Nicotto Town


グイ・ネクストの日記帳


革命2


レティは頃合いと見たのか、立ち止まり、息を大きく吸ってから話し出した。

「われはアヴァロニアの女帝レティーシア・アヴァロニアである。ブルラ国の兵士たちよ!われに続け。今頃、玉座で踏ん反り返って報告を待っているサルマを倒そうではないか!」

「・・・」エッセンハイムにも、その場にいる全員の頭に響いた。
ブルラ国の兵士たちは顔を見合わせる。
魔力に操られたのか、それともこれがレティの・・・レティーシア・アヴァロニアの魅力なのか。

全員がその場に跪いて頭を下げた。

「ふむ。よい答えだ。全軍、進軍せよ!」


「サルマ様、大変です!サルマ様!」
「今度は何だ、ヴィヨン。革命軍を打ち破ったか?」
「それがサルマ様・・・革命軍の数、8万3500となり、今、王城に迫りつつあります」
「ちょっと待て!それはおかしいではないか!全軍寝返ったというのか!?ありえぬ。一体何がどうなったのだ。ありえぬ。ありえぬ。そんな事が起こるわけがない。これは何だ?何なのだ、ヴィヨン」
「サルマ様、すでにわれらは囲まれておりまする」
「馬鹿な!」と、サルマは走り出した。

 王城の外へ出るまで、サルマは何故か死んだ母の顔を思い出していた。
 城の中にいた残存兵を掻き集めて、門を開けた。
 8万の兵士たちの最前列にはレティーシア・アヴァロニアがいる。
サルマは叫んだ。
「貴様、一体何をした?何をしたのだ。どんな魔法を使ったのだ!?」
「そちにも見えるか?わが魔力が」と、レティ―シアは笑う。

聳え立つ、黒き狼。赤き目。

王城そのものよりもはるかに巨大な氷の魔王の姿がある。

「召喚したのか?魔王を」と、サルマはつぶやき、後ろを見る。連れて来た兵たちは皆、戦意を失い、跪いていた。
はは、当たり前だ。世でさえ、王という立場でなければそうしたい。跪いて、目を合わせたく無い。

「われは生まれた時より、この魔力と共にある。われは魔力の根源にして女帝なり」

「・・・説得。交渉。はは。そうか・・・そうなのか。世が愚かであった」

「負けを認めるか。では国を明け渡せ。命は救ってやろう」
「嫌だ!世はたった1人でも戦う。世はブルラ国王である」
「では、そなたの魔法の攻撃をわれに当ててみせよ」と、レティーシアは両の腕を広げた。
怪しく笑い、サルマを見つめる。

「・・・世は唱える。魔王フェンリルの名において、氷よ、刃となりてわが敵を貫け!」
サルマは手と手を重ね合わせて魔法を発動させた。氷の刃はまっすぐレティーシア・アヴァロニアに向かって行く。レティーシアは避けようとさえしない。氷の刃はレティーシアの身体に接触すると同時に解けて吸収されていく。レティーシアは魔法を唱える必要が無い。何故なら魔王フェンリル其の物だから。
ただ手を上げて、振り下ろした。
魔王フェンリルの口に赤き魔力の巨大な塊が発生し、王城を壊した。
サルマや残っていた兵士、宰相ヴィヨンは氷漬けされて、壊れないよう、地面にゆっくりと降ろされて解凍される。解凍された兵士たちは宰相ヴィヨンとサルマをレティーシアの前に連れて来た。
「ふむ・・・そなたの兵士たちは非常に素直だ。われが命令するまでも無く、そなたたちを連れて来てくれたのだから」
「・・・ひぃ。お助けを」と、宰相ヴィヨンは言う。
「殺すならさっさと殺せ」と、サルマは言う。
「悪魔でもわれに従わないか・・・それもよい。われの魔力を目の前にして、絶望してもなお、われに刃向うその気骨・・・それもよい。殺さずにわれの執事として働く事を許す」
「貴様の寝首を獲る男を執事に置くとな・・・正気か」と、サルマは睨む。
「無論、正気だ。われは至って正気だ。われのやる事には誰も反抗せぬ。少し刺激が欲しいのだよ、サルマ。そうやってわれに反抗を示してくれ。これからもな」と、レティーシアは笑顔を見せる。
「はっ。壊れた考え方だ。だが、初めて貴様という存在を気に入ったよ・・・執事でも何でもしよう。レティーシア・アヴァロニア・・・好きにしろ」と、サルマは跪き、レティーシアに頭を下げた。
「よい」と、レティーシアは後ろを向いた。
魔王フェンリルがレティーシアの顔を舐める。宰相ヴィヨンは失神している。
ヴィヨンを兵士たちが連れて行く。
「われの靴磨きとして雇おう。心して運ぶように」と、兵士たちに告げる。

「レティ。いや、レティーシア様・・・なのかな。このたびはありがとうございます」
「エッセンハイムか」と、レティーシアは振り向く。
「レティ―シア様、私はあなたとは対等に付き合いたい・・・それとあなたの元で学ばせてほしい」
「くくく、はははは、われと対等に?大いに結構。われはこの年になって初めて仲間と呼べる人間に出逢えたのかもしれぬ。これからもよろしく頼む、エッセンハイム。それとレティでいい。そう呼んでくれ」
「わかった、レティ。こちらこそ喜んで」





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