白い涙
- カテゴリ:小説/詩
- 2014/09/20 17:11:37
「お金持ちになれま……」
一条の光は少年をあざ笑うかのように瞬く間に消え
彼の独白は、夜空に吸い込まれた。
(この調子じゃ3回なんてとても無理だよなぁ)
ひと通りがっかりした後、
少年は再び注意を全天に向け流れる星を探し始めた。
夜空は既に元の静寂を取り戻していて
この中を何かが動くような雰囲気は微塵も感じさせなかった。
(やっぱり声に出すには長すぎるか、もっと短くシンプルな言葉なら)
「金金金」
少年は次からそう唱えてみた。
しかしどうにも間に合っていないような気がした。
さらに新たな疑問も浮上してきた。
(これでも間に合わないとなると打つ手がないな……
だいたいこんな俗っぽい願い事が叶うのか?
願いってのはもっとこう、純粋で崇高なものじゃなきゃダメだよな
自分の為になんて考えてるから、ダメなのかもな)
願いは、他の誰かの為にしよう。
そう思った彼の頭の中には、一人の少女が浮かんでいた。
(となると問題は、いかにして流星を消えなくするかってことだな)
一秒もしないうちに流れきってしまう流星。
そのうちに3回願い事を言うなんて、
どんな早口のの名人にも出来そうな事ではなかった。
(発想を変える必要があるか……
願いを叶えるのは流れている星、そのものなんだから
それが停止してしまっても、問題はないはずだよな?
なら流れる星を止めて、光っているうちに3回言う!
うん! アリ……だよな?)
考えた末、彼の出した結論はこうだった。
題して 『流れ星を捕まえて光っているうちに、3回願い事を言う作戦』
しかしこの作戦には、前提からして重大な欠点があった。
(そもそも星ってどうやって捕まえるんだ?)
それは至極当然な疑問であった。
(そんなことが出来るなら、世界は億万長者で溢れているはずだよなあ
まあでも、折角だしやってみるか)
なぜそんな気分になったのか自分でもわからなかった。
普通にやっていたら絶対に不可能なことがわかっていたから?
誰かの為の願いを絶対に叶えたいから?
長時間星を眺めていて、そろそろ飽きてきたから?
後日振り返ってみても不思議と、この時の心境は思い出すことが出来なかった。
目の前で両手をオニギリを結ぶように、中に空間を作るように丸めた。
その手をゆっくりと離せば、捕獲準備は完了だ。
少年は広大な夜空を見上げ、星が流れるのを待った。
さっきまでは何度も流れていたのに
いざ捕まえるとなると星はなかなか流れなかった。
時折、流れたかと思うとまるで見当違いの方向で、キャッチすることは出来なかった。
(惑わされちゃダメなんだ 他は捨てていい ここを通る流星を捕まえるんだ)
少年は自分の目の前に意識を集中させた。
5分、10分…… かつてこんなに集中したことがあっただろうか
少年の吐く息だけが、夜空へと溶け込んでいった。
(来た!)
不意に少年の目の前に現れた流星は
彼の頭上を通って後方へと流れ始めた。
(逃がすか!)
少年は星の流れにあわせるように手を動かし頭上でポンっと両手を合わせた。
(捕まえたのか?)
少年は視線を頭上の両手に向けた。
視線をそうしておいてから、捕まえた虫を確認する要領で
ゆっくりとあわせた両の手のひらを広げた。
「え?」
少年は思わず声を上げた。
手の中には、周りの星々とは明らかに明るさの違う星が佇んでいたからだ。
(俺、捕まえちゃったの?)
しばし呆然と捕まえた流星を眺めていた。
灼然とした光は、心の深いところまで照らしてくれているようだった。
(あ、願い事願い事……)
しばらくして少年は当初の目的を思い出し願い事を3回唱えた。
その言葉はとても不思議な音階を奏でた。
自分が発した言葉なのに、自分の言葉ではないような気がした。
とこか遠く知らない国の言葉のような、そんな響きに思えた。
不思議な音階はすぐに夜空に吸い込まれると
夜は、また静寂を取り戻した。
頑張って書いてくださいね^^
読者の皆様をあまりお待たせしないうちに・・・^^
願わくば。。。ラストに近くなった時
待て!状態になりませんように!!!
夢のような・・・
きっと叶いますよね(*^_^*)