
「もう一杯水を下さい」
コップを差し出すと「OK]と軽やかな返事が返ってきた
「美味しいです」
入れてもらう人によって水の味も変わるのか?
サンちゃんが調子に乗って
3杯目をもらおうかと思った時だった
「あの~、すいません」
後ろから爽やかな暖かい春風のような声がした
「なななななな夏子さん」
そこには夏子さんがポツンと立ってこちらを見ていた
ドアの大きな枠がまるで額縁の様だ
気持ちゆるめのチャコールのワンピース
隠れたヒザの下の方には
紺の紐で結ばれた純白のスニーカーが眩しい
これって生きる芸術?
やった!女神さまに挟まれた
「ポコン」
「痛ぇ~」頭頂部へのヴィーナスからの鉄拳で我に返った
「ふふふ」
それを見た夏子さんが笑った
「あのぉ~」
「何でもおっしゃって下さいな」とヴィーナス
「この夏いっぱい
ここに居るわけにはいかないでしょうか」
「ここに居ると身体も心も甦ってきます
もっとじっくりと治したいし」
『それより素敵な絵が描けそうなんです
私夢に見たんです
ここに来た最初の日
気付いたら無意識に絵を描いていたんです
身体も重く心も鉛の様でした
その時、持ってきてくださったティーをいただきました
暖かな不思議な香りがしました
なんていい香りなの
一口飲んだ瞬間その香りが
体の中へと吸い込まれていくのが解りました
私は今までどこで何をしていたんだろう
このままずっとただ時間を費やしていく生活が続くのかしら
その時です
私の中で声が聞こえたんです
「さぁ、そのまま今思った通りの絵を描きなさい
そして絵の中に白い箱を描き、その中へ想いを封じ込めなさい」
その瞬間です
山奥にある深い湖が浮かびました
私は冷たく澄んだ湖の底に白い箱を描き
その中に想いを封じこめて行きました
箱は一つ、二つ、三つ、四つと増えて行きました
不思議な事に日毎に身体が軽くなっていくのが解りました
漆黒の闇に浮かぶ真っ赤な雲
あれは私の心の中を映す鏡だったのです
さらに不思議な事が起こりました
五つ目の箱を描いたあたりからの事です
だんだんと箱の色が薄くなって
気が付いたら消えていたんです
こんな事ってあるのでしょうか
消したのは私自身なのでしょうか
そう、無意識に色を重ねて
消してしまったのかも知れません
七日目の今日のことです
私は蝶になっていました
青い空、優しい日差しの下
お花畑の中を飛んでいたのです
さっきティーを持って来てくださった時
我に返りました
目の前にある絵を見て驚きました
なんてきれいな絵なんでしょう
思わず笑みがこぼれました
「いつもティーをありがとう」って思わず声に出しました
その時驚いた顔でその方は
部屋を飛び出して行きました
そのとき初めて気付いたんです
声が戻った、笑顔が戻ったって
ほんとうにありがとう
私、もう少しここに居たいんです
私、もう少しここで絵を描いていたいんです』
そう言って夏子さんは泣き崩れた
ヴィーナスが彼女を支えながら
モグラの方を見た
「大丈夫ですよ、夏子さん。
実は予約がまだ他に一件も入っていないんですよ」
その時初めて僕はここが
普通のペンションでない事を悟った
その後夏子さんはこの「森の家」で
もう一枚の絵を描き上げた
なんとその画が世界的な絵のコンクールで
大賞に輝いたのだ
TVには今までと違った控えめにちょっとはにかんだ
美しい夏子さんが映っていた
この受賞を最初に誰に伝えたいですか
レポーターの質問に彼女は強く答えた
「森の家です」
「はっ?」
「モグラさんと
ヒョウさんと
お猿さんにです」
そう言って夏子さんは
カメラに向かって微笑んだ
夏子さんは自分の潜在的な力で
心を治癒して行きました
それをサポートするのが
「森の家」の人たちです
さて登場人物が4人に増えました
夏子さんが描いた最初の絵は
ペンションの入り口に飾られています
それはそれは素敵な森の中の湖の絵です
でもその絵には不思議な事が起こるんです
さてどう展開していきましょうか?
のめり込むほどに
強く心が傷ついていたのでしょう
自分の力で治癒し
心が蝶のように絵の世界に舞ったのでしょうね
読んでくれてありがとうです^^
閉じ込めて描いた箱には
どんな思い出や気持ちを描いたのだろう?
気が付いたら 絵が描き上がってたなんて
どんだけその絵にのめり込んでたんだろう?
羨ましい 絵の中で蝶々になった自分を感じるなんて!
ここの描写がすごくいいです♪
自分で自分を治癒していく
最後は自分一人
でもそれは決して一人では出来ない
サポートしてくれる人がいて初めてできる
その辺を書こうかなって思いました
この先どうなるのかな?
心をカンヴァスに見立てて描いていく
絵は心を映し出す そして気付きをいただきながら
自分で自分の心を治していく 何かのきっかけがあれば・・
自然の力って素晴らしいね 生きてるって素敵なことだね
生きていてこその世界が まぶしい未來を連れてくるとしたら
それは 自分を取り巻くすべてのものへの感謝の心が生み出すもの
なのかもしれないね 自分の想像を超えた話の展開が心地よくて
読み終えた後に優しい余韻が残りました。
読ませていただいて ありがとうございます お礼に笑顔一杯置いていきます
まだまだ続く森の家のお話・・ゆっくりと大切に育てていってくださいね(^^)/
いちいさんの絵は素敵です
いつもそう思いながら拝見してます
この話も夏子さんの絵の具が足りなくなって
ウルトラマリンとローアンバーをサンちゃんが街まで買いに行く
なんて考えたのですが長くなるのでやめました
人の心、感情って色を持っている
そんな風にも感じています
ニャンコも一緒ですかね?
メンタルの闇がメルヘンチックに表現され展開して、読み心地も終始ハッピーでした。
私も絵を描くので、共感する部分も多く、素敵なお話でした。(*^-^*)
そうですね
誰のお話にしましょうか
アイデアを頂戴するかも
とにかく最後はハッピーに!
そうですね
夢のある話っていいですね
夜風様
自分の事は自分自身で・・・
でも応援してくれる誰かがいる
そんなのがいいですね
ティーはモグラオリジナルと
ヴィーナスオリジナルがあるそうです
それぞれ効能が違うみたいですが
宿泊者に合わせて作ってくれるそうですよ
限界にきたら心の中の森を探してみます。
次は働きすぎてひきこもりになった男の人とか、
婚期を逸したキャリアウーマンとか、
何事にも自信を持てない消極的な女子高生とか、
夢物語のようなお話にしてほしいなぁ!
そして、最後はみんな動物だったなんてね!