Nicotto Town


安寿の仮初めブログ


お遍路しながら安寿が考えたこと その2



徳島市内より国道沿いを延々と歩く。

  国道沿いなのでファミレスやコンビニなど、
  気軽に入って休める場所があるのだけれど、
  どれもお金が必要。

  そういう俗世の法則から離れるためのお遍路とも言えるから、
  トイレに行きたくても、あえて行かない。   ☆\(ーーメ) 漏らすなよ!

  日曜日なので国道が渋滞している。
  徳島駅周辺は、日曜日なのに人通りが少ないなと思っていたけど、
  国道沿いは渋滞中。

  つまり、徳島でも日曜日は
  郊外のファミレスや大型商業施設で
  買い物するようになっていているわけか。

  私としてはそういう生活スタイルを捨てたいんだよなあ~。
  ともあれ渋滞している車列を
  徒歩で追い抜いていくのは気分がいい。  ☆\(ーーメ)
 
延々と国道を歩いて、
やがて国道の反対側に「弘法大師御杖の水」というものがあると
ガイドブックに示されているので見に行く。

  行ってみたら、田んぼの中に井戸のようなものがあるだけ。
  おそらくここも杖でついたら、水が湧き出たという話なのだろう。

空海に対する私の理解は、
神秘的な法力で奇蹟を起こした人というより、
人々の願いや困り事の相談に乗り、
その博識から、井戸をもっと深く掘ったら良い水が出るとか、
仏教に基づいた社会教育を振興すると人心が安定すると言ったような、
具体的に社会を変えていく知識や方策を知っていた社会改良家なのだと思う。

ところが同時に彼は密教の修行を極めようとしていた人でもあったため、
彼の社会改良的な業績がすべて法力・神通力といった神秘主義的な要素に
起因するものと理解されてしまったのではないか。


でも、それは空海にしてみれば意図せざる帰結なのでは。


彼にしてみれば、密教の修行に邁進することも、
この世の現実的な問題に対して具体的な解決策を示すことも、
同じ衆生を救う営みであったように思う。


だとすれば、
衆生を具体的に救わずして、
ただひたすら霊験あらたかな御大師様の法力におすがりしなさいと説くのは、
空海さんにしてみれば、
不本意な帰結だったのではないかしら。    ☆\(ーーメ) お前、敵を増やしておるぞ

私としては、
  空海さんを霊験あらたかな御大師様として捉え、
  仏や大師の人智を越えた法力によって
  願いや困り事を解決しようとする捉え方よりも、
   (神秘主義的な祈祷宗教である密教にとってはそれでよくても)
  人間が抱える問題の心理的・社会的構造を分析し、
  どのような工夫や社会の仕組みによって
  問題を解決していったらよいかを考える
  日々苦悩しつつも実践によって応えようとする
  平凡な人間・空海さんとして捉えた方が
  後世に生きる私たちにとって、
  遙かにお手本になるような気がするのだけど。


密教の神通力にすがる真言宗は、
空海さんが持っていた具体的な問題解決力といった面では
はっきり言って後退しているように思う。    ☆\(ーーメ) 怖れを知らぬ発言


私としてはやはり、社会の問題は、
  人間関係や社会関係、制度の仕組みを変えないままに、
  問題解決することはできないと言いたい。

  変えずに問題解決しようとすれば、
  それは従来の人間関係や社会制度を支えてきた正統性原理を再興し、
  人々の心を原点回帰させることで、
  かつてあったとされる美しい社会の姿を取り戻すという発想に
  行き着くようになると思う。


でも、それは好ましい解決策だろうか。
  社会の変化が、従来の関係や制度の組換えを必要としている。
  社会の変化を止めずして、従来の関係や制度を維持し続けようとすることは、
  かえって社会の軋みを増すことになりはしないか。

  関係を変えられず、
  しかも関係から逃れられぬ時、
  関係は地獄となり、
  人は鬼となっていくのだ。

しかも、軋みが増した社会において、
  従来の関係や制度を維持しようとすれば、
  その正統性原理はどんどん強圧的になっていくような気がする。

  そんなことをしても何も解決しないだろうし、
  そもそもそんなこと可能だろうか。

そんな試みは、イデオロギーと現実の乖離によって破綻するか、
時代錯誤的な原理主義の様相を帯びていくのではないか。


   うわああ~、この延々と続く国道歩きは、
   安寿の妄想を限りなくラディカルな方向へと誘っていく~。  ☆\(ーーメ)

「弘法大師御杖の水」のすぐ側の信号で国道の反対側に渡り返すと、
18番札所の恩山寺に向かう脇道へ入る。
でも、ここからが結構長い。
いい加減歩き疲れ、妄想疲れしていた安寿にとって
残り1.5キロは想像以上に長かったのでした。




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