Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


Smile again 【第八話】

第七話 『過去』


星空の丘へ連れてって。美加は必死に長谷川にお願いした。
しかし、長谷川は聞く耳も持たず、「駄目だ」の一点張りであった。
嫌気が差した美加はついに、病室で大声をあげた。

「もういい!じゃあ毎日来ないで!」
「心配だから来るに決まってんだろ!」

病室での大喧嘩は廊下まで聞こえていた。
それを聞いてクスッと微笑む一人の女性が病室を訪れた。
ゆっくり隙間から顔を覗きこませ、美しい笑みを見せて言った。

「また倒れたって聞いて、心配したんだからね?」

その時、美加の表情はまるで怯えきっているような表情で、突然震えだした。
両手で腕を掴み、ガタガタ震えながら泣き叫び始めた。
慌てて抑える長谷川。しかし、先方の女性は冷静で、逆に冷め切っている感じであった。
冷たい視線を送り、美人はこう囁いた。

「まだ続けてるの?それとも、治らないの?」

その少ない言葉には、いくつもの棘が刺さっていた。
長谷川は、キッと女性を睨みつける。
女性は長谷川の鋭い視線を無視し、美加の頬を撫でて噓のように笑った。

「元気だった?美加。」
「…お前、誰?」

不意に出た言葉。その言葉にピクリと反応した女性は、長谷川を見下しながら言った。

「貴方こそ誰?自分から名乗るべきでしょ?」

その言葉には優しさのかけらも感じられなかった。
仕方が無い、と長谷川は口を開いた。

「俺は長谷川亮太。美加の…友人」
「アハハッ、たかが友人のくせにそんなムキになってたの?」
「…ッ!」

小ばかにしたような笑いは、長谷川にとって一番許せないものだった。
唇をかみ締め、グッと怒りを抑える長谷川。
それを見ながら女性は楽しみ、嘲笑いながら言った。

「せいぜい頑張りなさい。ま、貴方にこの子の面倒なんて見れないだろうけど」
「…んだと?」
「まぁたムキになっちゃって。こんなの子にそこまでする価値なんて無いのにねぇ」

美加に視線を変える女性。美加は気まずそうに視線を逸らした。
フンッと口角を上げる女性。すると女性は、長谷川の耳元でこう囁いた。

「この子、頭おかしいのよ。」
「は、はぁ?イキナリ何言って…」
「交通事故の話、聞いたんでしょ?」
「……」

詳しくは知らない長谷川は動揺した。
その姿を見て察した女性は、一枚の紙に電話番号を綴って渡した。

「詳しい話はまた後日。この子のためにも知っておかなきゃいけないからね」

そういい残して去っていく女性。
その背中を見送った長谷川は電話番号を見つめた。
言っていることを鵜呑みにしたら駄目なんだろう、そう思った。
でも…どうしてもあの言葉が気になった。

「交通事故の話、聞いたんでしょ?」

やっぱりこの件、関係しているんだ。
そう確信した。

「……美加、俺に話すこと無いんだな?」
「………」
「分かった。」

何も聞かず、彼女に聞くことを決意した。


続く。




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